副業は自分の可能性を最大限発揮できる場 ー「副業エンジニアNight」レポート
1月30日(木)、大崎ブライトコアホールにて、品川区とファインディ株式会社の共催による、現在副業エンジニアとして働いているエンジニア側と、副業エンジニアを活用するマネジメント側の企業の双方がエンジニア副業のリアルを語る「エンジニア副業Night」が開催された。
現在、副業エンジニア方と副業エンジニアを活用する企業側の、登壇者3人が、あまり語られることのなかったリアルな副業エンジニアの実態を語り合うパネルディスカッションがあった。参加者の副業エンジニアは3割ほどで、副業に興味のある参加者が約半数を占めた。
開催に先立ち、品川区産業振興課課長の山崎修二氏より、「都市開発により産業構造が変化する中、かつて工場用地だった五反田に、現在ではIT系のベンチャー企業が集結し、五反田バレーが発足されている。エンジニアの高質なスキルや熱いエネルギーを、ぜひ五反田で発揮してほしい」と挨拶があった。
副業は自分の価値の探求場
続いて、ファインディ株式会社の大原和人氏、株式会社レアジョブ兼副業エンジニアの羽田健太郎(じゃんぼ)氏、株式会社Timersの須藤 槙(あかつき)氏の3名をパネラーに、モデレーターはフリーランスエンジニアの桑原宜昭氏によるパネルディスカッションが開催された。
はじめに、副業エンジニアの実態について解き明かしていく。
副業はどのようなきっかけで始めたのか
- 大原:本業ではインフラを担当していたが、開発に強い興味を抱いていた際、地元で起業した先輩から、サービス開発の依頼を受けた。
- 羽田:知り合いからCakePHPでWebアプリを動かしているが、作り直してほしいと依頼があった。
- 須藤:知り合いのSNSの投稿で副業を募集していたため、応募したことがきっかけ。
副業によりキャリアはどのように変わったか
- 大原:本業はインフラエンジニアだったが、副業でRuby on Railsを勉強できたことが、後々の開発エンジニアになる上で役立った。スクラム開発の回し方も副業で学んだ。
- 羽田:副業でインフラエンジニアや開発を経験したことで、自分のキャリアのポートフォリオが広がった。契約は業務委託でスタートアップのアプリ開発が多かった。
- 須藤:キャリアの幅が広がった。若者へのコードレビューを担当したことで、プログラミングを始めたばかりの方がつまずき易い箇所などを知る機会になった。
副業の大変なところや苦労したところは
- 羽田:週5正社員・週2副業で働いているため、業務内容の選定を発注時に調整するなど、精神的に疲れない自己管理能力が必須になってくる。ベンチャーやスタートアップの依頼では得意領域のエンジニアがいない場合が多く、一時的なスポット人材として携わることもある。アカウントのロール作成など、誰でもできることをやらなくてはいけないことも出てくる。だが、何かあった時には対処できるよう、事前に繁忙期となる時期を周りに伝えておくなど、周りとのバランスや意思疎通ができていれば、本業との両立は難しくない。
副業の楽しいところは
- 大原:本業だと打ち合わせなどを気にかけながらの業務になるが、副業は純粋にコードを書くことに集中できて楽しい。
- 羽田:本業では優先度が低くなってしまう新しい技術を、副業で経験できることはエンジニアとして面白い。組織の仕組みが出来上がっていると、組織体制に合った技術を選ばなければならなかったりする。本業で新しい技術の導入を検討する際、自分の経験値からメリットやコスト感を共有できたことが嬉しかった。
どのような副業案件に興味があるか
- 大原:新しい技術に触れられる・有名な顧問からコードレビューがもらえる・プロダクトが面白いなど。スタートアップは比較的自分の提案が通りやすく、興味がある。
- 羽田:スタートアップに魅力を感じている。色々な技術に合わせた総合力で自分の価値を発揮できる案件や、自分の得意な技術が活かせる案件は面白い。
- 須藤:本業では経験しづらいiOSの案件やスカウト業などに興味がある。
副業エンジニアにもとめるものは「自走力」
続いて、副業エンジニアを雇用する側の思いを聞いた。
副業エンジニアは組織にどのような効果をもたらすのか
- 大原:初期のスタートアップにフルタイムのエンジニアはなかなか来てくれないが、短時間の副業ならば、ハイスキルのエンジニアが仕事を受けてくれることがある。技術面や自分の苦手分野を得意とする副業エンジニアに相談できることは大きい。
副業で採用するならば、どのような人が良いか
- 大原:「このようにしておきましたが良かったですか?」と聞くなど、わからないなりに自分で解決できる「自走力」のある人。プルリクエストの出し方でも、例えば、不安箇所にコメントを残すなどの工夫ができる人。
- 羽田:自分の得意分野が明確で、「自分はこういう人間だ」と説明できる人。
副業を始める前の知識や経験など条件のボーダーラインはあるか
- 羽田:雇う側としては人件費がかかるため、ベテランを求めるケースが多いが、業務上未経験でもブログでサンプルを公開するなどアウトプットしていたり、自分のスキル経験から意見交換できたりする場合は採用に至ることもある。
- 須藤:特にないが、あえて言うならば「○○ができなかった」と正直に伝えられるコミュニケーション能力があれば良いだろう。
仕事は自分の足で取りに行こう
そして、ここからは来場者からの質問に、登壇者が一問一答形式で回答した。
副業はどのように探しているのか
- 大原:気になるスタートアップを探しておき、登壇するイベントの懇親会などで話しかけることをおすすめする。過去、自分も副業に結びついたことがある。副業をやりたいエンジニアが増えているが、まだ副業を受け入れる企業は少ないのが現状だ。「副業エンジニアと共同で開発を回していくのは難しいだろう」と考えている人が多いことが、副業エンジニアが増えない課題でもある。
- 羽田:自分のできることをパッケージ化しておき、タイムチケットやビジネスマッチングのサービス・勉強会などから副業に繋がることもある。色々な接点を持つと良い。
副業はどの時間に行なっているのか
- 羽田:本業との兼ね合いで平日の夜や週末。週7で働くことはないが、サウナのあるコワーキングスペースに行くなど、自分のパフォーマンスが最大に出せる環境づくりを自己管理している。
副業メンバーとのコミュニケーション・接し方はどのようにしているのか
- 羽田:コストの焦点は「コミュニケーションコスト」の単価。Slackでのやりとりが1時間いくらとなってしまうこと自体、関係性が良くないのでは。定額内で数日中には納品するなど、カジュアルなゆるい関係性にしておくのが良いだろう。レビューコメント1つでも、リードタイムを気にしなくて良い関係性やルールを企業側が気遣うことが重要だと思う。
- 桑原:週1~2で動くとはいえ、自分の動ける時間で良い仕事が降ってくる訳ではなく、自分から仕事を取りに行かなくてはならないため、今携わっているプロジェクト全体のマイルストーンなどを把握しておかなくてはならない。受け身では仕事は来ない。自分から取りに行くのが鉄則だ。
ここでパネルディスカッションは終了。その後、ライトニングトークと並行して懇親会が行われ、参加者同士の積極的な交流が見られた。約200人のエンジニアが平日の19:30に集まったことからも、彼らの副業に対する熱意を感じた。
* * *
パネルディスカッションの後、懇親会よりもライトニングトークを聞く参加者が多く、副業に関心があることが伺えた。もしかしたら副業の種と出会えるかもしれない、ここ五反田バレーに、あなたもぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。
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