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  インタビュー

エンジニアがAIアプリ開発に専念できる環境を提供、作り手と使い手の互恵関係を築くGStreamerベースの注目プラットフォーム

2021年6月21日(月)
Think IT編集部

はじめに

スマートシティやスーパーシティという言葉を耳目にする機会が増えている。それは、デジタルテクノロジーの級数的な発展を背景に、快適かつ安全な“豊かな社会”を具現化することが、にわかに現実味を帯びてきたことの証左とも言えるだろう。

そうした状況下、エンジニアの英知が集まることで進化に拍車がかかっているのが機械学習や深層学習、推論といった、広くはAI(人工知能)にカテゴライズされる領域だ。各種のセンサーやカメラなどが至るところに設置されるようになり、森羅万象は大げさにしても、世の中の時々刻々の状況を「データ」で捉えられる素地が整ってきたのは周知の通り。そこにAI技術を掛け合わせれば、近く起こりそうな事象を高精度で予測し、より良い結果につながる手を的確に打てるものとして期待が高かまっているのだ。

中でも、映像関連の動向は活況だ。街頭カメラを使った人流・滞留計測などはコロナ禍における報道番組で度々目にすることになったし、それ以外にも幹線道路の交通量把握や、工場内での検品や良否判定など、様々な所で実証実験のみならず実用化のチャレンジが繰り広げられている。社会全体のDX(デジタル変革)という文脈で、極めて重要なポジションにあるのが「映像 × AI」の分野なのだ。

このホットスポットに軸足を置くことで存在感を強めているのがEDGEMATRIXである。同社は2019年4月、米CloudianのAI事業をベースにスピンオフして立ち上げたスタートアップ企業だ。NTTドコモや清水建設のほか、日本郵政キャピタル、Sony Innovation Fund、DGベンチャーズなどが出資し、主要株主に名を連ねている。

課題を抜本的に解決する
映像エッジAIのコンセプト

映像AI解析からビジネス価値や社会的価値を創出する道のりを、より進みやすくすると共に、秀でたアルゴリズムが流通しやすいエコシステムを形成することにEDGEMATRIXの主眼がある。そのためのプラットフォームを提供するのが同社の主力事業だ。詳細に踏み込む前に、まずは基本コンセプトとしている「映像エッジAI」の考え方について触れよう。

従来、映像データをAI解析するケースでは、技術トレンドや現実解という意味合いでクラウドを活用するのが一般的なアプローチだったが、看過できない課題も少なからず露呈し始めた。同社の長谷川直之氏(エンジニアリング本部 フィールド技術統括部 FE&CS部 シニアマネジャー)は代表的なものとして以下の4点を挙げる。

EDGEMATRIXのエンジニアリング本部フィールド技術統括部FE&CS部でシニアマネジャーを務める長谷川直之氏

  • 通信コスト/設備コストの問題:大量のカメラ映像をクラウドに伝送することによるトラフィックの集中やストレージの巨大化
  • ネットワーク遅延の問題:クラウドに映像が送られ解析結果に基づくアクションが起こるまでに遅延がありリアルタイム性がない
  • 無線伝送による認識率低下の問題:データの圧縮率アップが解像度を粗くし、最終的には認識率低下などを招いてしまう
  • プライバシー保護の問題:人物の映像がクラウド上に蓄積されることで厳重なセキュリティ対策が不可欠になってしまう

「これらを抜本から解決するのが映像エッジAIであり、映像が発生する場所、つまりはカメラにごく近い前線でAI解析を実行してしまおうという考え方です。エッジ側で処理すれば当然ながら通信コストを圧縮できますし、リアルタイムにアクションを起こせます。また高精細な映像をそのまま活用できますし、解析後に人物映像を残さない運用によってプライバシーも保護できるのです。もちろんクラウド抜きという訳ではなく、全体の管理はクラウドでというようにエッジと適材適所で使い分けるのが理にかなっています」と長谷川氏は説明する。

映像エッジAIという考え方が様々な課題を解決する

この考え方に基づいて同社は、AIアプリケーションの実行環境を備えたエッジデバイス「Edge AI Box」や、それらを統合管理する「EDGEMATRIXサービス」などを主力ソリューションとして展開している。

エッジデバイスと統合管理サービスを
組み合わせて提供

「Edge AI Box」は、CPUやGPUを内蔵したボックスマシンであり、例えばARM製プロセッサとNVIDIA製GPUを搭載したボードコンピュータ「NVIDIA Jetson TX2」を搭載したモデルなどがある。エッジサイドでAIアプリケーション(深層学習の推論モデルなど)を走らせるのに必要な演算能力を備え、さらには環境耐性などにも配慮した幾つかのバリエーションを用意。5G通信への対応など最新技術へのキャッチアップも抜かりはない。「ユーザーがいち早く現場での運用に持ち込めるよう、用途に応じて最適モデルを選択しやすくしています」とは長谷川氏の弁だ。

Edge AI Boxの主要なラインナップ

Edge AI Boxを統合管理する「EDGEMATRIXサービス」の一環としてデバイス管理コンソールを提供。専用Webページにアクセスすることで、AIアプリのリモートインストールやアップデート、カメラの設定や制御、地図にレイヤリングする形での視覚的な状況把握などキメ細かい管理が可能だ。現場映像をリアルタイムにモニタリングしたり、内蔵ストレージに録画した映像をチェックしたりする「Edge View」機能もある。「ユーザーが意識することはありませんが、その背後ではWebRTCを活用した“NAT越え”といった高度な技術を実装しています」(長谷川氏)という。

AIの判定をトリガーに特定の動作を起動する「アクションルール設定」も興味深い機能で、Edge AI Boxの用途をイメージしやすいことだろう。例えば、カメラ映像から人の転倒を検知するAIアプリ(推論アルゴリズム)をEdge AI Boxにインストールして介護施設の各部屋に配備。実際に転倒を検知したならスタッフのスマホにアラートメールを送信する、といった設定が可能だ。日々運用する中で、事務室のパトライトを点灯させたり、メールではなくLINEメッセージにした方がよいといった検討がなされた場合、後からいつでも設定できる柔軟性がある。

転倒検知のようなAIアプリについてEDGEMATRIXは、一つのポータルを介して収集・流通させる取り組みをNTTドコモと共に進めている。いわゆるアプリストアの展開だ。ユーザーにとってみればたくさんのAIの中から目的に合致したものを効率的に見つけることができるし、ディベロッパーは渾身のAIをすみやかに収益化することが見込める。サイクルがうまく回りだせば、互恵関係を軸とする大きなエコシステムの形成が期待できるだろう。

Edge AI Boxのように現場に設置する小型デバイスの場合、盗難のリスクが常に付きまとう。プライバシーに関わる映像もハンドリングするとなるとセキュリティへの懸念があるが、EDGEMATRIXは万全の対策で抜かりがない。Edge AI Boxごとの固有な鍵によるセキュアブート、252bitsのエントロピーを持つログインパスワード、アプリや録画ファイルをLUKSで暗号化されたセカンダリードライブに保存…挙げればきりがないほどで、長谷川氏は「いわゆるゼロトラストの考え方に則り、仮に物理的に持ち去られたとしても中身が絶対に見られない頑強な対策を講じています」と強調する。

“オープンソース技術の実践活用メディア” をスローガンに、インプレスグループが運営するエンジニアのための技術解説サイト。開発の現場で役立つノウハウ記事を毎日公開しています。

2004年の開設当初からOSS(オープンソースソフトウェア)に着目、近年は特にクラウドを取り巻く技術動向に注力し、ビジネスシーンでOSSを有効活用するための情報発信を続けています。OSSに特化したビジネスセミナーの開催や、Think IT BooksシリーズでのWeb連載記事の電子書籍化など、Webサイトにとどまらない統合的なメディア展開に挑戦しています。

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