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“もはやSFではない” すべての産業界にAIコンピューティングを―NVIDIA GTC Japan 2016レポート

2016年10月13日(木)
鈴木 教之(Think IT編集部)

NVIDIAは10月5日、同社の年次カンファレンスであるGTC Japanを都内で開催した。昨年は2,000名規模のイベントだったものから今年は倍近い3,500名を動員するなど、NVIDIAや同社のGPUテクノロジーの盛り上がりを見せつけたかたちとなった。

基調講演ではNVIDIAの共同創設者CEOであるJen-Hsun Huang氏が登壇。コンピューティングアーキテクチャの遍歴を、1995年のPCインターネット、2005年のモバイル・クラウドと辿っていき、2015年からは新しい時代が始まると語った。それがソフトウェアが自律的に動作しインテリジェントにクラウドでつながっていくAIとIoTの世界である。「AIコンピューティングによって10年前には想像もできなかった問題解決ができる時代になる、それを牽引しているのがまさにGPUディープラーニングテクノロジーだ」と自信をのぞかせた。

新たな時代の幕開けにはいくつかのブレークスルーが存在する、たとえばこれまでパターン認識には演算負荷が高すぎることがネックになっていた。そこで同社のCUDAに代表されるようなGPGPUが活用されるようになり、並列処理することで10〜100倍に学習速度がアップしたという。また、2012年に発表されたAlexNetで注目を集めたのがディープラーニングである。そして2015年には画像認識の分野で人間を超える精度を達成、2016年のマイクロソフトの発表では音声認識のエラー率が新たなマイルストーンに達するなど転換期を迎えている。ディープラーニングがコンピューティングを新たな境地へと押し上げた、そしてディープラーニングの活用にGPUが現実的であることを示している、と述べた。

NVIDIAは創業時から並列処理に賭けてGPGPUを開発してきた。同氏はそれをさらに推し進め、今後は「HPC」「ビジュアルコンピューティング」「AI」の3つの分野に注力していくと説明した。「VRやAR、AIの時代がもはやSFの世界ではなく現実に到来する。」この2年でワールドワイドのGTCの参加者は4倍、GPUの開発者が3倍、ディープラーニングの開発者は25倍になるなど飛躍的な伸び方をしていることからも期待がもてると言えるだろう。

ではなぜAIの研究者はGPUをディープラーニングに利用するのか。Huang氏は、脳の動きはGPUに近くGPUも脳の処理に似ていると説明し、これまで技術者は自らプログラミングしてきたが、アーキテクチャが本質的に変化していきコンピューターは自律的になると予測した。

学習、推論、デバイス―NVIDIAが考えるアーキテクチャ

ここからは、NVIDIAが考える新たなコンピューティングのアーキテクチャを、同社の各製品・サービスを織り交ぜつつ紹介していった。

学習

ディープラーニングのベースには学習(トレーニング)がある、非常に大規模な学習を実施して精度を向上させるのだが、マイクロソフトの画像認識における事例ではこの3年で16倍ものデータサイズが増えているという。NVIDIAのアプローチはこの増え続ける学習量に対してPascalというディープラーニングに最適化されたGPUを用意することだった。開発には20億ドルの研究費をかけて数千人が3年間がかりというチャレンジとなった。これまでも説明した通り、GPUはディープラーニングに長けていたのが、新たにディープラーニング向けにGPUを設計し直したことで、2013年のKeplerから2016年のPascalでは実に65倍の性能が向上しているという。

推論

このPascalを本番環境にデプロイしてく段階では、データセンターに大量のGPUを搭載したサーバーが設置され、そこで多くのクエリーが処理されることになる。データセンター向けにはTesla P40/P4というPascalベースの推論処理のアクセラレーターを発表している。また、TensorRTと呼ばれる推論処理のライブラリやDeepStream SDKもあわせて開発された。ここで会場では画像処理のデモを発表した。カメラに映し出された映像をリアルタイムで処理し、映像に対して独自の処理を加えてみせた。

NVIDIAのエコシステムは広がり続け、コンシューマーサービスのバックエンドに同社のGPUが活用されることはもとより、パブリッククラウドやオンプレミス上で提供されるサービスにもGPUの搭載が進んでいる。また、1,500社以上のAIスタートアップと協業を進めているという。ここで話は日本の事例に移り、昨年のGTC Japanでの協業が発表されたPFN(Preferred Networks)社のディープラーニングフレームワークであるChainerの紹介や、Rakutenフリマでのレコメンデーションの事例、みずほ証券での金融トレーディングやABEJAによる小売店舗の顧客分析などの活用例が紹介された。

IoT(インテリジェントデバイス)

続くデバイスのカテゴリでは「IoTに最適なソフトウェアはAIによって自己認識される」とする論を展開。組み込み用のAIスーパーコンピューターであるJETSON TX1を紹介した。わずか10Wで起動し、ボードにはソフトウェアも搭載され多くの活用が見込まれている。日本はロボットの国、インテリジェントデバイスに期待を寄せていると抱負を述べた。

また、産業用ロボットの革命としてファナックの事例を紹介、将来の工場はAIとともに発展していくだろうと説明した。FANUC AIと名付けれられた同社のプラットフォームでは、学習用のGPU、推論用のGPU、そして運用GPUのすべてにNVIDIAのテクノロジーが活用されることになる。今後は、経験から学習していき同調し適用していくロボットが必要になる、1つの単調作業ではプログラミングが必要だがロボットが自動で柔軟に働いてくれるようになると、ロボット自身がスキルを学習するようになる。いまロボットの作業は20〜30%だが、今後は残りの70%にどうロボットを活用していくのか、いかにして人間と協業していくのかが重要だと述べた。

市場規模1000兆円のAIトランスポーテーション分野

いま最も注目されている自動車業界についても発表。ロボティクスと同様に、AIトランスポーテーションと呼ばれる自動車業界の中心地も日本である。認識と自己位置の推定、ドライビングの3つが自動走行車においてディープラーニングの活用できる分野だと延べ、Drive PX2やDRIVEWORKSという自律走行のためのOSを発表した。そこでは、自己位置を推定し、車、車線、フリースペースを認識し周りの近未来の状況を推測している。自動車会社80社と研究を進めているそうだ。

最後に、AIコンピューティングに最適なSoCと題したXAVIERを発表、「すべての産業界にAIコンピューティングを。AIによってこれからますます重要になっていく自動車、ヘルスケア、ロボティクスの分野で革命を起こしていく」として同氏は基調講演を締めくくった。

著者
鈴木 教之(Think IT編集部)
株式会社インプレス Think IT編集部 編集長

Think ITの第X代目編集長。新卒第一期としてインプレスグループに入社して以来、調査報告書や書籍(紙/電子)、Webなどさまざまなメディアに編集者として携わる。Think ITの企画や編集、営業活動に取り組みながら、プログラミングやWebマーケティングに関する書籍を手がけている。OSSのRe:VIEWを活用した電子書籍と紙書籍のハイブリッドな出版サービスを構築するなど、プラットフォームやビジネスモデルへの関心も高い。

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