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NTTComが製品化したWebRTCベースのSkyWayは離陸するか?

2017年10月23日(月)
松下 康之
オープンソースのWebRTCを使った商用サービスをNTT Comが開始。シリコンバレーで開発と情報収集に従事するエバンジェリストに話を聞いた。

アメリカ西海岸にあるNTTグループの開発拠点NTT I3を訪問するシリーズの3回目は、Webブラウザーベースのテレビ会議システムを実現するWebRTCに関するインタビューをお届けする。最近になって、WebRTCはiOS 11とWebブラウザーのSafari 11でも正式にサポートされるようになった。すでに春の段階でAppleからWebRTCのサポートは発表されていたが、スマートフォンにおけるメジャーなプレイヤーであるAppleの端末に搭載されることで、今後ユースケースが急激に拡大していくだろう。今回は、NTT Communicationsのエバンジェリストである小松健作氏に話を聞いた。

SkyWayのサイトはこんな感じ

SkyWayのサイトはこんな感じ

自己紹介をお願いします。

私は、WebアプリケーションやWebサービス系の開発とエバンジェリストとしてシリコンバレーに駐在しています。他にも数名のエンジニアが、それぞれのエリアの専門家としてこちらで駐在しています。アメリカにいる理由は、「最新の技術に触れてその動向を調べて、製品などに反映する」ためです。WebRTCに関して言えば、現状はかなり熱い状況になってきていると思いますね。

WebRTCの紹介をしてくれた小松氏

WebRTCの紹介をしてくれた小松氏

AppleのiOSにおける正式サポートというのが大きかったのでしょうか?

それはそうでしょうね。実際に様々なアプリケーションでWebRTCが使われており、このテクノロジーが浸透してきているのを感じます。やはりiPhoneというプラットフォームで、Appleが正式にWebRTCをサポートしてくれたことで、これまで躊躇していた企業が動き始めていると思います。実際、技術者のコミュニティでも活動が活発になっています。

NTT ComのWebRTCを利用したサービスSkyWayは最近正式に商用サービスが発表されました。この製品の位置付けを教えてください。

アプリやWebサイトにリアルタイムコミュニケーション機能を即日実装できる「Enterprise Cloud WebRTC Platform SkyWay」の提供を開始

SkyWay自体は、2013年12月からベータ版ということで公開を行っていました。今回、有償のサービスについても正式に発表したということです。Community Editionはこれまで通り無償ですので、Community Editionで評価を行っていただいて、ビジネスで活用する際にはEnterprise Editionを使っていただくということを想定しています。

WebRTCはオープンソースソフトウェアということですが、開発を主に行っているのはどこですか?

WebRTC自体は、WebRTC.orgという組織が管理を行っている無償のオープンソースソフトウェアです。主なコントリビュータはGoogleで、主にGoogleのエンジニアがコードを書いているといっても良いと思います。

数年前からあったWebRTCが、ここに来てまた勢いを増していると言う時にNTT Comとしても再度プッシュする、ということでしょうか。

やはりAppleの発表が大きかったと思いますが、それとは別に、単体のWebの電子会議というのではなく、アプリケーションの中に動画やチャットの機能を組み込んで使う事例が多くなってきていると思います。そういう機能を組み込むことが、製品の差別化のひとつということなのではないでしょうか。よくECなどのWebサイトで「困ったらここからChatで相談しましょう!」みたいなボイスチャットの機能がありますが、ああいうのがだいたいWebRTCになってきています。日本でも遠隔医療のアプリケーションで使われるほか、英語教育の一環としてテレビ会議を使ったネイティブの話者との一対一の英会話教育のような教育分野での用途もあります。

これはアメリカでもすごくニーズがあるのですが、オンライン教育の分野ではビデオ会話のニーズが大きいのです。例えば、日本ではZ会が英語教育として使っていますが、これまではSkypeが選択肢だった領域なのですが、中高生だとSkypeのIDを持っていないことも多いのです。

それ以上にSkype自体、ちょっと使いこなしが難しいですよね。

まぁそうですね(笑)。その点WebRTCであればブラウザーさえあれば使えますので、その部分のハードルは低いですね。あとやっぱり会員情報とリンクして管理をしたりする場合には、オープンソースソフトウェアのほうがやりやすいということもあります。ID管理だけは別のシステムと統合してシステム化するということもよくあります。その結果、日本の英会話のシステムも、かつてSkypeだったものが徐々に置き換わっていると思います。

Skypeは従来の電話というものを破壊しましたが、今はそのSkype自体が後から出てきたテクノロジーに破壊されつつある、ということかもしれません。

東京にいるとあまり感じませんが、遠隔医療のような部分は地方とかでは求められている気がします。動画と音声のコミュニケーションは必須ですね。

他にも、IoTの中でのユースケースに注目が集まっています。スマートフォンやIoTデバイスの中から動画や音声の機能を使おうとすると、WebRTCにはそれを行うライブラリーが公開されていますので、アプリケーションを容易に作れます。

例えば自動車のカメラと組み合わせて、保険会社がその情報を使って事故時の処理に使うというユースケースが、こちらでは今話題になっています。シリコンバレーのベンチャーで、Nautoという会社がありまして、ここはカメラが車内と車外の両方を撮影するシステムを作っています。これを使うと、「ドライバーがよそ見をしていたタイミングで事故が起こった」ということが全部分かってしまうのです。つまり保険会社にとっても、非常に有用な情報を持てることになります。そういう部分にWebRTCを組み込むと、動画の処理がすごくやりやすくなると思います。

またBoxというオンラインストレージサービスがありますが、それと協業することで「ファイル共有しながら会議をやる」ということが可能になります。すでにBox over VPNというサービスをNTT Comとして展開していますが、それにWebRTCを組み合わせるとアプリケーションが簡単にできるようになると思います。

そのほかIoT系では、監視カメラなどからの動画を使う際にWebRTCを使って画像解析をエッジでやるといったユースケースでも使えるのではないかと考えておりまして、こちらのベンチャー数社と話を進めています。

熱くなっているというWebRTCですが、アメリカではどんなアプリケーションがあるのですか? ユースケースについてもう少し教えてください。

例えばFacebookのビデオチャットは全てWebRTCですね。他にもアメリカのケーブルテレビサービスの最大手Comcastは、インターネットを繋げるだけではなく、家庭用の監視カメラを繋げて動画を受信したり、家庭にある複数のネットデバイスで画像を共有したりするサービスにWebRTCを使っています。個人的な印象ですが、アメリカで一番WebRTCを使っている企業は、Comcastかもしれないと思っています。プラットフォームに当たる部分なので、ユーザーの目に触れるところには出てこないのですが、静かに利用は拡がっていると思います。

NTT Comによる商用サービスとしてのWebRTCが、日本でも始まった。アメリカで先行するユースケースをうまく横展開して、日本に限らず世界の市場で拡大するというのがNTT Comのシリコンバレーチームの次のゴールだろう。

シリコンバレーにいなければ最新の情報やコミュニティの盛り上がりを掴むことが難しいと語った小松氏だが、確実に情報を獲得するコネクションは出来上がっているようだ。NTT Comが公開する今後のWebRTCのユースケースが楽しみだ。

フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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