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インタビュー本番① オープニング(インタビュー全文の無料ダウンロードあり)

2021年9月9日(木)
羽山 祥樹 (はやま よしき)

はじめに

前回は、ユーザーインタビューの事前準備として、会場に用意しておくべき諸々の物品について、なぜそれが必要かの理由とともに紹介しました。

今回から、いよいよユーザーインタビューの本番(実査と呼びます)です。「本物の」会話を見ながら、インタビューの進め方や会話テクニックを解説していきます。

●ユーザーインタビューの全文ダウンロード(無料)
今回紹介するユーザーインタビューは、筆者が本記事を執筆するために、公開許諾をとったうえで実際に行ったものです。通常、インタビュー内容は機密保持のため公開されることはありません。全文公開はたいへん貴重な資料となりますので、ぜひこちらからダウンロードしてください!

インタビューの概要

ユーザーインタビューは2回行いました。それぞれAさん・Bさんと表記します。また、インタビューは昨今のコロナウイルスの状況を鑑みてリモート(Zoom)で行っています。

リクルーティング(インタビュー対象者の募集)は、ソーシャルリクルーティングサービスの「bosyu」を使いました(なお、bosyuは残念ながら2021年6月にサービス終了しています)。

リクルーティング条件は第6回で検討したとおり、「資格試験を2年以内に受験した人」「TOEICや英検、語学資格試験の受験者」としています。人数は、この記事のサンプル用途なので2名に絞りましたが、本当のプロジェクトであれば6〜8名くらい集めます。

Aさん、Bさんはともに20代の男性です。Aさんは教育系ベンチャー勤務、Bさんは私学の英語教員でした。

それでは、まずAさんのインタビューを見ていきます。紙面の都合でポイントのみを抜粋していきますので、ぜひ、この記事末から「ユーザーインタビュー発話録の全文ダウンロード(無料)」をダウンロードし、見比べながら読み進めてください。

インタビュー対象者を迎えるところから
ラポールづくりははじまっている

まず、インタビューの開始直後です。

  • 羽山:こんにちは!どうも、はじめまして、羽山と申します。
  • Aさん:こんにちは。よろしくお願いします。
  • 羽山:よろしくお願いします。今日はお時間をいただいてありがとうございます。大変うれしいです!
  • Aさん:ありがとうございます。

明るく、朗らかに挨拶をしましょう。インタビュー対象者と目が合い、発する最初のひとことからインタビューははじまっています。リモートであれば、画面に対象者が映った直後です。これが対面であれば、自社の受付にいらっしゃった対象者を迎えに行き、顔を見たときの最初のひとことです。

たいてい、インタビュー対象者はインタビューされることに不慣れです。「これからどんなことが起こるのか」とドキドキしています。最初のひとことは、そんな「警戒心」を解くためのチャンスです。朗らかに挨拶をすることで、緊張した心に「この人は敵じゃない」「この人のガイドに従っていれば安心そうだ」と思ってもらうことができます。

ラポール(何でも話してもらえるという信頼関係)の構築の第一歩は、じつは会議室に入る前からはじまっているのです。

インタビューの導入部分は
ていねいに進め、不安感を解く

次は、インタビューのオープニング(導入)部分です。

  • 羽山:すいません。お名前を何とお呼びすればよろしいですか。
  • Aさん:Aで大丈夫です。
  • 羽山:Aさんですね。ありがとうございます。こういったユーザーインタビューをお受けになったことは過去にありますか。
  • Aさん:いや、ないですね。

対象者が答えやすい、当たり障りのない質問のキャッチボールをします。導入は対象者がまだ緊張しているのが常なので、まずは会話を交わすことでリラックスしてもらいます。

筆者は、お名前の読みも確かめて手元にメモしています。1日に何本も初対面の方とのインタビューを詰めこんでいると、インタビューの最中に「あれ、この方のお名前はなんだったかな」となってしまうことがあるので、失礼がないようにしています。

続けて、インタビューの主旨を説明します。

  • 羽山:いちばん最初に、ちょっとこの場の主旨だけお話させていただきますね。
  • 羽山:僕は Think IT というインターネットのメディアに「UXデザインはじめの一歩」という記事を書いてまして、そこで実際にユーザーインタビューをした実録、こういう会話が本当に交わされましたよ、というのを書き起こして載せたいと思っているんですね。そのためのインタビューをさせていただいてということを考えて、募集させていただきました。
  • 羽山:連載の中で、テーマとして「資格試験」というのが世の中の人に伝わりやすい、過去にいろんなワークショップしてきた中で題材だったので、資格試験を実際に受験された方のインタビューをしています。そのきっかけはなんだったのか、受験するときの心の動きみたいなところを、この場でお伺いできればと思っております。

募集時点で主旨の案内はしているものの、対象者のあたまにはざっくりとした印象しか残っていないものです。ていねいに説明を設け、これからのインタビュー時間の方向づけをします。

個人情報の取り扱いを説明し
録画や録音をスタートする

次に、個人情報の取り扱いについて案内をします。

  • 羽山:このインタビューをまず録画させていただいております。これをあとで書き起こして、メディアの記事の中に、実際にこんな会話をしましたと、実際のユーザーインタビューではこういう会話が本当に交わされます、というのを掲載したいと思っています。この点を、これをまずご了解いただきたいというのと。
  • Aさん:はい。
  • 羽山:ありがとうございます。あと、せっかくそういう記事を作るので、おそらくその後イベントなどで登壇して、またその素材を再利用させていただくということがあると思うんですね。そこまで含めてご了解いただきたいなと思っております。
  • Aさん:はい。ぜんぜん大丈夫です。
  • 羽山:ありがとうございます。個人名は出しませんので、その点はご安心ください。
  • Aさん:わかりました。

インタビュー対象者には、これからご自身にとって深い話をしていただくので「どんな話をしても安全だよ」ということを伝えます。また、多くの場合でインタビューは録画や録音をするので、その同意を得ます。もしあなたの会社に「プライバシーポリシー」があれば、提示します。

インタビューに傍聴者がいるときは、その旨を伝えておきます。「このインタビューを弊社の開発チームの者も傍聴させていただいています。ご承知ください」というように伝えます。

もし、あなたがこのインタビューで開発中のプロダクトを対象者に見せるようなときは、「機密保持の同意」についても同意を得ましょう。

個人情報や機密保持への同意が得られたら「それでは録画を開始しますね」と言って、録画や録音をはじめます。録画や録音のスタートを忘れると、せっかくのインタビューを振り返ることができず、まったく無意味になってしまいます! 気をつけましょう。

所要時間を案内する

続いて、所要時間を案内します。

  • 羽山:時間としてはだいたい1時間ぐらいを考えております。
  • Aさん:わかりました。

このとき「この後ろの予定は大丈夫ですか」とひとこと確認しておくのも良いです。インタビューは盛り上がると延長しがちです。相手の時間の制約を把握しておくと、焦らずにスケジュールをコントロールできます。

モデレーターである「あなた」が
期待することを伝えておく

このインタビューの場で、モデレーターである「あなた」が期待することを伝えます。

  • 羽山:資格取得について、ポジティブなこと、ネガティブなこと含めて、フラットに全部情報いただけるのが僕としてはいちばん目的に叶ってるので、本当に率直に思ったこととか感じたことっていうのをお伝えいただけるとすごく嬉しいです。
  • Aさん:わかりました。

インタビュー対象者は、わざわざ時間をとってインタビューに応じてくれているくらいなので、「役に立つことをしゃべろう」という気持ちが強くあります。

しかし、多くの対象者は「役に立つこと=モデレーターの会社を褒めること」「モデレーターの会社をけなさないこと」と思っています。あなたが求めているのは忖度した意見ではなく、ユーザーの率直な言葉であるはずです。

冒頭に「私にとって役に立つことは、フラットに話をしてもらうことだ」とはっきり伝えることで、インタビュー対象者は「良いことも悪いことも話そう」と、あたまを切り替えることができます。

事前アンケートシートを
インタビュー対象者と共有する

オープニングの最後に、事前アンケートシートをインタビュー対象者と共有し、インタビューへ入って行きます。

  • 羽山:いただいたアンケート回答をスライドに転記しておいたので、それを一緒に見ながらお話できればと思います。
  • Aさん:わかりました。

筆者は、このタイミングで「事前アンケートシート」を画面共有しました。これが対面の会議室であれば、アンケートシートのコピーを渡します。

第11回で説明したとおり、事前アンケートシートの目的は、アジェンダとして提示することで「いまからのインタビュー時間はこういうふうに進んでいきますよ」という流れを対象者に知ってもらうことです。

インタビュー中に
手元でメモをとるには

インタビュー中は、どんどんメモをとります。筆者はここから、画面共有したまま、アンケートシートにどんどんメモを加筆していきます。対面の会議室であれば、お互いが見ているホワイトボードにどんどん書き込みをしながら進めているイメージです。

メモをインタビュー対象者にもオープンにすることには、メリットとデメリットがあります。メリットは、対象者とお互いの認識を確認しながら進めたり、場に出た話を一緒に俯瞰しながら話をできることです。また「このモデレーターは私の話をちゃんと聞いているんだな」ということが、文字どおり目に見えて伝わるので、安心感にもなります。

デメリットは、対象者があなたの興味がない話をしても、メモの手を止めてはいけないことです。手を止めてしまうと、対象者は「(あ、この話をしてはいけなかったのかな)」と思い、あなたの顔色を見ながら発話するようになります。不要な誘導をしないためには、出た話題はとにかくすべて書き留めておく必要があります。

もちろん、メモをインタビュー対象者へオープンせずに進めてもかまいません。あなたが場をつくりやすい方法で問題ありません。

おわりに

ここまでがユーザーインタビューのオープニング(導入)の流れと、会話テクニックでした。オープニングはインタビュー対象者の不安をほぐし、ラポールを形成する取っ掛かりになります。

次回は、インタビューの中心部分での会話テクニックを見ていきます。

著者
羽山 祥樹 (はやま よしき)

日本ウェブデザイン株式会社 代表取締役CEO。HCD-Net認定 人間中心設計専門家。使いやすいプロダクトを作る専門家。担当したウェブサイトが、雑誌のユーザビリティランキングで国内トップクラスの評価を受ける。2016年よりAIシステムのUXデザインを担当。専門はユーザーエクスペリエンス、情報アーキテクチャ、アクセシビリティ。ライター。NPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)理事。またIBMの社外アンバサダーであるIBM Championの認定を受ける。

翻訳書に『メンタルモデル──ユーザーへの共感から生まれるUX デザイン戦略』『モバイルフロンティア──よりよいモバイルUXを生み出すためのデザインガイド』(いずれも丸善出版)、著書に『現場で使える! Watson開発入門──Watson API、Watson StudioによるAI開発手法』(翔泳社)がある。

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