CI/CD Conferenceから、サイバーエージェントのエンジニアが解説するCI/CDツールのセッションを紹介する。セッションを担当したのはNakanishi Kento氏とLe Van Nghia氏だ。
このセッションは2部に分かれており、前半ではNakanishi氏がCIツールであるGitHub ActionsのSelf-hosted Runnerとして動作するMyshoesを解説している。また後半ではサイバーエージェントが開発を行うCDツールであるPipeCDについて、Nghia氏が解説している。
GitHub Actions
前半では、ベースとなっているGitHub Actionsを解説した。
GitHubが提供するCI/CDのツールであるGitHub Actionsは、2018年にGitHub Universe(GitHubの年次イベント)で発表されたサービスだ。ビルドやテストなどの実際の実行を受け持つのは、Runnerと呼ばれるプロセスだ。RunnerにはGitHubが運用管理するGitHub-hosted Runnerと、ユーザー自身が用意するSelf-hosted Runnerがあり、管理は必要なもののGitHub-hostedのものと比べて自由度が高いのがSelf-hostedとなる。
しかしSelf-hosted Runnerにはべき等性がないなどの欠点がある。それを解消するために開発されたのがMyshoesと呼ばれるツールで、オートスケーリングや各種パブリッククラウドのインフラストラクチャーに対応していることが特徴だという。
起動するたびに作成されるため、冪等性があり、複数のインフラストラクチャーをベースにしてイメージを作るなどのマトリックスも可能であると解説した。
GitHubからのトリガーをベースにして、各クラウド対応のProviderが仮想マシンベースのインスタンスを立ち上げてジョブを実行するという図式を説明したのが次のスライドだ。
内部の動作の説明として、AWSを例に挙げてRunnerの名前、セットアップスクリプト、利用するインスタンスのタイプなどがProvider経由でAWSのREST APIを使って実行されるまでを解説した。
Myshoes-runnerの今後の展望として、パブリッククラウドの安価なインスタンスを使いこなす可能性、OpenStackへの対応やGPUやFPGAなどの機械学習などに利用されるハードウェアへの対応などが構想の中であると語られた。
サイバーエージェントのCI事情
ここからはサイバーエージェントとしてのCIの状況について語られた。具体的には、サイバーエージェントが開発利用するプライベートクラウドCycloudの説明と、CIとしては各サービスを開発するグループがそれぞれそのビジネスやサービスの内容について最適と思われるソフトウェア、ツールを選択できるという背景が語られた。
GitHubのエンタープライズ版やGitLab、Jenkins、CircleCIなど、各種のCIツールを各グループが選択して使っていたことを紹介した。GitHub Actionsもベータの段階から試用していたという。
CircleCIの企業向けサービスからGitHub Actionsに移行した理由として、コストに対する意識が大きく関係したことを明かした。さらに、GitHubによるRunnerインスタンスを使わずに、Cycloudのインフラストラクチャーを利用することで、よりコストを下げることが可能であるという発見がMyshoesの開発の大きな理由だと語った。
マルチテナントとして実装されているマネージドのKubernetesクラスターに対して、myshoes-proxyがWebhookやREST APIなどのリクエストをベースに起動され、Stadiumと呼ばれる仮想マシンの中でジョブが実行される形だ。ジョブの部分をStadiumと呼ぶのは「ランナーが走る場所だから」というのは、いかにもITエンジニアらしいセンスだ。
またCycloudの中の非Kubernetesのワークロードであっても、Myshoesを通じて同じテナント内の仮想マシンと通信が可能になっているという点も、自社のさまざまなワークロードに対応することを重視する姿勢が現れていると言える。
基本的な仕様はGitHub-hostedのイメージとほぼ同じだが、GitHub-hostedでは選択できなかったCPUのコア数やメモリー数などを選択できるのが特徴だ。
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