エンタープライズLinuxを目指すSUSE、Red Hatとの違いを強調
ドイツに本拠地を構えるSUSEはLinuxのディストリビューションを開発するオープンソースソフトウェアの企業でエンタープライズ向けのLinuxに特化して製品とサービスを提供している。今回、「SUSE Open Forum 2014」と称したプライベートイベントを2014年12月16日に東京で開催、来日したグローバルアライアンス&マーケティング担当副社長、マイケル・ミラー氏とアジア地区担当のチーフテクノロジスト、ピーター・リース氏にインタビューを行った。またSUSEの日本法人であるノベル株式会社のマーケティング本部長、石井明氏も同席し、日本での状況について説明を行った。
System zとSAP HANAがビジネスを牽引
松下:「まずは日本でのSUSEのビジネスについて教えてください。」
ミラー氏:「今のところ、完全に満足しているとは言えませんが、幾つかの点では非常に上手く行っていると思います。まずはIBMのメインフレームであるSystem zにおけるLinuxについては95%のシェアを持っています。」
リース氏:「SAPのインメモリーコンピューティングシステムであるSAP HANAにおいてもシステムの検証などにおいて非常に上手く協調が出来ていると思います。SAPとSUSEは同じドイツに本社があるということも助けにはなっていますが。お互いのオフィスは200㎞ぐらいしか離れていないですし、共同で検証センターを設けて協業していますからね。」
石井氏:「ただ、サーバー全体で言えば、SUSEのシェアはまだ非常に低いのでこれからどんどんシェア拡大をしていかないといけないと思っています。チャレンジですね。」
ミラー氏:「それはチャレンジでもありますが、オポチュニティ、成長する機会を貰ったと前向きに考えるようにしています(笑)。」
SUSE StorageとCeph
松下:「先日発表されたSUSE StorageはCephをベースにしていますが、Cephの主な開発を行っている会社であるInktankをRed Hatが買収しています。それについてはどうお考えですか?」
ミラー氏:「SUSE StorageはオープンソースであるCephをベースにしたスケールアウト出来る分散ストレージのソフトウェアです。確かに開発元であるInktankはRed Hatが2014年の4月に買収を発表しましたが、実は我々がCephをSUSE Cloudに採用することを発表したのは2012年の11月です。つまりRed Hatよりも先にCephについては統合を始めていたというわけです。SUSE CloudはOpenStackの我々SUSEによるディストリビューションですが、Red Hatよりも2年から3年先にInktankと協力して開発を進めてきましたからね。我々は今回、SUSE Storageとしてベータ版を発表しましたが、これはオープンソースのCephをベースにしていますので、InktankをRed Hatが買収したことに関しては直接の影響は無いと思っています。逆にInktankをRed Hatが買収してくれて良かったと考えています。Red Hatはオープンソースにコミットしている会社ですので、テクノロジーがオープンで無い状態になってしまうことはないだろうと。」
松下:「つまり、もしもオープンソースにコミットしていないような企業がInktankを買収していたらCephの進化が止まってしまう恐れがあったということでしょうか?」
ミラー氏:「そう言っても良いと思います。よくあるのはコアな技術はオープンソースとして開発するが有償のソフトウェアとして販売をする時には独自に開発した部分を加えてパッケージ化するというやり方です。Red Hatの元であればそういうことは無いだろうと思いますし、開発されたテクノロジーはコミュニティに還元してくれるだろうと思っています。」
松下:「SUSE StorageについてはVMwareのEVO:RAILと同じ位置付けのソフトウェアとなると考えて良いですか?」
ミラー氏:「そうですね。我々はSUSE Storageに関しては通常のサブスクリプションベースの提供とOEMなどの形式での提供の2つを形式を考えています。今のところは2015年の前半にはリリースしたいと考えています。」
Red Hatとの違いとOpenStack
松下:「Red Hatとの違いという部分で両社とも「エンタープライズ」という単語を製品名に使っています。Red Hatとの違いは何でしょう?」
ミラー氏:「Red HatとはLinuxのカーネルや様々な部分で協力していますし、エンタープライズへのソリューションを提供するという部分では同じですが、我々のほうがもう少しシリアスに考えているかもしれませんね。我々のほうが『エンタープライズ』に関しては少し定義としては狭いというか厳しいのかもしれません。可用性であるとかセキュリティとかに関して非常に高いゴールを課しています。我々のエンジニアは常に高いレベルの顧客の要求に応えることを第一に考えていますし、常に高いゴールにチャレンジすることが好きなのです。」
リース氏:「私は我々の提供するLinuxを『シリアスLinux』と呼んでいます(笑)まぁ、『ジャーマンエンジニアリングのクルマを選ぶか、アメリカ製のクライスラーを選ぶか、その違いです』という冗談はたまに聞きますね(笑)」
松下:「SUSE CloudはOpenStackのSUSEによるディストリビューションだということですが、何故OpenStackという名称を使わなかったのですか?」
ミラー氏:「実はSUSE Cloudを発表した時はまだOpenStack Foundationの中での名称の使い方が決まっていなかったのです(笑)。なのでOpenStackという名称を使えるのかどうか分からなかったので、わざとOpenStackを外したのです。次のバージョンのSUSE Cloudからは「SUSE OpenStack Cloud」という名前になる予定です。」
リース氏:「我々はOpenStackについても高可用性のモジュールなどに貢献をしていますし、これからもOpenStackについては貢献を続けていくつもりです。」
OpenStackは更に加速
松下:「SUSEの今後の計画について教えてください。」
ミラー氏:「プライベートクラウドは市場に出てくる製品がもっと成熟してくるので、多くの企業がトライアルから本番環境に移ってくると思います。昨日、2014年12月15日にインドのシステムインテグレーターであるWiProがSUSE Cloudを活用したソリューションについて発表しましたが、これはWiProがSUSE Cloudをリファレンスアーキテクチャーとして採用したという内容となっています。こういった動きは今後も出てくると思います。また、OpenStackによるプライベートクラウドのビジネス以外にもレガシーなUNIXからのマイグレーションはどんどん拡がっていくと想定しています。これまでアジアの国々では欧米に比べてUNIXからLinuxへのマイグレーションは遅れていると言われてきましたが、それもだいぶ解消するでしょう。OpenStackについては、もうプライベートクラウドは何にするか?という段階は過ぎて、OpenStackがデフォルトの選択肢になると思います。かなり前にLinuxがエンタープライズOSの選択肢として認識された時と同様にLinuxにするかどうか?ではなくてLinuxのどれにするか?という段階ですね。ですので、OpenStackのどのディストリビューションを使うのか?というように状況は変わってくると思います。先日開かれたパリでのOpenStack Summitでもかなり本格的な導入事例が紹介されていたようにOpenStackへの移行は加速すると思います。」
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