オープンソースのストレージ管理ソフトウェアSODAがオンラインカンファレンスを開催
オープンソースのストレージ管理ソフトウェアであるSODAが、オンラインカンファレンスを開催した。SODAは元々Huaweiが社内で開発されていたストレージソフトウェアをオープンソースとして公開(当時はOpenSDSという名称だった)したもので、SODAを管理するSODA FoundationはThe Linux Foundation配下の組織として運営されている。2021年7月13日と14日に行われたカンファレンスでは、Huaweiとアメリカに存在するHuaweiの関連会社であるFutureweiによるセッションに加えて、Intel、IBM、VMware、LINBITなどのベンダーによるセッション、さらにChina Track、Japan Trackとして中国語、日本語のセッションも行われた。
今回は初日のキーノートセッションを紹介する。SODAについては、過去にThinkITで記事を公開しているので、そちらも参考にして欲しい。
参考:Huaweiが開発をリードするSODAのコミュニティマネージャーにインタビュー
キーノートに登場したSteven Tan氏はSODA FoundationのChairmanであり、FutureweiのCTOだ。その後に登壇したのはOIF(Open Infrastructure Foundation)のExecutive DirectorであるJonathan Bryce氏、そしてCNCF(Cloud Native Computing Foundation)のMarketing ManagerであるBill Mulligan氏だ。
今やクラウドネイティブといえばKubernetes、そしてそのKubernetesをホストするCNCF配下の多数のオープンソースプロジェクトで構成するというのが定石だ。しかし実際には仮想マシンを要求するアプリケーションも残っているだろうし、エンタープライズ企業においては仮想マシンを運用管理する場合にOpenStackは有力な候補と言える。そのOpenStackをホストする団体がOpen Infrastructure Foundation、かつてのOpenStack Foundationだ。SODA FoundationはCNCFとOIFの双方を招いてキーノートセッションを行うことに大きな意味があると考えたのだろう。
今回のカンファレンスは2日間のバーチャルカンファレンスということで、リアルのカンファレンスと比べればコストは低いと思われるが、それでもベンダーやユーザーなどからの協賛はプロジェクトの勢いを見せるためにも必要だ。ここではIBM、Intelと並んで富士フイルム、トヨタ、Huaweiが最上位のスポンサーとして挙げられていることがわかる。
この後、OIFのJonathan Bryce氏にバトンタッチしてOIFの概要、現在ホストしているプロジェクトなどの説明を行った。
OpenStackをホストしているのは当然だが、OIFはそれ以外にコンテナランタイムのKata Containers、AnsibleをベースにしたCI/CDツールのZuul、エッジ向けのインフラストラクチャースタックであるStarlingXなどもホストしている。OIFとしては、インフラストラクチャーであるOpenStack以外にも必要なソフトウェアがあることを示しているのだろう。
OpenStackは多くのサブプロジェクトから構成されるプライベートクラウドインフラストラクチャーだが、コアとなるソフトウェアは次のスライドの赤で囲まれた部分になる。
より詳細なソフトウェア構成については以下の公式サイトを参照されたい。
OpenStack 公式サイト:OpenStack Services
ここでは簡単なオーバービューを紹介したBryce氏だったが、OIFとして実際に訴求したかったのは「OpenStackはまだ死んでいない」というメッセージだったのだろう。ここで、この日の後半に行われた「Technical Overview of OpenStack, Kubernetes, and Storage Plugin」というセッションで、OIFでUpstream Developer Advocateという肩書きを持つKendall Nelson氏が行った10分程度のセッションで使われたスライドを紹介したい。
このスライドで使われた「OpenStackは死んでいないしKubernetesが殺したわけでもない」というメッセージは、OpenStackの将来を不安視しているIT部門の管理職には適切だろう。またOpenStackのモジュールは独立させて利用することも可能であり、例としてCinder(Block Storage)とManila(Shared File Systems)はKubernetesの一部としても使うことができると解説した。
ここではOpenStackが終わったプロジェクトではないことを強く訴求し、ファウンデーションとしても共存できることを訴えた形になった。
Bryce氏は、インフラストラクチャーを受け持つソフトウェアが仮想マシンだけではなくエッジや人工知能などの新しいアプリケーションにおいても必要になること、そのためにプロジェクトを増やしていることを解説した。
次に登壇したCNCFのBill Mulligan氏はMarketing Managerという肩書きの人物だが、就任したのが2020年10月ということで、これからのCNCFの対外的な活動を支えていく人物ということになるのだろう。ここではCNCFのメンバーとなっている企業及び組織数の推移などを紹介した。
そしてかつてのKubernetesはステートレスのいわゆるクラウドネイティブなストレージだけをサポートしていたが、ステートフルなアプリケーション、ストレージもサポートしているとして紹介したのが次のスライドだ。
SODAがサポートするCSI(Container Storage Interface)やOpenEBS、ChubaoFSなどを紹介し、CNCFとSODA Foundationが協調していることを訴求した。
またOIFのJonathan Bryce氏も強調していたエッジに対する取り組みについては、スライド1枚を使ってエッジ向けのソフトウェア、サービスを紹介した。OIFがエッジへのサポートとしてStarlingXを名前だけ紹介したのとは対照的に、K3s、KubeEdge、OpenYurtなどのエッジ向けのインフラストラクチャー、ベアメタルのためのTinkerbell、Metal3などを挙げて、ポートフォリオが充実していることを訴求した。
OIFもCNCFの両者ともストレージを重要視していること、SODA Foundationと協調していることを示した形になった。
Steven Tan氏は、他のストレージとの連携と互換性を保つためのOpen Data Frameworkについても解説を行った。これは2020年9月に発表されたイニシアティブで、単に互換性を維持するだけではなくクラウドからオンプレミス、さらにエッジにおいてもデータの移行性を高めるための仕組みであると言う。
SODA FoundationのSteven Tang氏が過去のリリースの経緯を説明したのが以下のスライドだ。ここでは2017年から2019年にかけてOpenSDSとしてHuawei社内で開発されていたソフトウェアをオープンソースとして公開し、名称を変えFから始まるコードネームFaroe(フェロー諸島)で1.0が公開された2020年7月から3ヶ月ごとにバージョンアップしてきた歴史を解説している。
また新しく連携を可能にしたソフトウェアとしてYIG、DAOSなどが紹介された。
LINSTOR、OpenEBS、Zenko、CORTXなどを、SODAと連携するエコシステムの最初のメンバーとして紹介された。
最後にSODA Foundationが行ったリサーチの結果を紹介。ここではエンドユーザー、ベンダーの両方がSODA Foundationの活動を重要だと思っているという内容を紹介した。
全体的に新しいニュースはなかったものの、OIF、CNCFからサポートされていること、SeagateやScalityなどのストレージベンダーからも支持されていることなどは、プレスリリースを通じて公開されている。Huawei色を極力抑えてニュートラルな立ち位置でエンタープライズ企業に浸透しようという意図を感じられるセッションとなった。SODAは中国、日本などでの利用は拡がっているものの、北米、ヨーロッパでは存在感が今一つ低いというのが課題だろう。今後の活動に期待したい。
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