ランサーズが「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」を公開。コロナ禍前後でフリーランスの働き方はどのように変化したのか。「個の力」を活かす新サービスの発表も

2021年12月8日(水)
八木 志芳(やぎ・しほ)

日本最大のクラウドソーシングサービスを展開する「ランサーズ株式会社」は、2021年11月12日、新たな事業戦略を発表する記者会見をオンライン上で開催。同社がまとめた『新・フリーランス実態調査 2021-2022年版』の解説と、新サービス「Lancers Digital Academy」の発表などを行いました。

まずはランサーズ株式会社 代表取締役社長 CEOの秋好陽介氏が登壇。新型コロナウイルスの世界的な流行により、日本の労働環境が大きく変化したことに触れ、「中小企業でDXの運用が進み、オンラインで優秀な人材を確保できるようになった。今、経営を支援する存在として、スポットで優秀なフリーランスが参加する機会が増えている」と述べました。

そんなコロナ禍におけるフリーランスの状況について、同社の取締役 曽根秀晶氏が説明。『新・フリーランス実態調査 2021-2022年版』として発表しました。

ランサーズ株式会社 代表取締役社長 CEO 秋好陽介氏

この報告書は、昨年アメリカで行われた調査と、今年9月30日から10月4日にかけて国内の3094人を対象に同社が実施した調査結果、そして総務省の資料などを元に作成されています。

『新・フリーランス実態調査 2021-2022年版』の詳細:https://speakerdeck.com/lancers_pr/xin-huriransushi-tai-diao-cha-2021-2022nian-ban

コロナ禍で伸びるフリーランス市場

同調査によれば、コロナ禍になり、日本ではフリーランス(兼業・副業含む)の人口が増加。2019年の1,118万人に対し、2021年は1,577万人になりました。これは労働人口の22.8%がフリーランスとして働いた経験があるということだそうです。

現在のフリーランス人口・経済規模
出典:【ランサーズ】新・フリーランス実態調査 2021-2022年版

また、リモートワークが進み、2021年10月までの1年間でオンラインのみで仕事を完結させたことのあるフリーランスは約半数の53.2%。さらに、オンラインで働くフリーランスは、フリーランスの平均よりも年間報酬額が10万円程高く、1週間の勤務時間が1時間短いということも発表されました。「働く時間や場所を選択し、自分に合った働き方をすることで、より効率的に働けるようになったからではないか」と分析しています。

オンラインで仕事をするフリーランス
出典:【ランサーズ】新・フリーランス実態調査 2021-2022年版

そして、フリーランス人材の内容や質が変わってきていることにも言及しました。同社のアンケートでは、フリーランスの30%以上が「過去や現在にマネジメント経験がある」と回答しているそうです。また、77.1%のフリーランスが「自身の仕事に対してプロフェッショナルな意識を持っている」と回答しており、コロナ禍により時間に余裕ができたマネジメント層がフリーランスになっていること、そして、フリーランスの仕事への意識が高さが浮き彫りになりました。

さらに、同調査では「フリーランスの学ぶ意欲」についても注目。フリーランスの60.9%が『仕事をしながら新しい学びを得ていきたい 』と回答しています。

フリーランスの学ぶ意欲
出典:【ランサーズ】新・フリーランス実態調査 2021-2022年版

また、「今後新たに学びたいスキル」という質問については、20~40代で「プログラミング」という回答が最も多くなっています。その他にも「動画撮影・編集」や「WEBデザイン」といったデジタルスキルが上位となっていました。

今後習得したいスキル
出典:【ランサーズ】新・フリーランス実態調査 2021-2022年版

学ぶ意欲の強いフリーランスが多いことについて、曽根氏は「フリーランスの方が、直接的にクライアントと向き合っているため感度が高いのではないか」と解説しています。

ランサーズ株式会社 取締役 曽根秀晶氏

「個のエンパワーメント」ための新サービス

コロナ禍により生じたフリーランスの内容や質の変化、そしてスキルアップを求めるフリーランスの意欲に応えるべく、ランサーズは2021年の新ビジョンを発表しました。

それは「すべてのビジネスを『ランサーの力』で前進させる」そして「誰もが自分らしく才能を発揮し、『誰かのプロ』になれる社会をつくる」という、企業と個人それぞれに向けた2つのビジョンでした。

ランサーズが提唱する2021年の新ビジョン

ミッションには「個のエンパワーメント」を掲げ、フリーランスが「誰かのプロになれる」そして「誰かのプロになり続ける」ための3つの新サービスを発表しました。

「個のエンパワーメント」ための3つの新サービス

①「Lancers Digital Academy」

1つ目は「Lancers Digital Academy」。学びの先にある“プロフェッショナルとしての実務”を見据えた仕事連動型の教育サービスです。

「AI関連スキル」「ノーコード・ローコードスキル」など、デジタル分野の業界トッププレイヤーが監修・制作した教材で学ぶことができ、受講生の学んだスキルに応じて専任コンシェルジュが仕事や案件を紹介してくれるそうです。

「Lancers Digital Academy」サービスの特徴

つまり、オンラインで学べるだけではなく、学んだスキルをビジネスに直結、報酬も得られるオンラインスクールとなっています。フリーランスにとって一番のネックである「仕事の獲得」を手助けしてくれるサービスと言えそうです。

なお、本サービスは現在事前登録を行っており、2022年上旬に本格スタートとしています。

②「Lancers パッケージ方式」

2つ目の「Lancers パッケージ方式」は、フリーランス向けビジネス領域特化の高単価のスキルシェアサービスです。仕事をしたいフリーランスは、350種類以上のビジネススキルカテゴリーを選んで、スキルを出品できます。

ビジネス領域に特化した高単価のスキルシェアサービス

最大の特徴は、最低価格1万円であること。既存のランサーズのサービスでは低単価な仕事も見られる中、フリーランスがスキルを安売りすることなく、自分をブランディングできる内容となっています。

③「Lancers Teams」

最後の3つ目は企業向けの「Lancers Teams」。高スキルの社外人材を自社専用チームとして活用できるサービスです。クライアントは、豊富な人材プールから自社専用のクラウドのチームを立ち上げることができ、単純なスポットから、企業の経営に直結するような長期案件まで、必要に応じたチームを組むことができます。

高スキルの社外人材を自社専用チーム化できる

人材不足に悩む昨今の企業にとっては、優秀な人材を確保しやすいサービスと言えるのではないでしょうか。

* * * * *

新型コロナウイルスの影響により、働き方の見直しが急速に進みました。オンラインのみで完結できる案件が増えるなかで、デジタルスキルを持つフリーランスにとっては、チャンスが増えているようです。

既存のフリーランスはもちろん、ランサーズの新サービスが、ポストコロナ時代で理想の働き方を叶え、ステップアップしたい人の味方となってくれるよう期待したいです。

著者
八木 志芳(やぎ・しほ)
ラジオDJ/ナレーター(F Factory Japan所属)
大学卒業後、IT企業・レコード会社を経て、福島県のラジオ局にてアナウンサーとしてのキャリアをスタート。2017年11月にフリーのラジオパーソナリティー・ナレーターとなり、同時にライターとしての活動も始める。アナウンサー・ライターとしてインタビューしてきた人数は500人以上。茨城放送「Sunday 10Carat Numbers」出演中。


▼Twitterアカウント
:https://twitter.com/ShihoYagi

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