Huaweiが開発をリードするSODAのコミュニティマネージャーにインタビュー
オープンソースプロジェクトが成長するためには十分なデベロッパーの確保が必要だ。しかし企業が社内で開発していたソフトウェアをオープンソースとして公開する際に、社内のエンジニアだけに頼るとコミュニティは成長せず、透明性のあるガバナンスも不可能になり、結果としてコミュニティは硬直化し、エコシステムは成立しない。
企業発のオープンソースプロジェクトがいかに外部の人間を取り込むか? というのは大きな課題である。Huaweiが開発したSODA(前の名前はOpenSDSというストレージ管理ソフトウェア)も、OSSとしての出発の時点で「社内の調整に非常に時間がかかった」というプロジェクトだが、コミュニティとして拡大を狙うのであれば積極的な外部デベロッパーの取り込みが必要だ。
今回はThe Linux Foudationが開催したOpen Source Forumの翌日に開催されたSODA Forumにおいて、日本におけるコミュニティマネージャーに任命された伊藤正宏氏にインタビューを行った。
最初に伊藤さんの自己紹介をお願いします。
私はフリーのエンジニアとして仕事をしています。そもそも学生時代にある企業のアルバイトとしてMS-DOSの時代のパソコンの面倒をみる仕事をやっていたんです。ついでにそこのシステムの運用とか開発とかもやってました。そのうち運用だけでなくソースを直してプログラムを改良するといったことをやっていたら、その会社の社長の紹介でいろいろなシステムに関連する仕事を請けるようになりました。そうこうしているうちにパソコンブームみたいな時代がやってきて。当時やたらとWindowsとかPC関連の書籍を書く仕事が入ってきて、そういう書き物の仕事もやってましたね。そんなことしているうちに大学院まで行ったんですが、結局、就職はせずにフリーのエンジニアとして仕事を続けているということですね。
SODAというかOpenSDSの仕事に関わった理由を教えてください。
当時仕事で関わっていたサードウェアさんの関係でLINBITのDRBDとかの仕事をやっていて、そこから繋がっている感じですね。LINBITのDRBDがOpenSDSに対応したという辺りの仕事からOpenSDSと関係ができました。当時のLinuxConでLINBITとOpenSDSが出展して話をしてた時に、「日本での展開について手伝ってくれ」というリクエストがLINBITとOpenSDSの双方から来まして。
なんかロックオンされた感じですね(笑)
そうなんです。結局、3方向から同時に話が来て伊藤さんならできそうだからやってもらおうみたいな感じで。これが3年前だったと思います。それで日本でイベントをやりたいという話を手伝うことになったという感じです。実際に話をしてみてわかったのは、OpenSDSって意外と日本のユーザーが使っていてコミュニティのメンバーにもなっているということです。その一方で、個々の活動はバラバラで、PoCやってみたり仕様の要望を書いてみたりしてるけど、まとまってないなと。
そういう意味で横串に活動をまとめるみたいなことを私がやって、最初のMeetupを2017年あたりにやったんですけど、それがメーカーもユーザーも集まって80人くらいのイベントになって結構な盛況になりました。
そこで私は一旦抜けたんですけど、次のイベントに続かなくて。そこからSteven(Steven Tan氏、SODAの技術面のトップ)とビジネス開発をやっているLarry(Lawrence Lai、Huaweiのストレージ関連のビジネスアライアンスのトップ)から連絡が来て、お前にやってもらわないとダメだ、みたいな感じで再度やる羽目になったということです。ちゃんとコミュニティを盛り上げる仕事としてコミットしてくれと。つまり実際にMeetupが上手く行ったのは、ソフトウェアが良かったからじゃなくて、人間の繋がりができていたからだということに気付いたんでしょうね。
その時にすでにThe Linux Foundationにホストされることは決まっていたのですか?
そうです。なのでソフトウェアとしては良いものですし、LFという組織がホストすることは決まっていたので、素性は良いソフトウェアなんです。あと私は外部の人間ですけど、実際の裏方はHuaweiの社員が手伝ってくれています。でもそういうベンダーが表に出てはダメだという感覚はあるんだと思うんですよね。これって実はトランプ政権がHuaweiにいろいろ言い出す前からの姿勢なんですよ。なので、社外の人を巻き込んでコミュニティを作ろうという意識は高いです。Huaweiは、そういうことをよくわかっていると思います。
Steven Tan氏にインタビューした時も「Huaweiの中でオープンソースをやるということを調整するのが凄く大変だった」というコメントもありましたけど、コミュニティ作りもボランティアだけではやはり上手く行かないと思います。それに仕事してコミットするというのは正しい選択だと思います。
ボランティアだけだと上手く回っている時は良いんですけどね。企業の人でオープンソースにコミットしている人は、その企業から給料をもらって仕事としてやっています。そのため、企業の方針が変わった場合にはいなくなってしまうんですよ。
そういう意味では仕事としてコミュニティを盛り上げるのは重要ですね。コミュニティマネージャーとして向こう1年間の目標はなんですか?
SDSとしては後発なので、まずは必要な機能をちゃんと実装する、そのために日本で必要とされる機能についてのリクエストを上げる、ということをやりたいと思います。後は露出して認知度を上げることです。もっと日本の企業に知ってもらう必要があると思います。もっとも、すでにヤフージャパンやトヨタ、NTT Comといったにユーザーもいますし、開発もしっかりしているので、まったくのゼロからスタートということではありません。そこは良かったと思います。
Huawei発のオープンソースプロジェクトとしてOpenSDSがSODAという名前でさらに発展していくためには、ソフトウェアそのものの進化も必要だが、それを利用するユーザーの拡大とマネタイズを行うベンダー側のエコシステムがサイクルとして回ることが必要だ。Huaweiという巨大資本のバックアップだけではなく、オープンソースソフトウェアを活用したいユーザーサイド、付加価値を作り出すベンダーサイドのシナジーを日本でも作ることができるのか。SODAの今後の動向に注目したい。
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