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SODACON Global 2021、トヨタが「一緒に走り続ける」と宣言したコネクテッドカーのインフラ

2021年12月14日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
SODACONから、トヨタのコネクテッドカーのインフラに関するセッションを紹介する。

オープンソースのストレージ管理ソフトウェアSODAのオンラインカンファレンスから、トヨタが行ったセッションを紹介する。

プレゼンターはトヨタの伊藤雅典氏

プレゼンターはトヨタの伊藤雅典氏

動画:SODACON2021 Day2 Japan Track Data Processing for Connected Car Use Case and Expectations to SODA

トヨタが語る「大変革」

プレゼンテーションを行ったのはコネクテッド先行開発部に所属する伊藤雅典氏だ。タイトルは「コネクテッドカーにおけるデータ処理とSODA Foundationへの期待」というもので、トヨタの考える将来のクルマのあり方、それを支えるIT基盤に関する解説、そして今回の主催者でもあるSODA Foundationに対する思いを語っている。

今回のトピックはこの3つ

今回のトピックはこの3つ

このセッションではトヨタが考える「大変革」、「大変革を支えるITの課題」、「コネクテッドカーを支えるデータ情報基盤」の3つに絞って説明が行われた。

最初のトピックであるトヨタが考える大変革とは、クルマの持つ意味が変わってきたということだ。都市部では「クルマを所有する」という需要が減ってきてはいるものの、「移動」に関する需要は存在しており、その変化に対応しなければいけないというものだ。クルマを作って売ることが企業の存在価値であったトヨタが、意識改革に取り組んでいることを示している。また業界や国の規制も変化しており、スライドに書かれているCASE(Connected、Autonomous、Shared/Service、Electric)という略語に表れているようにネットワークに接続され、自動運転が可能で、所有するのではなくサービスといて利用する形態の電気車両に移行し始めていることを、外的要因として解説した。

トヨタが考える大変革の要因

トヨタが考える大変革の要因

興味深いのは、トヨタはこのクルマの変革をスマートフォンの変革になぞらえて考えていることだろう。伊藤氏は、スマートフォンが半導体などの部品とそれをまとめるソフトウェアプラットフォームによって垂直統合ではなくなったことを例にあげて、CPUやメモリーなどのパーツが重要なのではなく、プラットフォームを作る側になることがなによりも重要だと考えていることがわかる。

スマートフォンで起こったことがクルマでも起こると予想

スマートフォンで起こったことがクルマでも起こると予想

これをクルマに当てはめてみれば、コモディティ部品を集めて電気自動車を作るTeslaのような企業が現れる時代には、エンジンもシャーシもそれほど重要ではなくなるというわけだ。クルマを情報機器と見なして、全体をサービスとして統合することで差別化が行われるということだろう。トヨタが「100年に一度の大変革」と語る際には、トヨタが始まって以来の最大の変化が来ているという意味が込められていることを強調した。

コネクテッドカーに関わるデータは激増

コネクテッドカーに関わるデータは激増

このスライドではコネクテッドカーに関わるデータ量が激増することを解説した。コネクテッドカーの台数も増加し、1台から発生するデータ量も増大するという予想だ。このデータ量にはECU(Electronic Control Unit)などのクルマ自体から発生する観測データ、周囲の環境に対するセンシングデータなどが含まれており、トヨタが考える「データ」にはクルマと道路や周囲から収集したセンサーからのデータも含まれることが示されている。

コネクテッドカーを支えるIT基盤の概要

コネクテッドカーを支えるIT基盤の概要

またコネクテッドカーからのデータを処理するIT基盤は、一次的にデータを収集するエッジサイト、WANを経由してデータを処理するクラウド基盤から構成されることがわかる。データセンターを「マルチ/ハイブリッドクラウド」と表記していることや、データ収集にはモバイルネットワークを使うことからもわかるように、実施される国や地域の状況に合わせて柔軟なシステム構成を志向していることが透けて見える。グローバルでビジネスを展開しているトヨタらしいと言える。

コネクテッドカー用IT基盤の変遷

ここからは、コネクテッドカー用のIT基盤の過去を紹介する内容となった。

トヨタのコネクテッドカー向けIT基盤の変遷

トヨタのコネクテッドカー向けIT基盤の変遷

最初のスライドでは、オンプレミス+ウォーターフォール型の開発であった黎明期を経てベンダーが用意したクラウド(IaaS)の上で新しい基盤を作ったものの、スケールできない構造であったこと、使いこなすには高いスキルが必要だったこと、コスト削減にはあまり効果がなかったことなどを挙げて説明した。

第1世代のクラウドはベンダー主導型

第1世代のクラウドはベンダー主導型

2016年から始まった第2世代では、ビッグデータを処理するためにオープンソースソフトウェアの活用をはじめたことを解説したが、やはりオープンソースを使いこなすには従来とは異なったスキルが必要となったこと、コストが試算よりも増加したことなどを反省点として挙げた。

第2世代はOSSを使ったビッグデータ処理

第2世代はOSSを使ったビッグデータ処理

2019年からは最新の第3世代が始まっている。ここでは明確に運用コスト削減、アジャイル開発を目的にプラットフォーム選びから始まったことを説明。

第3世代はアジャイル開発と運用コスト削減が目的

第3世代はアジャイル開発と運用コスト削減が目的

サーバーレスを使ってサーバー運用コストを削減するということに呼応して、2020年8月にトヨタとAWSの戦略的な業務提携が発表されていることからも、IaaS運用のコストを圧縮するためにパブリッククラウドのリーダーであるAWSと連携し、サーバーレスに向かったと考えるべきだろう。トヨタとAWSの業務提携については以下のページから参照されたい。

参考:トヨタとAWS、トヨタのモビリティサービス・プラットフォームにおける業務提携を締結

今後に向けた考察

そしてこれまでの経緯を受けて、プラットフォーム開発及び運用に関しての考察を行った。

問題意識と解決のための方策

問題意識と解決のための方策

ここでは問題解決のために「常に振り返る」ことが必要だとして、これまでのトヨタが行っていた「カイゼン」の発想で取り組むべきだと解説した。特にスケーラビリティ、トラブル対応、コスト増加、自身で維持できることなどがポイントであると語った。またオンプレミスに戻るのではなく中身を自身で理解して使うこと、開発部隊、運用部隊との関係を良好に保つことがより重要なポイントとであると語った。

今後のシステム像について

今後のシステム像について

ここからはトヨタが重要視しているポイントについて解説したスライドを使って説明。ハイブリッドクラウドによる全体コストの最適化、見える化のためのオブザーバビリティ(可観測性)の確保、解析と予測、さらに壊れることを前提としたシステムのための手法として、カオスエンジニアリングに注目していることを解説した。

最後のパートに『「データ」目線の課題』というスライドを用意していることから、SODAのイベントでのセッションであることを忘れていないことはわかる。ここではデータの種類として「動画」が挙げられていることに注目したい。

トヨタが考えるデータに対する留意点

トヨタが考えるデータに対する留意点

最後にSODA Foundationへの期待として、トヨタが関わるようになった経緯を解説した。トヨタは、オープンソースを扱うには高いスキルが必要だと第2世代のIT基盤の際に理解したことを前述した。そこから、単に使うだけではなく仲間作りをしながらオープンソースソフトウェアに関わるという姿勢が重要だと気付いたのが重要なポイントだろう。2017年からEUAC(End User Advisory Committee)のメンバーとしてOpenSDSに関わっていたという経緯を経て、今回の発表になったと思えばトヨタのプレミアムスポンサーという役割は必然だったとも言える。

SODA Foundationとの関わりを解説

SODA Foundationとの関わりを解説

そして単にSODA Foundationへの期待だけを語るのではなく品質の安定化への貢献、自社のWebサービス関連のシステムから利用を始めると語り、ユーザーではなくコントリビューターとしてもコミュニティに貢献を行う姿勢を見せてセッションを終えた。

トヨタはSODAコミュニティと一緒に走り続けると宣言

トヨタはSODAコミュニティと一緒に走り続けると宣言

全般的にトヨタの危機意識と将来計画などが垣間見えたセッションであった。パブリッククラウドベンダーの名前や利用しているソフトウェアなどの詳細が一切省かれ、コスト増の要因となった具体的な説明も省かれた内容で、よりシステム内部の話を聞きたかった視聴者には若干の欲求不満が残ったのではないだろうか。トヨタが得意とするコストについても定量的な情報は明かされず、定性的な内容になってしまったのは残念と言える。今後、より詳細な内容を明かしてくれる機会があることを願わずにはいられない。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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