Open Source Forum:Huaweiが開発をリードするSODAに注目
The Linux Foundation(LF)が開催したOpen Source Forumでは、ブロックチェーンのHyperLedger、IoT向けのリアルタイムOSのZephyrなどに並んで、オープンソースのSoftware-Defined Storage(SDS)であるSODAのセッションが行われた。今回はそのセッションとインタビューをお届けしたい。SODAは少し前までOpenSDSと言う名称で呼ばれていたオープンソースソフトウェアで、元々はHuaweiが開発を行っていたものをオープンソースとして公開したものだ。プレゼンテーションを行ったのは、Huaweiの北米にある子会社FutureweiのVP&CTOであるSteven Tan氏だ。
Tan氏はSODAが解決するべき問題としてクラウドのストレージ、オンプレミスのストレージがサイロ化されてしまうことを指摘。特にストレージごとにインターフェースが異なること、スケールしないことなどを解説した。
続けて、これらの問題点に対するSODAの解決策を提案する。「Store, Run, Any Data Anywhere」というのがキャッチコピーであるように、インターフェースを統一してパブリッククラウド、オンプレミス双方を統合するフレームワークとしてのSODAを解説した。ここで「フレームワーク」という用語を使っていることがポイントで、実際SODAはストレージそのものというよりも、Ceph、S3などのストレージをまとめる枠組みとしてコントロールプレーンを実装するソフトウェアだからだ。
またKubernetes環境においても、現行のCSI(Container Storage Interface)に準拠したとしてもデータそのものはサイロ化され、操作も個別に行わなければならないという問題を解説し、CSIとストレージの間にSODAが介在することで問題を解決できると解説した。
特にクラウドとオンプレミス間でのバックアップやレプリケーションを可能にするとして、マルチクラウド、ハイブリッドクラウド環境での運用における利点を解説した。
次にSODAのアーキテクチャーを解説した。ここではブロック、ファイル、オブジェクトなどのストレージに加えて、キーバリューストアなどにも対応していることを強調した。
ユースケースとして紹介されたのは、China Unicomと共同で開発が進んでいるデータレイクのプロジェクトだ。このスライドではSODAのGelatoというマルチクラウドを制御するソフトウェアとの連携によって、Cephをストレージ本体としたデータレイクを実装する予定だという。クラウドをまたがって単一のネームスペースでのアクセスを可能にすることを目的として開発を行っているそうだ。
他にもヤフージャパン、NTT Com、トヨタのユースケースが紹介され、SODA(この時点では「OpenSDS」と言った方が正確かもしれないが)が使われるケースを紹介した。ここではまだユーザーからのニーズを形にしただけで、実装されていないということはメモしておきたい。
プロジェクトのゴールとして使われたスライドには「オープン」であること、「リアル」なニーズに基づいて本番で使われること、そしてさまざまな環境やプラットフォームに対応(「レディ」状態)であることを挙げて、さらに開発を進めることなどを挙げて、SODAの目標を説明した。
またさまざまなストレージ製品への対応については「SODA Ready」というコンフォーマンスプログラムを通じて準拠する製品をテストし、認定する予定であることを紹介した。
同時にオープンソースプロジェクトとして組織の運営にも十分に配慮していることを表すために、ガバナンスボード、テクニカルステアリングコミッティー、ワーキンググループ、SIG、地域ごとのコミッティーなどが構成されていることを解説した。
最後にSODAの今後の開発スケジュールを紹介した。ここでは2020年3月にSODA Foundationが設立されることとChina Unicomのユースケースで出てきたSODA Lakeと呼ばれるデータレイクのリリースを含むv0.2のリリース、6月にSODA ReadyのDraftの発表とv0.3のリリース、9月にv0.4とエッジ向けのSODA Edgeのリリースなどが予定されていることに注目したい。またKubeConにもフルコミットする形で参加することが表明されている。
ここで、個別にSteven Tan氏にインタビューを行ったので、その抜粋をお届けしたい。
Tan氏は「Huaweiにとって、OpenSDSの最初期は難しいことだらけだった」と振り返り、Huawei主導によるオープンソースプロジェクトの立ち上げは非常に難しかったと語った。これは日本の製造業のメーカーが自社のソフトウェアを無償で公開することを思えば、理解できるだろう。オープンソースプロジェクト化については社内の説得と調整に非常に時間がかかったという。
「SODAとしての2020年の目標は?」という質問には「SODAとしてリアルなユースケースを作ること」と答え、China Unicomやヤフージャパン、トヨタ、NTT Comなどの名前を挙げて「リアルなニーズに基づいた利用」をプロジェクトとして支援したいと語った。またもう一つのチャレンジとして「Huawei以外のデベロッパーを増やすこと」を挙げていた。現状ではHuawei社内の15名のデベロッパーが専任の形でSODAの開発に関わっているが、これを社内以外のエンジニアに拡げることを目指すと語った。
SODA自体はコントロールプレーンとして複数のストレージを制御するのが役目だが、実際にはインストレーションを簡単にすることなどを考えると、「SODA自前のデータプレーンを持つことも方向性としてはあるのでは?」と質問してみたところ、「すでに計画に入っている」としてSODAとしてのコントロールプレーン/データプレーンの両方を実装する予定であるという。
日本でもコミュニティマネージャーが任命され、エコシステムの拡大にテコ入れがなされる予定だそうだ。今後のSODAの進展に注目していきたい。
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