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LinuxCon+ContainerCon+CloudOpen China開催。中国企業の存在感が大きかった初日

2018年7月18日(水)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
LinuxCon+ContainerCon+CloudOpen China 2018が北京で開催。中国語セッションも数多く用意され、中国のためのカンファレンスとなった。

中国の首都、北京で開催されたLinuxCon+ContainerCon+CloudOpen China 2018(略称、LC3)が、6月25日から27日の日程で開催された。筆者は、中国でのオープンソースソフトウェアの盛り上がりを知るため、今回初めて参加した。

イベントの主催は、Linux Foundationのアジア地域での下部組織であるLF Asia LLCだ。Linux Foundation(LF)はCloud Native Computing Foundation(CNCF)と並んで最も活発に中国本土でのカンファレンスを行っている組織であり、今回もLFのExecutive DirectorのJim Zemlin、Linus Torvalds、CNCFのDirectorであるDan Kohn、PaaSのオープンソースソフトウェアであるCloud FoundryをホストするCloud Foundry FoundationのAbby Kearnsなど、錚々たるメンバーが登壇して、カンファレンスを盛り上げた。

OSSが主流となる現在におけるLFの役割

初日の最初のキーノートにはJim Zemlin氏が登場し、オープンソースソフトウェアのこれまでの成長を語るところからスタートした。

Linux FoundationのJim Zemlin氏

Linux FoundationのJim Zemlin氏

ここでの要点は、代表的なオープンソースソフトウェアのプロジェクトとしてLinuxが取り上げられるが、LFはLinuxだけではなく他にも多くのオープンソースソフトウェアをホストしているという訴求だろう。

Linux以外にも多くのプロジェクトをホストしているLinux Foundation

Linux以外にも多くのプロジェクトをホストしているLinux Foundation

現在、オープンソースとしてソフトウェアを開発することが、OSなどのインフラストラクチャー系のソフトウェア、開発ツール、ミドルウェア、データベースなどにおいて主流となっている。またそれ以外にも車載システムであるAutomotive Grade LinuxやブロックチェーンのHyperledger、さらにキャリア向けネットワーキングシステムであるOpen Network Automation Platform(ONAP)やSoftware Defined Network(SDN)のOpenDaylight、エッジコンピューティングまで広がっていると強調した。もちろん、昨今のコンテナオーケストレーションの主流であるKubernetesに関しても、CNCFとの連携を取りながら進化が進んでいることをここで改めて説明したかたちだ。その中でLFは大きな役割を果たしており、すでにITエコシステムにおいて中心的な存在になっていることを自負していると語った。

今やLinux Foundationはエコシステムにおいて大きな役割を果たしている

今やLinux Foundationはエコシステムにおいて大きな役割を果たしている

そしてその証拠として2017年にSD Timesが選んだ最も影響力のある企業としてApple、Facebook、Google、Microsoftなどとともに、Linux Foundationを選んだというエピソードを紹介した。ここでは数多くの営利企業の中に、非営利団体であるLFの名前があるというところがポイントである。そういう主張だ。確かにGoogle、Microsoftなどと並んで非営利団体であるLFが選ばれるということは、業界に対して多大なインパクトを与えているという証明だろう。

またオープンソースソフトウェアがメインストリームであるというもうひとつの証明として、MicrosoftによるGitHubの買収を挙げて説明した。ここでも元々プロプライエタリなソフトウェアのリーダーであったMicrosoftが、GitHubを買収し、オープンソースソフトウェアに対する態度を180度変えたことが紹介された。

MicrosoftによるGitHub買収発表を紹介

MicrosoftによるGitHub買収発表を紹介

そしてオープンソースソフトウェアがエコシステムとして成立するための3つのP、Projects、Products、Profitsについて説明する。すなわち、まず必要に導かれてオープンソースソフトウェアの「プロジェクト」が立ち上がる。それが成熟し「プロダクト」として世に出ることでそれをサービスとして提供する企業やサポートする企業が参入する。そしてそれによって「利益」が生まれる。このようなサイクルを解説した。ここではその例としてONAP(Open Network Automation Platform)とKubernetesをホストするCNCF、車載システム向けのLinux実装であるAutomotive Grade Linuxのプロジェクトを挙げて、さらに詳しく説明を行った。

ここで興味深いのは、Googleが自社のコンテナオーケストレーションであるBorgのオープンソース実装であるKubernetesを公開する際、単純にソースを公開するのではなく、CNCFという団体を作ってガバナンスと管理を委ねたという部分だろう。Googleほどの企業であれば、自社のエンジニアがその役割を担うことも可能だったにも関わらず、LFと協同で別組織を作ってオープンソースプロジェクトとして運営を委ねたという辺りに、オープンソースプロジェクトが成功するためのポイントがあると思われる。

CNCFの成り立ちを説明

CNCFの成り立ちを説明

中国語で中国人開発者に語りかけるTencentのVP

ここまでで「オープンソースプロジェクトとLinux Foundation」に関する、いわば「宣伝」のフェーズは終了し、ここからは中国の参加者のためのフェーズとなった。それを明確に表していたのが、次に登壇したTencentのVPであるZeng Yu氏だ。TencentはLFのPlatinumメンバーとして最近、加入したインターネット企業で、中国ではAlibabaに並ぶインターネットサービスの巨大企業である。

Jim Zemlin氏(左)とTencentのZeng Yu氏(右)

Jim Zemlin氏(左)とTencentのZeng Yu氏(右)

Jim Zemlin氏によって紹介されたYu氏は、ここから中国語でプレゼンテーションを実施。スライドも全て中国語で表記され、このセッションが中国の参加者向けのメッセージであることが明確にわかるものとなった。実際にキーノートの会場にいた多くの中国人エンジニアからは大いに注目されたようで、Tencentのプレゼンテーションが始まるとメディア以外の参加者がステージ前に集まって写真に収めようとしていることに気が付いた。

TencentのVPがステージに登場するとカメラマンが大量発生

TencentのVPがステージに登場するとカメラマンが大量発生

アメリカのLinux Foundationが開催するカンファレンスのキーノートに、中国企業が英語ではなく中国語でプレゼンテーションを行うということが大きな意味を持つのだろうということは、この点をもってしても理解できる。2日目、3日目のキーノートでも中国語のプレゼンテーションは行われ、中国人にとっては「我が国のオープンソースプロジェクトのリーダーとしてTencent、Alibaba、Huaweiなどが認められた」という瞬間を味わったことだろう。

Linus Torvalds氏も登場

そして次はVMwareのDirk Hohndel氏が登壇し、Linuxの生みの親であるLinus Torvalds氏と対談を行った。Torvalds氏はもともとプレゼンテーションを行うのが好きではなく、「対談という形であれば登壇しても良い」ということでこの形になったようだが、北京に着いてからパンダと一緒に写真を撮る程度には中国への訪問を楽しんでいたようだ。Torvalds氏は「真の仕事は退屈」であると語り、Kernelの開発も地味に進めるべきだし、コードを書くことよりも実際はコミュニティとのコミュニケーションがもっとも難しいと語る。そして中国のエンジニアに向けて、コミュニケーションを活発にしてコントリビューターとして参加して欲しいなどと語った。

パンダと一緒のLinus Torvalds氏

パンダと一緒のLinus Torvalds氏

そして再度、中国向けのスピーカーとしてHuaweiのChief Strategy OfficerのZhexuan Song氏が登壇し、ここからはHuawei Cloudの説明となった。

Huaweiによるオープンソースプロジェクトへの貢献を説明

Huaweiによるオープンソースプロジェクトへの貢献を説明

Song氏が使うスライドに表示される漢字を読むだけで、なんとなく意味が分かる気がするのは日本人としての利点かもしれない。ちなみにこのスライドに出てくるServiceComb、CarbonDataはApache Software Foundation(ASF)でインキュベーションされているオープンソースプロジェクトで、主にHuaweiがリードするプロジェクトである。ServiceCombは「マイクロサービスを構築するためのフレームワーク」と紹介されており、このカンファレンスの中でもミニカンファレンスとしてHuaweiのエンジニアやASFのアンバサダーが、詳細に解説を行っていた。

またHuaweiはCloud Nativeなソフトウェアに関する啓蒙活動としてMeetupを定期的に開催しており、CloudNativeDaysと銘打ったイベントを開催しているようだ。

CloudNativeDaysを宣伝するHuaweiのSong氏

CloudNativeDaysを宣伝するHuaweiのSong氏

OSSに注力するIntel

Huaweiの次に登壇したのはIntelのImad Sousou氏。Sousou氏はOpenStack SummitやOpen Networking Summit、LinuxConなど多くのオープンソースのカンファレンスで登壇しているIntelのオープンソースソフトウェアのトップという人物だ。

北京には「家族連れで来ている」と語るIntelのImad Sousou氏

北京には「家族連れで来ている」と語るIntelのImad Sousou氏

昨今のオープンソースに対するIntelの貢献は様々なプロジェクトにおいて実現されており、中国のHyperと共同で開発を進めるKata Containers、エッジデバイスのハイパーバイザーであるACRN(ACRNに関してはこの記事を参照。Intelが推進するEdgeの仮想化、ACRNとは?)、OpenStackをベースにしたエッジ向けのソフトウェアスタックであるAkraino、Intelが買収していたWind Riverの持つTitanium Cloudをオープンソースソフトウェア化したSterlingXなど、多くのプロジェクトが立ち上がっている。ちなみにKata ContainersとSterlingXはOpenStack Foundation、AkrainoはLinux Foundationでホストされているプロジェクトだ。

Sousou氏は単に概要を紹介するだけではなく、ACRNがAlibabaのカンファレンスで紹介されたことを説明し、中国でもIntelが主導するプロジェクトが成果を挙げていることを紹介した。

中国での実績を紹介

中国での実績を紹介

初日の最後のスピーカーはMicrosoftのMichelle Noorali氏だ。元DeisのエンジニアでKubernetesのパッケージマネージャーであるHelmの開発をリードするNoorali氏は、ここでもHelmの解説とデモを実施。新たなプロジェクトとしてDraftを紹介した。Helmに関してはこの記事を参照されたい(KubernetesのパッケージマネージャーHelmとは?)。

プレゼンテーションを行うNoorali氏

プレゼンテーションを行うNoorali氏

キーノートは2/3が英語、1/3が中国語という構成だったが、中国のエンジニアにとってTencentとHuaweiからのスピーカーの講演内容は、すでに知っているものも多かったようだ。しかしLinux FoundationやIntel、Microsoftなどのスピーカーと同じキーノートでの講演した意味は大きかったように思える。それぐらいキーノートでのTencent、Huawei存在感は大きなものだった。特にHuaweiは今回のイベントの最大のスポンサーであり、多くのセッションでスピーカーを用意していたことからも、オープンソースプロジェクトに対する力の入れ方が見てとれるキーノートとなった。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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