「文系出身でインフラエンジニアになれるのか」と不安に思う僕へ
はじめに
今回は、文系出身でインフラエンジニアが務まるのか、またインフラエンジニアの実際の仕事とはどのようなものなのかを紹介します。
この間は僕からの手紙を読んでくれてありがとう。IT業界に入ったからといって人と喋らずに済むわけではないことは君にとって少なからずショックだったかと思う。それでもインフラエンジニアへの興味を失わず、またこうして耳を傾けてくれてありがたい限りだ。
さて、最近の君はインフラエンジニアになりたい気持ちはあるものの、「自分なんかにできるのだろうか」という心配で胸がいっぱいになっていることと思う。それは無理もないことだ。小学生の時点で算数とは袂を分かち、大学は文系の学部、プログラミングなど触ったこともないのだから。でも、インフラエンジニアはそんな君にもピッタリの職業かもしれない。僕も(もちろん最高のエンジニアとは言えないけれど)、なんとかそこそこインフラエンジニアとしてやってこられているんだ。きっと大丈夫だよ。
文系出身のエンジニアって普通なの?
「エンジニアと言ったら理系!」というイメージをお持ちの方は多いかもしれませんが、実は文系のエンジニアもたくさん存在しています。特にインフラエンジニアが担当する領域は大学の情報系の学部でもあまり教えていないので、文系理系の差が出にくいという話をよく聞きます。実際、僕が新卒で入社したあとの研修でも、文系理系の差を感じることはほとんどありませんでした。
また、その後の業務でも「あの人は文系だから」「理系だから」といった話は聞かないので、文系でも支障はありません。ちなみに、弊社が採用している新卒も7、8割が文系のようです。
インフラエンジニアの設計業務を体験!
家族や友人から「結局のところお前はなんの仕事をしているんだ」と聞かれることがあります。「IT企業でシステムの設計したり構築したりしてるよ」と説明するのですが、「システムの…設計…?」という反応が返ってきます。おそらくインフラエンジニアに興味がある方も、実際にどんなことをしているかという点について、なかなかイメージが湧きにくいと思います。
システムの設計とは、突き詰めればシステムの要件を満たすために製品をどのように設定するかだと考えています。例えば、スマートフォンの設定画面にはたくさんの項目が並んでいます。その項目をどのように設定すればユーザーの要望を叶えられるのか、を考える仕事だと思ってもらえればわかりやすいかもしれません。
では、新人インフラエンジニアが担当しそうなタスクを1つ体験してみましょう。
あなたはあるシステムをリプレイスする案件の担当者になりました。現在そのシステムのサーバーOSは「Windows Server 2016」が導入されており、次期システムではサーバー機器を買い替えるとともにOSを「Windows Server 2022」に更新することを予定しています。
そこで、次期システムで購入するサーバー機器を選定するため、Windows Server 2022のインストールに最低限必要なハードウェア要件を調査し、報告してください。なお、Windows ServerはGUIで操作するデスクトップエクスペリエンスをインストールします。
ここでいったん読み進むのをやめ、実際にみなさん自身で調査してみても楽しいかもしれません。
さて、どのように調査するのかを見ていきましょう。まず、知りたいことはWindows Server 2022のハードウェア要件なので、そのままGoogleの検索窓に「Windows Server 2022 ハードウェア要件」と入力し、検索してみましょう。
表示された検索結果の中から、できるだけ信頼性が高いページを参照します。大抵の場合、その製品を製造・販売している企業が公開しているサイトやマニュアルです。検索で公式の情報が見つからない場合は製品サポートに問い合わせたり、Qiitaなどの情報プラットフォームや個人のブログなどを参照します。
今回は、Microsoftが出しているWindows Serverの公式マニュアルがヒットするはずなので、それを開きます。
このページの中から、必要な情報を抜き出します。サーバーにWindows Server 2022をインストールするために最低限必要なハードウェア要件なので、CPU性能、メモリ容量、ストレージ容量などが分かれば良いと思います。あとは抜き出した情報を表などにまとめて、リーダーに報告すればタスクは完了です。
ちなみに、Windows Server 2022のハードウェア要件はCPUが1.4 GHz、メモリが2GB、ディスク容量が36GBでした。みなさんが自身で調査されたものと合っていたでしょうか。
今回紹介したのは最も単純な部類のタスクだと思いますが、知りたい情報を探して取捨選択し、まとめるといった流れは共通すると思います。こうした作業を繰り返してシステムを設計し、リリースします。どこか遠いネットワークの向こうで、自分の頭で考えて作ったシステムが動いていることを考えると、とても楽しい気持ちになります。
今回は知りたいことをそのまま入力すれば情報が得られましたが、例えばトラブルシューティングを行う場合、発生している事象を検索してみたり、表示されたエラーコードやエラーメッセージを検索してみたりと、解決できそうなワードを色々と試してみます。そのため、自分が知りたいことを得るための検索ワードの選定は、とても重要になってきます。
また、製品マニュアルは英語で書かれていたり、英語を機械的に翻訳された文章であることも多く、それなりの英語力なども必要となる可能性があります(もっとも、Google翻訳などの精度はかなり上がっているので、英語が読めなくても困ることはそれほどありませんが)。
実際のタスクの流れを見てきましたが、やはり理系的な知識はそれほど必要なく、なんとなく「できそう」と感じられたのではないでしょうか。 必要なのは「検索ワードの選定技術」「マニュアルの文量に圧倒されない胆力」「サイトを読み、まとめて、報告する能力」などです。
結局のところ、必要なのは技術や知識よりも「エンジニア向きのマインド」ではないかと思います。インフラエンジニアをしていると、ほぼ毎日のように知らないこと、新しいことと出会います。インフラエンジニアが扱う領域は広範囲に及ぶため、プロジェクトが変わるたびに初めましての技術要素に出会います。また、日々新たな技術や製品が登場しているので、すべての技術を習得し「なんでも知っている」状態になるには時間がかかります(もちろん、それぞれの技術は関連しており応用が利くので、学習コストは下がっていきます)。
知らないことに出会うことを恐れず楽しめたり、わからないことを積極的に調べられる人はきっとインフラエンジニアに向いていると思います。また、機器を実際に設定していく構築工程や正しく設定できているかをチェックするテスト工程では、漏れなく設定すること、確認することが求められるため、細かいことをコツコツと進めることが好きな人も向いているでしょう。
それでも不安なあなたへ
「なんとなくインフラエンジニアに興味が出てきたけど、それでも自分にできるか不安…」という方は、プログラミングに触れてみると良いと思います。ネットで検索すれば無料で学べるものも数多く見つけられます。僕は入社前の不安な時期に「Progate」というプログラミング入門サービスと「Ruby on Rails チュートリアル」というオンライン参考書を実際に利用していました(ちなみにRuby on Rails チュートリアルは難易度が高く、途中で挫折しました)。
インフラエンジニアががっつりプログラミングをする機会はそれほど多くないので、入社後に直接的に役に立つわけではありません。しかし、知らないことを新しく習得できた! という喜びや、分からないことに出会ったときの対処法などは共通します。少しIT技術に触れてみて、明らかな拒否反応が出ないかを確かめておくと良いかもしれません。
おわりに
今回は「文系でもインフラエンジニアになれるよ!」という理由と、その実際の仕事内容を紹介しました。知識や技術は入社後いくらでも学ぶことができます。今回の記事を読んで「なんか楽しそう!」「自分にもできそう!」と思った方、ぜひインフラエンジニアを目指してみてください。
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