ネットワークって何? 〜ネットワークと郵便は同じ仕組み〜

2023年1月13日(金)
左門 至峰 (さもん しほう)
本連載では、難しいネットワークを身近な事例に置き換えながらわかりやすくお伝えしていきます。

はじめに

皆さん、こんにちは。ネットワークスペシャリストで、ITライターの左門です。本連載では、難しいネットワークを、身近な事例に置き換えながらわかりやすくお伝えしていきます。どうぞお付き合いよろしくお願いします。

郵便の仕組みとITネットワークは同じ?

年賀状を送る人が減ってきて、電子メールやSNSによるメッセージに置き換わっています。アナログからデジタルに変わったということです。たしかに、デジタルは便利です。文字だけでなく音声や動画を送ることができますし、リアルタイム性に優れます。とはいえ、アナログならではの魅力もあります。同じ言葉でも、手書きで書かれた方が、人間らしさや温かさを感じます。年賀状作成にはお金と手間がかかります。しかし、年に1回、お世話なった人にハガキを送るというのは、日本の文化として私は好きでした。古き良き文化が移り変わっていくというのはさみしいことですが、時代の流れとしては仕方がないことなのでしょう。

さて、アナログな年賀状と、デジタルなメールやSNSは、すでに述べたように大きく違います。ですが、ハガキを送ったり、メールを送るという「配送」の観点では、根底にある仕組みは同じです。

郵便とメールの配送の仕組み

配送に関して、「根底にある仕組みは同じ」と述べましたが、両者を比較する前にまず、郵便の仕組みを改めて確認しましょう。

皆さん、誰かに手紙を送るとき、どうやって送りますか? 郵便局のポストに投函しますよね。そんなこと、当たり前と思っているでしょうが、実は他にも手段があります。

そうです。自分で送ることもできるのです。自分の車や電車または、飛行機を使って海外の友達に家まで届ければ良いのです。

でも、それは大変ですよね。だから、郵便局の網(「もう」と読んでください)を使います。郵便局のポストに手紙を入れれば、郵便局の人が集めて、相手に届けてくれます。なんて便利なのでしょう。そう思いませんか?

実はこの仕組み、電子メールでも同じです。そもそも、郵便を英語にするとメール(Mail)です。だから、というわけではないですが、どちらも相通ずる仕組みなのです。

ビジネスマンの人は、日常的にメールを送っていることでしょう。すると、数秒または数分後には相手に届きます。これってとても便利です。詳しい解説は省略しますが、電子メールでは、皆さんがメールサーバ(郵便局のポスト)を指定して、そこにメールを送信(はがきを投函)しています。すると、それ以降はメールサーバが自動で相手に届けてくれます。郵便局の皆さんが汗をかいてやってくれているのと、コンピュータがさっと配送する違いはありますが、仕組みとしては一緒なのです。

じゃあ、Youtubeを見たり、LINEでメッセージを送ったりするインターネットの仕組みはどうでしょう。実はこれも郵便の仕組みと通じるものがあります。Youtubeのサーバが海外にあって、そこに対してまずは手紙(正確には、HTTPのパケット)を送ります。その送り先は、デフォルトゲートウェイ(またはルータ)と呼ばれるネットワーク機器です。デフォルトゲートウェイは、郵便で言うと、あなたに最も近い郵便ポストと考えてください(多少乱暴ですが、イメージとして)。このポストに手紙(HTTPのパケット)を送れば、郵便局の人が手紙をYoutubeのサーバに届けてくれます。同時に、Youtubeのサーバからすぐに返事(これもHTTPのパケット)として動画をもらえます。こうして、私たちは動画を観ることができるのです。

届け先へ届けるために必要な情報

では、郵便局の皆さんが、相手にハガキを届けるとき、何の情報を基にするでしょうか?

皆さんご存じの通り、ハガキの表に書く2つの情報です。1つは住所、もう1つは名前です。一方、ネットワークの世界でも、住所と名前を使って相手にパケットという手紙を届けています。ただ、ネットワークの世界での住所や名前は、郵便とは別の仕組みです。詳しい説明は割愛しますが、ネットワークの世界で住所に当たるものがIPアドレスです。また、名前に該当するものはMACアドレスです。この2つの情報を使って、相手にパケットという手紙を送ります。

皆さん、なんとなく、ネットワークの仕組みがわかってきたでしょうか? ネットワークは目に見えないことが多いので、イメージがつかみにくいものです。最初のうちは、なんとなくの理解で良いので、細かいところにはこだわらずに読み進めてもらうことをお勧めします。

ネットワークにおける通信の流れ

郵便の仕組みはとても便利です。北海道だろうが沖縄だろうが、どこにハガキを届けるのでも、たった63円で届けてくれるからです。でも、それができるのは、ポストを作り、郵便局を構え、職員さんや配達員の方がいるからです。

もちろん、1通ずつ届けるのではなく、まとまったハガキを一気に運ぶので、値段が安くなっています。また、余談ですが、全国一律なのは、一律にすることで、距離に応じた料金計算が不要になり、経費を抑えて安くできているという効果があります。

では、ITの世界に目を向けると、どうして世界中の人にメールを送れるのでしょうか。また、世界中のサービス(GoogleやTwitter、Facebook、Youtubeなど)を使えるのでしょうか。逆に、どうして昔は使えなかったのでしょうか。

それは、昔はネットワークが構築されておらず、それらのサービスも提供されていなかったからです。一方、今は違います。郵便というハガキの仕組みと同様に、世界中のネットワークが接続され、メールを送受信できる環境が整っています。

では、ここで、ITにおけるネットワークと、郵便における手紙に関して、配送の流れを図に整理します。

まず、上の図です。こちらは郵便におけるハガキの流れです。手紙をポストに入れると、配達員の方が郵便局に運んでくれます。郵便局では、配達員の方が、一般の道路(ときに高速道路)を、車やバイクなどを使って宛先住所の郵便局やポストに届けます。このとき、ハガキの場合は、インターフォンを押して本人に手渡しで届けるのではなく、その家の郵便受けに投函します。郵便受けに入ったハガキは、受け取りする人が取りに行かないと手にすることはできません。

では、この流れをインターネットのメールで考えてみましょう。下図を見てください。送信者がパソコン(やスマホ)でメールを送ると、デフォルトゲートウェイを経由して郵便局に該当するメールサーバに送られます。このとき、配達員の代わりにメールを運ぶのは、電気信号です。電気信号は、一般道路に該当するLANケーブル(や高速道路に該当する光ケーブル)を伝って、相手のメールサーバに届けます。メールサーバは、本人専用のポストであるメールボックスにメールを保管します。そのメールを、受信者が取りに行きます。皆さんのパソコンの設定では、5分間隔などで、定期的にメールサーバに取りに行っていることでしょう。

サーバとクライアント

先ほど、「郵便局に該当するものをメールサーバ」と言いました。サーバとは「奉仕する」という意味で、サービスを提供するものです。サーバにはインターネットを閲覧するサービスを提供するWebサーバや、ファイルを保管するサービスを提供するファイルサーバーなど、いくつもの種類があります。

サーバと対になる言葉がクライアントです。クライアントは文字通り「顧客」を意味します。サービスを提供するサーバに対し、サービスを受ける顧客なのでクライアントと呼ばれます。今回の場合で言うと、PCがクライアントです。パソコンを操作する人を指すわけではありません。クライアントはPCだけでなく、スマホやタブレットなどもクライアントになりえます。

ネットワークでは、主にサーバとクライアントで通信が行われます。メールは、個人から個人に送るので、クライアントからクライアントに送るように思われるかもしれません。ですが、メールの送信者の通信相手は、メールサーバです。また、メールの受信者も、メールサーバと通信をしてメールを受信します。このように、メールにおいても、サーバとクライアントで通信をしています。

そもそも、ネットワークって何?

さて、連載の1回目は、イメージを理解してもらうために、専門用語も詳しく解説しないまま、ネットワークを郵便に例えて解説してきました。皆さん、なんとなくネットワークがイメージできたでしょうか。

最後に、ネットワークという言葉そのものについて、簡単に説明します。networkという単語は、分解するとnet(網)のworkです。workは「機能」のような意味と考えれば良いのですが、net(網)と入っているように、網状のものを指します。ネットワークと言えば、コンピュータにおけるネットワークをイメージすると思いますが、網目状につながっているものは他にもあり、鉄道による鉄道網、道路、空路なども含めた交通網、人的なつながりのヒューマンネットワークも、網状につながっていることから、ネットワークと言えます。

本連載で解説するネットワークは、もちろん鉄道網などは入っていません。ITにおけるネットワーク、つまりコンピュータネットワークです。このコンピュータネットワークは、もちろん網状につながっています。複数のコンピュータが、LANケーブルや光ケーブル電波などを使って網状に接続されています。

また、ネットワークは企業の事務所や大学などの1つの敷地内(または建物内)で構築されたネットワークであるLAN(Local Area Network)、企業や大学などにて複数の拠点が接続されたネットワークをWAN(ワン、Wide Area Network)と海外のサービスを含めた世界中のサーバ群と接続されたネットワークであるインターネットの3つに分けられます。インターネットは、皆さんが日常的にGoogleやYahoo!、LINEなどのサービスを利用されていることから、最も馴染み深いものでしょう。

【出典】「ストーリーで学ぶネットワークの基本」(インプレス) p.7

おわりに

インターネットにて世界中の人やサーバと通信ができるのは、ネットワークが世界共通のルールで設計されているからです。このルールに関しては、2回目の記事にて、「プロトコル」という言葉で解説します。

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左⾨ ⾄峰 著
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著者
左門 至峰 (さもん しほう)
ネットワークスペシャリスト。株式会社エスエスコンサルティング代表取締役。著書にネットワークスペシャリスト試験対策「ネスペ」シリーズ(技術評論社)、「FortiGateで始める 企業ネットワークセキュリティ」(日経BP社)、「ストーリーで学ぶ ネットワークの基本」(インプレス)などがある。
研修では、オリジナルコンテンツを用いたネットワークやセキュリティーの資格対策、ハンズオン研修を数多く実施。

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