ロゴを制作する、その前に。
現代ロゴの役割
中世ヨーロッパ貴族の紋章や日本の武家・貴族の家紋は、戦場において敵味方の区別をするための目印として考案されました。
これらは、ポルシェやアルファロメオなどのほか、三井や三菱などの財閥系グループ企業のロゴマークとして立派に生き残っています。つまり、戦場においては自分の存在を伝える手段として、その後、企業となってからは、自社の商品であることとブランドとしての信頼感・安心感を伝える手段としての役割を担ってきたわけです。
中世から近代のように、媒体となるメディアが少なく伝えられる情報量に限りがある時代において、ロゴは企業・商品を伝えると同時に、それらの信頼を保障する存在でもありました。
しかし、戦後の爆発的な情報量の増加によって、企業ロゴの役割に大きな変化が現れました。以前はロゴが担っていたはずの信頼・安心について、CSRという考え方の基、独立した存在となりました。
また、商品や商材の多様化、ブランド化により、それぞれの商品やサービスについても独自のロゴが作成されるようになったのです。このため、企業のロゴの役割は、より概念的なものへと変化していったのです。
そして、これまでの商品やサービスを表現し、その安心感や信頼感を伝えるための役割は、その商品やサービスそのもののロゴの確立という形で伝えられることになりました。例えば、食品の商品パッケージについているロゴを見てみましょう。企業ロゴより商品ロゴの方が格段に大きいことがわかります。このように、本来の企業ロゴの役割は商品ロゴへと引き継がれています。
ロゴとは、ブランドプロミスの結晶
では、企業のロゴとはどういう役割であるべきなのでしょうか。
それは、「ブランドプロミスの結晶」であるべきです。これは、インターネットの進化に伴い、より如実になりました。弊社会長生田の著書「Webブランディング成功の法則55」にもありますが、ユーザーは企業のロゴを知らなくても、企業がユーザーに何をしてくれるかというブランドプロミスは知っているのです。
「Amazon」を例に挙げると、ユーザーはロゴを知らなくても、アマゾンで本を買えること(ECサービス)を知っています。ユーザーが、アマゾンと聞いて思い浮かべるのは、Webで注文すると本を届けてくれるというサービスであり、アマゾンがユーザーに伝えているブランドプロミスなのです。
とはいえ、ブランドプロミスをロゴにする、というのも難しい話です。そこで、最近はロゴ+キャッチコピーの組み合わせで表示させるという方法で、ブランドプロミスを伝える方法も一般的になってきました。また、ヒアリングや市場調査によって、企業が持たれているイメージを洗い出し、それを基にコーポレートカラーを決定し、そのイメージに合ったロゴを制作するなどの方法も採られています。
いずれにせよ、企業ロゴを制作する上で重要なことは、その企業の本質まで踏み込み、ブランドプロミスを理解することだと言えます。企業ロゴを制作するということはそれだけの責任を負うべきことですし、その覚悟をもって制作することで、初めてクライアントの満足を得られる結果を出すことができるのです。
次回は、今回の論述を基に、実際にロゴを制作する上で何をしなければいけないのか、デザインする上での注意点などを具体的に紹介します。
【参考文献】
生田昌弘/株式会社キノトロープ『Webブランディング成功の法則55』株式会社翔泳社(発行年:2005)
「たばこと塩の博物館」(http://www.jti.co.jp/Culture/museum/WelcomeJ.html)(アクセス:2008/11)
「大阪府産業デザインセンター」(http://www.pref.osaka.jp/oidc/index.html)(アクセス:2008/11)