実践!ロゴ制作

2008年12月9日(火)
河田 雅彦

ヒアリング(クライアントとのコミュニケーション)

 前回、CI(コーポレートアイデンティティー)とは何か、また、ロゴの役割とは何なのかということを紹介しました。今回はそれを踏まえた上で、どのように制作を進めていくのかを紹介します。

 クライアントからロゴ制作の依頼をいただた場合、「有り難うございます!○月×日にお持ちします!」などという方はさすがにいないと思いますが、皆さんはクライアントと本当の意味でのコミュニケーションを確立した上で、制作できているでしょうか。

 まず、理解していただきたいことは、Webサイトの構築であっても、ロゴのデザインであっても、何かをデザインするということは、モノ(企業)とユーザーを、デザインを通して結びつけるということです。そのためには、デザイナーが発注者以上にモノについて理解をしなければなりません。また、モノを使用するターゲットユーザーのことも理解しなければなりません。

 つまり、それだけの情報をクライアントから引き出さなければ、求められるデザインはできないと言えます。ところが、クライアントからのオリエンテーションだけではそれだけの情報を引き出すことは難しいでしょう。なぜなら、クライアントはデザイナーに頼めばいつの間にか出来上がると思っているからです。この問題を解消するため、また、デザインを導き出すロジックを理解していただくため、筆者は別途ヒアリングの時間をいただいています。

 プロジェクトを進めるメンバーはもちろんのこと、予算と時間が許す限り関係者に時間をいただき、企業の情報やターゲットユーザーを洗い出します。ここで必要なことは、必ず意思決定者のヒアリングを行うことと、メインターゲットとなるユーザーの確定です。つまりこの段階で、デザインの方向性についてコンセンサスをとっておくということです。

 ロゴ制作において、このヒアリングとこの後のコンセプト立案が最も重要なポイントとなります。ここで手を抜いてしまうと実制作からプレゼンテーションの段階で、大きく軌道修正を迫られることになります。もちろん、的外れな提案をすることになり、クライアントを満足させることもできません。

難しいコンセプトはいらない

 デザインするということには、必ず目的があります。それは企業のロゴであっても商品ロゴであっても変わりません。

 デザインと聞くと、何かかっこいいモノを作らなければいけないような気がしますが、本来、デザインという言葉の意味は「デ・サイン」であり、サイン(指し示す/指示)を再構築するという意味です。

 ヒアリングにて洗い出したクライアントの要望やブランドプロミス、ターゲットユーザー&ニーズ、そして伝えなければならない情報を書き出し、それらを分類し再構築することで、デザインのテーマ=コンセプトを立案します。

 まず、前述の情報を基にマトリックスを作成します。そして、抽出されたキーワードが最も集約された地点こそが、コンセプトの基軸となるポイントです。このポイントからコンセプトを導き出します(図1)。

 ここで大事なことは、変に難しい言葉にしないことです。クライアントはもちろん、ターゲットとなるユーザーにその意味がすぐに伝わることです。かっこいいものと考えるあまり、小手先だけに頼ってしまい消えていくロゴはたくさん存在します(していました)。第1回(http://thinkit.co.jp/article/707/1/)でも紹介しましたが、対象となるモノの本質を突いたデザインでなければ、長生きすることはできないのです。

 その後のミーティングでは、いかにして現在のコンセプトとターゲットユーザーが導き出されたのかを説明し、コンセンサスを取りましょう。この段階でクライアントの合意が得られれば、プレゼンテーションでよほどおかしなデザインを提案しない限り、根本的な修正はないと思います。

 ここまでで、コンセプトが非常に地道でロジカルな作業によって立てられていることを理解いただけたでしょうか。デザインはアートではありません。あくまで、計画的に進められるべき設計です。しっかりした基礎の上に理論立った骨組みを構築し、その上で、ひらめきを表現することがデザインであることを忘れないでください。

株式会社キノトロープスーパープロジェクト
大学卒業後、建築・プロダクト模型制作を経て、グラフィックデザイナーに転向。SPツール/パッケージデザイン等を経験後、企業のオフィシャルサイトの企画立案、企業ブランディングなど、デザイン&ディレクションを中心に活動。2008年7月よりキノトロープスーパープロジェクト取締役を務める。http://www.k-superproject.co.jp/

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