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即活用!「レビューの質チェック票」

2009年3月3日(火)
小池 利和

メトリクスを活用したソフトウエアレビューとは

 今回は、財団法人 日本科学技術連盟2007年度ソフトウェア品質管理研究会の第1分科会グループA(http://www.juse.or.jp/software/study_data2007.html)として活動した成果として、メトリクスを活用したソフトウエア品質を客観的に評価する手法について紹介したい。

 研究とは言うものの開発現場で簡便に運用できることを常に意識しながら、研究メンバーのおのおのの企業でトライアルをし、改良を重ねて作り上げた実践的な手法である。研究メンバーの役職はプロジェクトマネジャー、開発者、品質保証、SEPGが含まれ、また業種的にも組み込み系、エンタープライズ系、とバランスよくミックスされていた。そのため、さまざまな視点から検討され、業種にかかわらず適応できるものとなっている。

 そもそもレビューとは、後工程に不具合を持ち越させないことが目的である。よって、どのくらいの規模、影響度の不具合を防ぐことができたのかということがレビューの価値である。また、価値の高いレビューを行うためにはレビューの質を向上することが重要であり、それらを客観的に把握する必要がある。

 しかしながら、現在一般的に計測されているレビュー関係のメトリクスはレビュープロセスの結果を表面的にしかとらえていないため「質」を把握するためには不十分である。また、レビュー実施時点のことしか考慮していないため、後工程の不具合をどれだけ防ぐことができたのかという「価値」を把握することができない。

 そこで、本研究ではレビューの「価値」と「質」を表すメトリクス計測方法を開発した。

レビューの質の定量化と見える化ツール

 従来、レビューを測るメトリクスとして、指摘件数、レビュー実施工数、レビュー対象の規模、といったものが使われてきたが、いずれもレビュープロセスの内部に踏み込まず、結果だけを測るものであった。そのため、これらのメトリクスはレビューの善しあしを的確に表現できていない。図1-1は指摘件数がレビューの善しあしを表現できていない例である。

 そこで本研究では、従来のメトリクスのようなレビュー結果のみではなく、レビュー実施プロセスの中身に着目して、レビューの質を定量的に把握する方法を検討した。

 まずレビュープロセスの「準備」フェーズ、「実施」フェーズに着目し、レビューの質を評価する項目を抽出した。例えば「準備」フェーズならば「資料は事前配布されていたか」や「レビューアは事前に資料を読んできたか」など、「実施」フェーズならば「モデレータのファシリテーションが適切であったか」や「レビューアは対象の問題領域の知識を網羅していたか」などである。

 抽出した結果、定性的に評価せざるを得ない項目が多かった。そのため各項目をできるだけ客観的に評価出来る様に工夫をしたチェックシート(レビューの質チェック票)を考案した。レビュー会議終了時に主催者含む参加者全員がレビューの質チェック票を用いて評価し、それらを集計することで定量化を実現した。

 レビューの質チェック票の作成にあたっては以下の3点を考慮した。

 1つ目は、簡単に実施できることだ。チェック票の回収率を上げるため、設問を簡単にして回答を選択肢にすることで、短時間で評価できる形式とした。

 2つ目は、選択肢が主観的にならないことである。回答の選択肢では具体的な数字を提示して、主観評価によるばらつきを抑えた。

 3つ目が、回答から傾向が見えることだ。傾向を確実に把握するために、選択肢を偶数個として中央値を選択できないようにした。

 なお、このチェックシートはこちらからダウンロード可能だ(856_1.zip/71KB)。

 そして、回収したレビューの質チェック票は、集計して結果を活用できなければならない。そこで集計結果を見える化するツールも同時に作成した。組織単位やレビュー単位での分析、標準値や下限値(標準偏差により設定)との差異分析、グラフ化、といったことが可能となっている。「事前準備」「会議中」「主催者」「参加者」「レビュー対象」といった観点別の集計結果を見ることもできる(図1-2、図1-3)。

 さらに、レビューの価値を定量化する上で、単なる指摘件数よりも、管理者、開発者共に価値を実感しやすいものとするため、防いだ損失を金額に換算することにした。その実現のために、指摘項目から予測される「修正規模」「ユーザーインパクト」という2つのメトリクスを考案した。次ページで紹介しよう。

ヤマハ株式会社
入社時はスポーツ用品の開発者というこの業界としては異色の経歴。1998年より全社スタッフのSEPG、2008年からは電子楽器ソフト開発部門にて現場のSEPGとして活動。現在はメトリクスによるプロジェクトの見える化や静的解析ツールを活用したソースコードの品質改善などに注力。2008年度日科技連SQiPシンポジウムFuture Award受賞。http://www.yamaha.co.jp/

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