パスアラウンドレビューの適用事例

2009年3月17日(火)
平野 誠太郎

パスアラウンドレビューのテーラリング

 パスアラウンドレビューをそのまま導入すると、既存のアドホックレビュー、主に回覧/配布方式における問題点が発生します。例えば、依頼しっぱなし、レビューしっぱなし、修正されたかどうかわからない、終わったのかどうかもわからない、レビューアが適切かどうかわからないなどです。これらの問題点を解決するためにパスアラウンドレビューのプロセスを図2のようにテーラリングしました。

 テーラリングした点は、作成者ではなくプロセス改善担当者が開始から終了までを主導する点、プロセス改善担当者が適切なレビューアを選出する点、作成者からレビューアに対してレビュー対象物の概要を説明する会議を実施する点、指摘事項についてレビューアと作成者の間で認識合わせをする会議を設ける点、プロセス改善担当者が作成者の修正個所を検証しレビューアに報告する点です。もちろん、レビュー記録は忘れずに残します。

適用における工夫点

 テーラリングしたパスアラウンドレビューを適用するにあたって工夫した点を4つ説明します。

 1つ目は図2にも示した手順です。重要な手順を説明していきましょう。

 まず、「レビューアの選出」です。組織内の成功や失敗経験を活用できるように、過去のプロジェクトにおいてレビュー対象物を作成した経験の有無を考慮して適切なレビューアを選出しました。また、今回適用するレビュープロセスを知らないレビューアがいる場合は、レビュープロセスやその目的、必要な工数を概要説明会の前に説明します。

 次に「レビュー」です。指摘事項を効率よくロギングするために、同時編集できるように設定したファイルをファイルサーバー上で共有しました。レビュー期間中、作成者はそのファイルを適宜参照し、指摘事項への回答ができるものについては認識合わせ会議までにファイルに回答を書き込みます。また、プロセス改善担当者はレビュー状況を監視し、必要に応じてレビューアにレビューの実施を促します。

 次が「認識合わせ会議」です。会議の効率を上げるために、指摘された欠陥や改善点の認識合わせが目的であることを常に周知し、解決策について深く議論しないことを徹底しました。そして、脱線しそうになった場合は、議事進行を担当するプロセス改善担当者が是正します。

 最後が「修正と検証」です。プロセス改善担当者が、レビュー対象物の修正をサポートし、修正とその検証が完了したら、修正されたレビュー対象物とレビュー結果をすべてのレビューアに周知しました。その際、レビューアに工数を確保してもらったことについて感謝の意も忘れずに伝えます。

 続いて2つ目の工夫点はレビューのスケジューリングです。区切り感を持たせるために、図2のように1週間を単位としてレビュープロセスをスケジューリングしました。

 3つ目はレビュー対象物です。レビュー対象は商品ドメインの専門知識に左右されない成果物としました。今回は、管理技術の成果物であるソフトウエア開発計画書とテスト計画書、開発技術の成果物であるテスト要項書の大項目を対象物にしています。また、対象物が計画書の場合は、それを基にして進ちょく監視が実施されるように、プロセス改善担当者が進ちょく監視状況を確認し続けました。

 4つ目は負担感の軽減です。参加者の負担感を軽減するために、概要説明会議は1時間以内、認識合わせ会議は1.5時間以内を目標としました。また、今まで適切なレビューができていなかった風土やレビューという名称に対する既成概念を取り払うため、そして技術者同士がお互いにチェックし合うという面を強調するために、名称をクロスチェックに変えました。

オムロン株式会社
オムロン株式会社 アプリセンサ事業部 技術部
マイコンを使用したFA用画像センサのソフトウエア新規/派生開発、ハードウエア設計、量産保守、営業/顧客サポート、開発プロセス改善などに従事し現在に至る。http://www.omron.co.jp/

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています