8年目の中堅エンジニアが感じる世代間ギャップー 次世代リーダーへの道

2024年4月12日(金)
テックコミュニケーション研究所
東京丸の内に本社を構えるとあるIT企業。異なる世代のエンジニア社員達が働き方やコミュニケーションなどの様々な「世代間ギャップ」を語り合います。

異なる世代のエンジニアが集い語り合う「エンジニア世代間ギャップ」対談企画。第5回目の今回は、入社8年目社員へのインタビューです。若手からベテランへの転換期である中堅エンジニアに、世代間ギャップをテーマに本音を語っていただきました。ぜひお楽しみください。

少し緊張気味の片山さん(入社8年目)

登場人物紹介

さっそくですが、自己紹介をお願いします!

  • 新卒で入社し、現在8年目です。もともと大学は情報学科で、就活の際もエンジニアを志望していました。若手の頃には運用保守の案件への参画が多かったですが、現在は構築案件にリーダーとして参画しています。

中堅エンジニアの“これまで”

現在はリーダーをされているとのことで、上下の世代と関わりがあると思いますが、世代間ギャップを感じることはありましたか。

  • 私はどちらかというと上の世代の人と考え方が合うことが多いので、自分より下の世代に対してギャップを感じることが多いです。主に仕事のやり方や取り組み方が変わってきているなと感じています。
    私が若手の頃に参画していた運用保守の案件は、24時間365日監視が必要でした。そのときに出会った上の世代の人たちは、仕事のためにプライベートの時間を削ったりすることに抵抗がありませんでした。でも今は、プライベートを優先する人が多いような気がして、そこにギャップを感じています。プライベートを優先させること自体は良いことだと思います。仕事を切り上げるタイミングだったり、取り組み方だったり、仕事に対する前提が自分とは違うなと感じています。

ご自身が新卒の頃はどのような働き方をしていましたか。

  • 若手の頃に参画していた運用の案件には弊社から15人ほどの大き目のチームで入っていて、たくさんの先輩と関わりました。そのときも正直ギャップは感じませんでした。今思うと、当時の先輩方と仕事の考え方が一致していたのだと思います。
    案件内ではメンバーとしてプロジェクトの成功を考えていました。運用案件はすでにリリースされていて、実際にお客様が触っているシステムを扱います。何か問題が発生したときは、お客様に影響が出ないように早急な対応が求められました。当時は現場で起きていることに食らいつくのに必死でしたね。でも、それをやりきることが自分の成長につながると思っていました。

働き始めてからイメージと違った部分はありましたか。

  • 就活では大学のOBでエンジニアをされている人からお話しを聞く機会があったので、そこで赤裸々な話を聞かせてもらっていました。半分愚痴みたいな感じでマイナスな部分も聞いていたので入社前は結構身構えていましたが、実際に自分がエンジニアとして働いてみて、やりがいとかプラス面も多くあるなと感じたのです。エンジニアという職業が存外自分に合っていたのだなと、今考えるとそこも良いギャップだったと思います。

現在の働き方

現在中堅エンジニアとして活躍する中で、新卒のころから変化したなと感じる部分はありますか。

  • やはり新しい人と話す機会が少なくなったなと感じます。たくさんの人と交流したいなと思うので、積極的にお話しできたら良いですね。もともと人と話すのが好きなので、飲み会も大好きです(笑)。そうしたカジュアルな場でこそ話しやすいこともありますし、気づけることもたくさんあります。

運用案件が多かったとのことですが、現在は構築案件に参画されています。これはご自身で志望されたのですか。

  • 両方ですかね。今まで経験したことがないことをやりたいなと思っていたところにお声がけをいただきました。運用・保守案件は今動いているシステムに対するものなので終わりはありませんが、構築はシステムを作り上げるというゴールがあります。今はそれをやり切りたいなと思っています。
    案件を提案してもらったときも、自分のやりたいことなどを確認してもらえました。本人の希望を汲み取ってくれる仕組みがあって、全社的にも案件参画後のギャップを埋めようとしてくれているんだと思います。そうやって動いてくれるからこそ、自分としても案件内でのギャップを埋める努力をしていきたいですね。

案件を経験するごとに感じたギャップはありますか。

  • 仕事のやり方で相手とのギャップを感じたことはあります。一緒にやる人が変わればもちろん仕事のやり方も変わります。その中でもやりにくさを感じることや、少し違うなと感じることもありました。そういうときは、自分のエンジニアとしての経験や技術的な知見を軸に考えてみるんです。「技術的に考えたら」という前提があることで、適格なアプローチを導くことができます。そうすると、やり方のギャップを感じる相手とも認識を合わせられるようになります。エンジニアとして経験を積み成長することで、よりギャップを埋められている実感がありますね。

現在はリーダーとして活躍されていますが、メンバーのときと考え方や働き方に何か変化はありましたか。

  • 大切にする部分が変わりました。自分の成長ももちろん大切ですが、今はメンバーが成長できるかというところを一番に考えています。若手が自分の仕事を振り返ったときに「頑張ったな」とか「こういうことが身についたな」とか、達成感や成長を実感してほしいと思っています。そのために本人にとってちょうど良い負荷がかかるように仕事の振り方を工夫しています。
    若手同士でも、自分の仕事と相手の仕事を比較してギャップを感じることもあると思うのです。そんなときでも自分の仕事に満足感を感じてほしいですね。

チームメンバーへの思いを語る片山さん

リーダーとして働く中で意識していることはありますか。

  • やはりお客様への報告の仕方でしょうか。今までは仕事内容を報告する相手は社内の先輩やリーダーでした。自分がリーダーとなってからは報告する相手がお客様になったので、伝えたい意図が伝わるようにコミュニケーションに気を使っています。具体的には自分の経験をもとにお客様が納得できるような説明を心がけています。先ほどのギャップを埋めるためのコミュニケーションと同じです。技術的な知見を軸にすることで、認識を統一させることができますし、感情論でない信頼のおける情報を提供することができます。

メンバーの方には具体的にどのようなアドバイスをしているのでしょうか。

  • 具体的な技術というよりは、仕事への考え方や取り組み方をアドバイスすることが多いです。中でも報告の仕方は丁寧に見ています。最初のころは情報整理が追いつかなくて、自分が考えていることを正しく言語化するのは難しいと思います。そうした情報整理と言語化の能力はトレーニングを繰り返して身に着けていくものだと考えています。私の考えを植え付けるのではなく、質問や認識合わせをする中で自分の考えが本人の中から出てくるようにフォローすることを心がけています。
    あとは直接仕事につながるわけではないような豆知識も伝えています。製品のあるあるみたいなものですかね。どんなにマニュアルを読んでも、その設定をどこで確認できるかなんて詳しく書いてあることって少ないですよね。そうした情報はある程度想像力をもって探していくものなので、その勘所というか、こういうところを見た方が良いよ、というところは教えています。そういう力は案件や担当する製品が変わっても使えるスキルですしね。経験からなんとなく分かるものも早々に伝えられたら作業もスムーズにいくし、自分で確認してみる癖も付けられるかなと思っています。

理想のリーダー像はありますか。またメンバーに対してどのようなリーダーでありたいと思いますか。

  • 一緒に仕事をしていて楽しいと思ってもらえるような人でありたいです。一緒に仕事をしてやりがいを感じてもらいたいです。そうすれば仕事を振り返ったとき「大変だったけど楽しかったな」「身になったな」とかプラスの感情を持ってもらえると思うのです。
    そうした明るい感情で案件を終わることができたときに、また一緒にやりたいなと思ってもらえたら嬉しいです。私もそう思える人が何人かいるので、自分もそうなれたら良いなと思います。全社的にも次世代リーダーを育成しようという動きがあって、私がリーダーとして成長することで、そこに貢献できると良いですね。

次世代リーダーとしての今後

これまで一緒に仕事をしたリーダーを見て、また自分がリーダーとして動く中で、リーダーに必要なのはどのような能力だと思いますか。

  • 決断力かなと思います。例えば障害が発生したとき、どういった方針でアプローチしていくのかを決める必要があります。様々な選択肢の中にも最良のものがあって、それを選べるか選べないかで解決までのスピードが大いに変わってきます。そこを見極めて方針を決める能力がリーダーには必要ですね。
    そう考えると、判断力も決断力と同じくらい大切ですかね。メンバーへの仕事の振り方もそうです。その人にとって成長できるような仕事のバランスを見て判断し、任せるという決断をするのもリーダーの仕事です。メンバーの状況を把握するためのコミュニケーションも大切にしたいです。
    こんな話をしていると私ができているみたいに聞こえますが、そんなことはないです(笑)。これからも身に着けられるように頑張っていきたいですね。

「良いプレッシャーを感じている」と語る笑顔の片山さん

決断力や判断力を身に着けるためには、どのような行動が必要なのでしょうか。

  • いろいろなものに触れて、知見を得ることだと思います。もちろん1つの製品に特化した知識を持つのも悪いことではないですが、現在のシステムの多くはたくさんの製品や技術を組み合わせて作られています。多くの製品の知見があると、開発や運用の際に必要な技術も考慮して判断できるのです。システムの全容を把握するのは難しいですが「こうしたほうが運用しやすいだろうな」というように、想像力を働かせることが大切だと思います。より広い範囲のことまで考慮しながら判断することで最良の決断に近づくことができますからね。先ほどリーダーに必要な能力の話をしましたが、そうなると想像力も必要なのかな。

今まで運用保守や構築を経験されてきましたが、今後やってみたい仕事はありますか。

  • エンドユーザーとの関係構築に挑戦していきたいです。全社的にもエンドユーザー獲得に向けて動いているところで、私が所属する部門でもシステム開発等で商材になるものを作っているところです。開発した技術は最終的に顧客に売り込んでいく必要があるので、そこのセッションというか、顧客とのコミュニケーションの部分で貢献していきたいと考えています。今まで私が仕事をしてきた顧客やプロパーさんといった人はある程度ITの知識を持っていましたが、エンドユーザーが必ずしもITの知識を持っているとは限りません。そうしたお客様とコミュニケーションをうまく取れる人というのは、今後望まれる人材なので頑張りたいです。
    また、そうした働き方があるということを後輩にも示していきたいと思っています。私の働き方を見て、好感や興味を持ってもらえたら嬉しいですね。

* * * * *

片山さんは、仕事に取り組む中で生じるギャップをコミュニケーションや技術力で埋め、フラットな関係を築くことを大切にされていました。そうした働きかけにより、人が成長できる環境、働きやすい環境を主体的に作っていくことができるのですね。

次回もお楽しみに!

著者
テックコミュニケーション研究所
都内のとあるIT企業がITの技術だけでなく、エンジニア同士のコミュニケーションをテーマに課題やノウハウを発信しています。IT業界は日々進化し、エンジニアリングの世界では新たな挑戦が絶えません。しかし、技術力だけでは成功を収めるのは難しく、エンジニア同士の効果的なコミュニケーションが不可欠です。我々はテックコミュニケーション研究所というチームを結成し、この重要な側面に焦点を当て、エンジニア同士が円滑に連携し、プロジェクトを成功に導くためのノウハウを発信していきます。

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