本当に役立つレビュー教育を行うには

2009年3月13日(金)
小笠原 秀人

ピアレビューチーム

 ピアレビューのプロセスを説明した後、ピアレビュー会議に参加するメンバの役割と留意点について説明します。

 ピアレビューチームにはピアレビューチームリーダ、説明者、記録者の最低3名が必須です。ピアレビューチームを構成する5つの役割とその内容について説明しましょう。

 1つ目がピアレビューチームリーダです。ピアレビュー会議の開催、ピアレビュー会議の議事進行、発見された欠陥をプロジェクトリーダに伝え、欠陥修正までフォローを行います。

 2つ目が作成者です。これはピアレビューする作業成果物の作成者にあたります。

 3つ目が説明者です。これはピアレビューする作業成果物の説明者にあたります。作成者と同一のチームから選定するが、作成者が兼ねてもかまいません。

 4つ目が記録者です。ピアレビュー会議の議事録作成を行い、欠陥を記録します。

 5つ目がレビューアです。ピアレビュー会議に参加し、作業成果物を検査する役割です。

 続いて、それぞれの役割ごとのピアレビュー会議での留意事項について説明します。

 チームリーダの留意事項は以下の通りです。

・各参加者が準備に費やした時間を集計する
・記録者を任命する
・ピアレビュー会議を開始する
・ピアレビューの速度が、速すぎず遅すぎないようにする
・作成者が問題点を理解するためだけに議論の目的を限定する
・欠陥が発見された場合はピアレビューを中断し、ピアレビュー報告書にそれを記録させる
・欠陥を高/中/低に分類する
・記録者が欠陥をピアレビュー報告書に記録した後、読み上げてもらうようにする
・ピアレビュー会議では欠陥の修正を行わないよう確認する
・作成者(説明者)が作業成果物をすべてカバーしているか確認する

 説明者の留意事項は以下の通りです。

・作業成果物の各部分をチームに対して読み上げる
・作業成果物の全体を網羅するように確認する

 作成者の留意事項は以下の通りです。

・受け身にならない
・チームに協力して欠陥を発見する

 レビューアの留意事項は以下の通りです。

・作成者ではなく、作業成果物のレビューを行う
・会議中の議論の目的が、作成者に問題点を理解させることのみであるよう確認する
・会議中に欠陥を修正しない

ピアレビュー会議の進め方

 ここまでの説明を終えて、いよいよピアレビューの実践(グループ演習)に入ります。参加者を事前に4~5名のグループに分けておきます。この時、グループ内で役割を決めようとすると、それだけで数分かかることもありますので、役割も事前に決めておくことをお勧めします。

 グループ演習のコントロールはピアレビューチームリーダに任せます。講師は、各グループの実施状況を観察し、良い点や改善点などをピックアップすることに専念します。演習の前に、以下のような指示を出して、グループ演習を開始します。

 まず目的の認識です。1つ目の目的が、ピアレビューの方法に従ってレビューを実施することです。2つ目がピアレビューにおける参加者の役割を理解することです。具体的には、リーダは、議論、時間などを含め流れをコントロールすること、作成者は、レビューアに協力して問題点を抽出すること、レビューアは根拠を確認しながら、問題点を抽出すること、記録係はポイントを押さえて記述することです。3つ目が、ピアレビューの進め方を理解することです。

 2つ目が時間です。個人で行う事前レビューは15分、グループで行うピアレビュー実施は30分割り当てます。

 ピアレビュー会議の具体的な進め方のイメージを持ってもらうために、図3で示したような進め方の例を提示することもあります。

 さて今週は、ピアレビュー教育の概要を紹介しました。最初は、4時間も拘束するのは気が引けるなとか、本当に成果物を持ってきてくれるかなと不安になることが多くありましたが、実施してみると非常に良い反応を示してくれることが多くありました。みなさんもぜひチャレンジしてみてください。

 次回は、ピアレビュー教育実施後の結果や受講者の感想などを紹介した後、ピアレビューを効果的に実践するためのポイントを紹介します。

[参考文献]
小笠原秀人『ワークショップ レビュー活動を見直そう! ~レビューの基本を学び実践に生かす~』ソフトウェア・プロセス・エンジニアリング・シンポジウム(SPES2009)(http://www.jisa.or.jp/seminar/spes2008/)(アクセス:2009/03)

株式会社東芝
1990年 東芝に入社以来、ソフトウェア生産技術(メトリクス活用、不具合管理、静的解析、テスト設計/管理、プロセス改善など)に関する研究・開発およびそれらの技術の推進・展開活動を実践中。日本SPIコンソーシアム(JASPIC)運営副委員長、SQiPシンポジウム2009シンポジウム委員長。

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