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さくらのIoT Platform立ち上げの裏側にあるチームビルディング―July Tech Festa 2016レポート

2016年7月28日(木)
鈴木 教之(Think IT編集部)

今年で4回目を迎えるインフラエンジニアの祭典「July Tech Festa 2016」が7月24日、産業技術大学院大学で開催された。今年のテーマは「IoTxAIxインフラ」。この4年間でインフラを取り巻く技術はどんどん進化しすべてを網羅することは難しいかもしれないが多くの情報を持ち帰っていただけたら、と冒頭のスピーチでスタッフの油谷氏が趣旨を説明した。

40近く行われた多種多様なセッションの中から、ここでは基調講演の模様をレポートする。登壇したのはさくらインターネットでIoTプラットフォームを立ち上げた小笠原 治氏。小笠原氏はもともとさくらインターネットの共同ファウンダーの一人で、さくらを離れてから数多くの会社を経験し、2014年にはABBALabとして投資事業を開始した人物。DMM.makeの立ち上げなどは記憶に新しいところだ。

基調講演に登壇したさくらインターネット フェローの小笠原 治氏

同氏は2015年7月に“出戻り”の形でさくらインターネットに再ジョインし「さくらのIoT Platform」をゼロから企画した、2016年4月からα版を公開している。基調講演では、創業20年を迎えるさくらインターネットで新規事業をどうやって立ち上げてきたのか、チームビルディングの観点から語られた。

そもそもさくらのIoT Platformとは

IoTを冠するデバイス・サービスはあまた存在している。小笠原氏は「IoTは正直バズワードだと思っている」としながらも、クラウドが概念として定着したことを例に上げつつ、まずはさくらインターネットとしてのIoTの定義を解説した。

さくらインターネットが考えるIoTは、インダストリー4.0のような工場の効率化といった狭義の世界ではなく、これからの生活を変えいくような生活者視点でのサービスやプロダクトを含む広義なIoTだと説明する。より具体的にIoTを9つのマトリックスで定義し、特に図中で黒く囲まれた“Things”にあたる、何をセンシングしてフィードバックできるかの部分が重要だと語る。データをたくさん取得すること、技術だけではなくビジネスと両輪で考えること、また、そうしたサービスを産む人のためにプラットフォームを提供したいと考えた。さくらインターネットとしてはインフラ屋なので赤枠の分野を主に注力していくと説明した。

IoTを9つのマトリックスで独自に定義

さくらインターネットが提供するのは、LTE/3Gの通信モジュールとセキュアなデータ環境だ。セキュリティを意識し、デバイスから直接インターネットに接続するのではなく閉域網を用いているのが特徴で、API経由で接続できるようになっている。また、デバイスとモジュール間の通信はすべて隠蔽されているため、利用者はAPIだけを意識すれば良い。これによって「ネットが嫌いなハード屋やハードがわからないネット屋さんにも使ってもらえる」ように考えられたという。

当然ながらバックエンドはさくらのインターネットで動いており、Apache MesosやMarathon、Dockerを用いて構築している。石狩のデータセンターを世界中で活用してもらうために世界展開も積極的に実施していきたいと語った。

新規事業におけるチームビルディングのコツ

ではこうしたコンセプトをもった「さくらのIoT Platform」はどのようにして立ち上がったのか、講演で語られたチームビルディングに話題を移そう。

小笠原氏はフェローという立場とはいえ、入社当初はなんの人事権も持たずに一人で企画を持ち込んだ。まずはデザイナにサービスデザイン(下図)を用意してもらい、その後、同社研究所のリサーチャーに検証を依頼、それから経営企画室を巻き込んでドキュメントを準備し、役員会議用の資料を作成し社内稟議を通したという。無事に稟議が通って予算が使えるようになると、ようやくエンジニアがチームに加わり実装がスタートする。ここまでを3か月で実現したそうだ。いわばどの会社にもあるような一般的な承認フローを経たものだが、小笠原氏にとっては「会社としてやる以上はフローにのせないといけない、ただ個人的にはものすごく長かった」と当時を振り返った。

サービスのデザイン図

その後、冒頭にもあったように2016年4月からα版をローンチ、機能改善していくために新たにデザイナやエンジニアをアサインしている。また、このタイミングで元ニフティの山口氏がジョインし、小笠原氏自身はプロデューサー職をバトンタッチしている。「立ち上げと継続のメンバーは適している人間が異なる、またこれからは技術をビジネス視点で語っていける人材も重要」というのが小笠原氏の主張だ。

会社組織でサービスを育てていくメリットとしては、例えば立ち上げ時のみのメンバーはプロジェクトを離れていっても他の業務があるし、また人出が足りない時には社内でリソースを補給することも可能になる。そうした担保があるなかでチームを組めるのは組織のアドバンテージだと語る。もちろんこれは人がいれば誰でも良いというわけではなく、適材適所でうまく循環させている。講演内で小笠原氏はプロジェクトに関わったすべてのスタッフを1人1人実名あげてスライドを用意して紹介していったのが印象的だった。

最後に同氏は「いろんな技術者たちがつながれるプラットフォームを作りたいと思って、1年間いろんな人と共創してきた。技術は単なるオペレーションではなく(オペレーションが悪いということではなく)エンジニアリングとオペレーションは違う、自分がやりたいのはどちらかを考えて欲しい。もし、自分が認めるものがなければ、そういったチームにジョインするべき。エンジニアの流動性が高まっていくのは良いこと。自分の居場所にこだわらない仕事をしよう」と、エンジニアにメッセージを贈り基調講演を締めくくった。

著者
鈴木 教之(Think IT編集部)
株式会社インプレス Think IT編集グループ 編集長

Think ITの編集長兼JapanContainerDaysオーガナイザー。2007年に新卒第一期としてインプレスグループに入社して以来、調査報告書や(紙|電子)書籍、Webなどさまざまなメディアに編集者として携わる。Think ITの企画や編集、サイト運営に取り組みながらimpress top gearシリーズなどのプログラミング書も手がけている。

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