なぜMS系でクリエイティブか?
制作ワークフローとExpressionの関係性
「制作ワークフロー」とは言っても、ここではあくまでプレゼンテーションレイヤの話としています。
Flashの制作においても、ワークフローというのは長年の課題でした。Adobe自身が各制作ツールの連携は機能として実装していても、そこに明確な「こう作っていくのが理想型」というひな型ワークフローモデルを示してこなかったこともあり、Flashを専門とするWebクリエイティブの会社が10あれば、その制作ワークフローもまた10通りあったのではないでしょうか。
それに対する答えが、Expression Studio+Visual Studioという組み合わせです。Microsoftはこの組み合わせにより、ビジュアルデザイナー、インタラクションデザイナー、そしてコーディングエンジニアという3者の幸福なコラボレーションが実現できると考えています。そしてその連携の要となるのが、3者の共通言語となるXAMLなのです。
UXの設計に基づいてビジュアルデザイナーは、Expression Designを使いながら画面設計を行います。ここでの成果物はベクターグラフィック/ラスターグラフィックとも統合されたXAMLでインタラクションデザイナーに引き渡されます。
インタラクションデザイナーは、UIデザイナーと言い換えても良いかもしれません。ビジュアルデザイナーから渡された成果物に、ユーザーアクションに応じたイベント設定やアニメーション動作などを加えていき、ユーザーインターフェースとしての振る舞いを実装していきます。ここで使用されるのが、Expression Blendとなります。Expression Blendは、ビジュアルデザイナーから渡されたXAMLを読み込み、UIとしての振る舞いを載せた上で、XAMLとVisual Studioで読み込み可能なプロジェクトファイルとして書き出します。
コーディングエンジニアはそのプロジェクトファイルに、サービスとのインターフェースやコントローラの実装を行います。
本連載の第1回(http://www.thinkit.co.jp/article/92/1/)のExpression Studioスイートの項でも解説いたしましたが、この流れこそがまさにExpression Studio、そしてSilverlightプラットフォームの制作上のメリットとも言えます。それぞれの役回りに応じたツールと、それらを一意的に貫くXAMLという共通言語の存在は、開発現場におけるワークフローと体制作りの大きな助けとなることでしょう。
制作会社として何を押さえておくべきか
最後に、筆者の見解としてお話させていただきます。
Microsoft製RIAテクノロジーが今後どのような道をたどり、どのようなプラットフォームに成長するかは未知数です。もちろん、最終的にどこまで普及するかも今の時点では何とも言えません。とはいえ、プラットフォームとして後発であるからこそ、非常に充実した機能やツールが提供されており、ある一定数の普及は確実とも考えられます。
比較的Flashを専門とし、Webクリエイティブのフィールドで活躍されている制作会社、あるいは個人のクリエイターの方々にしてみれば「Silverlightにも手を出すべきなのでは…。でも、これまた最近進化の足並みが早いFlashプラットフォームから振り落とされないだけでも精一杯…」という辺りが正直な所ではないでしょうか。
筆者としては、今現在Flashのみで十分戦っていけているクリエイターとしては、Silverlightに無理に手を出す必要はないと考えます。むしろフィールドを広げる意味ではAIRやFlexに手を出すべきかもしれません。実際、現時点ではSilverlightとFlashとで実現できる機能に関して、大まかには大差ありません。
もちろん、双方のテクノロジーを理解している上で、案件に対してそれらの細かい差異を元にどちらのテクノロジーが適しているのかを検討し、設計・インプリメンテーションできるのが理想であるのは言うまでもありませんが。
とはいえ今回の連載で、Expressionでのクリエイティブ、そしてSilverlightプラットフォームに1人でも多くの方が興味を示していただけたら幸いです。