Webプラットフォームの全体像を知る
はじめに
マイクロソフトのWebプラットフォームテクノロジーは.NET Framework(以降、.NET)と共に成長しています。現在の.NETのバージョンは4ですが、Webプラットフォーム周りのテクノロジーは多岐にわたり、.NETを入門する方にとって少し複雑化してきているのも事実です。
本連載では.NETに触れた事がないWeb開発者の方や、プログラミング入門の方に対して、.NETにおけるWebプラットフォームテクノロジーを鳥瞰(ちょうかん)しつつ、それぞれのテクノロジーの勘所を紹介します。また、.NET経験者でも各テクノロジーに触れた事がない方はその部分だけでも閲覧いただければ幸いです。
マイクロソフトのWebプラットフォームとは?
まずは、図1の全体像をご覧ください。
図1:マイクロソフトのWebプラットフォーム(クリックで拡大) |
ざっくりと解説すると、全ての.NETプログラミングを行う開発環境としてVisual Studioがあります。Visual Studioでは.NET 2~4の開発ができます。.NETにおけるWeb開発はASP.NET、WCF(Windows Communication Foundation)、Silverlightの3つのフレームワークや基盤を利用するのが基本です。また、作成されたアプリケーションは、Windowsサーバー上のIISや、去年正式サービス開始されたWindows Azureと呼ばれるPaaSを利用して、デプロイの後、アプリケーションを公開します。
総括すると、Visual StudioでWeb開発を実施し、開発完了したアプリケーションのデプロイまでの全てを、マイクロソフトの提供するプラットフォームで完結させる事ができます。なお、図には掲載していませんが、新しいWeb開発環境として新たなRazorビューエンジンを用いた開発を行うためのWebMatrixや、Visual Studio 2010(以下、VS 2010)上で利用でき、Silverlightを活用した動的データアプリケーションの開発/実行をするLightSwitchなども選択肢として存在しています。もちろん、必ずしも全てを利用する必要はありませんし、必要なテクノロジーのみ利用する事もあるでしょう。今回は、全体の概要回ですので、以下の項目を簡単に掘り下げたいと思います。
- Visual Studio 2010
- ASP.NET 4
- ASP.NET AJAX
- ASP.NET 動的データ
- ASP.NET MVC
- WCF
- Silverlight
- Windows Azure Platform
Visual Studio 2010とASP.NET 4概要
2011年3月現在、リリースされている開発環境の最新版はVS 2010になります。VS 2010では、基本的にVBやC#を利用してWindows上で動作するWindows Formアプリケーションや、Office開発、Web上で動作するASP.NETアプリケーションなど、様々なアプリケーション開発ができます。
テキストエディタと違い、VS 2010ではデバッグや、インテリセンス(クラスライブラリなどを使用する時の入力補助機能)、フォームデザイン画面やコントロールが配置されたツールボックスなど、開発を補助するための統合環境として用意されています(図2)。
図2:Visual Studioによる開発イメージ(クリックで拡大) |
開発者はアプリケーションのデザイン部分のコードを一切記載せずに、デザイン画面を見ながら、またコントロールを配置しながら成形できます。つまり、ボタンクリック時のイベント処理など、ビジネス処理の記述に注力して開発を進める事ができます。
ASP.NETは、一言で言ってしまうと「.NETにおけるWeb開発を実施するためのクラスライブラリと実行環境を含んだフレームワーク」です。現在はAJAX機能を持つASP.NET AJAXや、動的データアプリケーションを開発できるASP.NET Dynamic Data、MVCベースのアプリケーションを作成するASP.NET MVCなど、用途によってプロジェクトを選択できるようになりました。また、ASP.NET 4からはオープンソースのJavaScriptライブラリであるjQueryもプロジェクトに標準で付加されるようになりました。次ページから、ASP.NET個別の機能について簡単にご紹介します。