プロジェクト管理のアンチパターン

2009年5月25日(月)
細川 努

Irrational Management(イラショナル・マネジメント)

 プロジェクトマネジャーは、本来、プロジェクトの成功のために機能すべきですが、場合によっては、プロジェクトマネジャー自身がプロジェクトの混乱のもとになる場合もあります。

 例えば、非常に専横的で、プロジェクトメンバーの意見を聞かないマネジャーや、本来はアーキテクトに任せておけば良い技術的な事項にまで口を出したがるマネジャーなどがそうした混乱の原因となるのです。

 こうしたケースを、“イラショナル・マネジメント”(無分別なマネジメント)と呼びます。

 以下のような症状があれば、イラショナル・マネジメントアンチパターンにかかっている可能性があります。

・重要な課題について議論ばかりされていて結論が出ない
・プロジェクトメンバーのフラストレーションがたまる一方である
・納期がどんどんと伸びていく

 プロジェクトが、このような状況に陥ると、プロジェクトマネジャーを中心とした議論の時間ばかりが長くなる一方、何も決まらないまま時間だけが過ぎていきます。その結果、いつまでたってもプロジェクトメンバーは具体的な作業にとりかかれず、プロジェクトはどんどんと遅れていくのです。

 イラショナル・マネジメントを改善するためには、まず、プロジェクトマネジャー自身が1人相撲を取らずに、役割分担を見直すことが必要です。

 例えば、技術的事項の決定はアーキテクトにゆだねるなど、プロジェクトマネジャー自身はマネジメントに専念した方が良い結果が出るかもしれません。

 また、プロジェクトが円滑に実施されるよう、プロジェクトの目的・目標の共有化や、プロジェクトメンバーとのコミュニケーションも重要です。

まとめ

 これまで紹介してきたアンチパターンは、ソフトウエア開発における数多くの失敗に学び、どうしたら成功に導けるのかについて考察したものです。

 東京大学名誉教授の畑村先生によると、失敗には、未知の事象に遭遇し、失敗することで進歩する「良い失敗」と、本来避けられるべきだったのに、不注意や未熟さのために発生した「悪い失敗」があるそうです。

 まさしく、アンチパターンは、本来避けられるべきだった「悪い失敗」を示し、その過ちを繰り返さないように回避方法を示しているものなのです。

 今回、アンチパターンを通して各種の失敗を紹介してきました。こうした苦い失敗を繰り返さないようには、失敗に学んでいくことも大切なのです。

【参考文献】
William J. Brown (著) 、Raphael C. Malveau (著) 、Hays W.“Skip” McCormick III (著) 、Thomas J. Mowbray (著) 、岩谷宏 (訳)
「アンチパターン」ソフトウエア危篤患者の救出
ソフトウエアパブリッシング刊 ISBN 978-4797321388

畑村 洋太郎(著)
「失敗学のすすめ」
講談社刊 ISBN 978-4062103466

株式会社アーキテクタス
(株)アーキテクタス 代表取締役 技術士(情報工学)大手シンクタンクで金融系システム構築等を経験。現在、総務省CIO補佐官として、総務省内のシステム構築への助言等を担当している。要求開発アライアンス理事 日本Javaユーザー会(JJUG)監事

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