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ダウンロード数は収益につながっているのだろうか?

2016年3月4日(金)
ReadWrite Japan

収益を上げるうえで肝になってくるのは、アプリのアクティブ化である

ユーザーがモバイルデバイスで過ごす時間のうち、約89%はアプリを使っている。さまざまな企業がデバイスだけでなく、アプリ自体でもシームレスなエクスペリエンスの提供に力を入れているのは驚くことではない。ユーザーはコンテンツを掘り下げたいわけではなく、むしろリアルタイムで決めて購入するものをある程度表面化しなければならない。このため、開発者たちは翌年に顧客を呼び戻せるかどうかを、アプリ内販売および収益化における一番の判断基準に置く必要がある。ではこの流れの背景にはいったい何があるのだろうか?

ダウンロード数は意味のない数字だ

アプリが登場して以来、ダウンロード数は開発者たちが成功の目安とする一番の基準であり、収益の目安でもあった。その為、ソーシャルで多く見られるクリックを誘発するような広告は、ダウンロード数を稼ぐことが目的となっていた。しかし、この判断基準はアプリの無料化が進むにつれ、正当なものではなくなってきた。

その代りにユーザーはアプリ内での活動に課金するようになってきており、すでにダウンロード数は収益の目安としては使えないものになっている。世間一般で起こっていることに適応し、モバイルにおいて起こっているユーザーエクスペリエンスに取り組むため、開発者たちはダウンロード数から再定着率に判断基準をシフトすることを迫られている。

APIがApps-as-a-Serviceを支える

次に、開発者たちはアプリを携帯に入っている単体のソフトウェアだとはもう考えておらず、一つのサービスとしてみなしており、実際のアプリは提供されるサービスへの単なるエントリーポイントである。例えば、多くの異なるアプリからレストランの空席確認・予約を行うための起点としてOpenTableを利用する。ユーザーはそのためにOpenTableアプリをダウンロードする必要はない。開発者たちはAPIを使うことで、アプリが提供するサービスを複数のポイントに展開できている。つまり、アプリをダウンロードしてもらうことよりも、顧客の前にサービスを提供できる機会の方を気にするべきなのだ。

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ユーザーの再利用とAPIの使用回数増加には明確な相関がある。今日、開発者たちはアプリ単体よりもAPIを通じてより多くのユーザーにサービスを提供している。これは、形態はどうであれユーザーを掴むことが大事だというコンセプトを裏付けるものだ。例えばUberは、何人がUberアプリをダウンロードしたかよりも、一日に何度の乗車利用があったかを重視しているため、他のアプリにもUberを組み込むことに力を入れている。一方で、アプリはより特定の取引や用途の為のものになってきている。この考え方の変化に対応する為に判断基準を見直さなければならない。アプリやソフトをダウンロード数の為ではなく、より多くの機会を獲得し、再度利用してもらい、そして将来の予測に役立つためにどうするかに注力するべきだ。

ユーザーの行動を捉え直す

3つめに、モバイルでの顧客再ターゲットキャンペーンに欠けられるマーケティング費用は2年前から急速に伸びている、ということがある。なぜだろうか? それはユーザーのアプリに対する期待値が上がっているためだ。コンテンツがどこか別のところから入手できる場合、ユーザーがアプリをダウンロードする確率は下がっている。Facebookを例に挙げると、記事はアプリから直接見ることができ、コンテンツを手に入れるために別途アプリを入れる必要はない。これによりユーザーはコンテンツや機能に対するニーズを一つの情報源から満足させることに慣れてしまっている。もしあなたがニュースを提供しているとして、それをFacebookアプリでシェアしていないとしたら、新しいユーザーなど獲得できるだろうか?今あるニュースサービスはソーシャルメディアでの配信に大いに依存している。ユーザーの再アクティブ化を獲得するにあたって、新規のユーザーにアプリをダウンロードしてもらうというのはハードルが高いものだが、既にユーザーが慣れ親しんだアプリのUIを通じてサービスを利用してもらうというのは比較的ハードルが低い。開発者たちは提供されるエクスペリエンスに満足しているユーザーの再ターゲティングに、より多くの関心を払うようになっている。

既にそういった傾向はみられるが、来年は異なるアプリやAPI同士のマッシュアップに、より重点が置かれることだろう。モバイルアプリを集約する為にはAPIの整備が欠かせない。ユーザーが求めるコンテンツや機能で顧客の固定化を図るモバイルカードの考え方も同じだ。ユーザーの観点からすればこれはより良いエクスペリエンスではあるが、開発者としての観点からいえば、新しい種類のユーザやアクションの掘り起こしにもつながる。例えばもし、AirBnBがTripAdvisorと提携して、顧客がTripAdvisorで旅行プランを選んでいるときにおすすめの宿泊先も紹介してくれたらいいと思わないだろうか?初期のアプリにはこういったコラボレーションは多く見られず、旅行のプランを立てるための同じようなアプリはごまんとあった。

2016年になり、開発者がユーザーの再アクティブ化に目を向けることはより重要になるだろう。市場の動向は、ダウンロード数のような古い目安に対して2年前のような価値を見出さなくなる。そして収益の目安が大きく変わる瞬間を我々は目にしようとしている。収益が得られる限り、収益の最適化に焦点を当てれば、それがどこからやってくるのか気にしなくなることだろう。例えば、去年 Pinterestがアプリ内だけでユーザーが買い物をできるピン/カードを導入した、ということが挙げられる。開発者のアプリ成功の判断基準が古いままだと、そのアプリはいずれ消えることになる。今こそ、次の機会を逃す前に、適切な顧客の前へコンテンツを提供することに注力するべき時だ。

ReadWriteJapan編集部
[原文]

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