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IoTが変えるファッション業界の伝統的常識とは

2016年6月18日(土)
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新たに登場した技術が、リテール業界におけるカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)を見違えるほどに変えてしまうといった現象は、今となってはお馴染みだ。

我々はインターネットを使い、いつでもどこでも買い物ができ、物理的なお金のやり取りをすることなく、瞬(またた)く間に商品を受け取ることができる。ファッション用品の買い物が数秒で行え、しかも無償で返品ができるということは、自分の家がまるで試着室のようなものになっているといえるだろう。

先週、我々はOakの共同設立者にしてCEOのハーレー・サイパー氏と興味深い話をすることができた。彼は、鏡を使った買い物の顧客体験に変化をもたらすハードウェアプラットフォームのクリエイターでもある。

Oakが創りだしたものは、『Oak Mirror』というコネクテッドデバイスである。これは、オンラインでの買い物体験を実店舗での買い物体験に近づけるものだ。サイパー氏は、オンラインショッピングはしようと思えば簡単にできるが、実際にそれが顧客の商品購入につながる割合は僅かなものだという。

「実店舗でのセールスは全体の95%程であり、そのうちeコマースで占める割合は7%以下です。リテール業界は120兆円市場であり、米国の人口の1/4もの雇用を抱えています。また、国内可処分所得の使い道のうち50%を占めています。」

この産業分野(eコマース)、その中でも特にカスタマー・エクスペリエンスを向上させることにサイパー氏は情熱を注ぎ込んでいる。服の試着といえば、たいてい中途半端に服をきた状態で異なるサイズを試すために店中をうろうろしたり、声をかけてきた店員を適当にあしらう必要が付き物だが、Oakはこれらを過去のものにしようとしている。

現在、彼らのそのテクノロジーは米国のラルフローレンストアに導入されている。そこでは店内のアイテムすべてにRFID(Radio Frequency IDentification)チップが付けられており、独自のショッピングエクスペリエンスが提供されている。

試着室の鏡にあるタッチスクリーンを押せば、そこに試着したい服が表示される。他のサイズや色が欲しいのであれば、そのスクリーンをタップすればiPadを持った店員が指定したものを持ってきてくれる。

さらに、店内にあるアイテムからおすすめのスタイリングも表示され、選んだものについては後で考え直すために自分のメールアドレスに送ることも可能だ。 察しのいい人なら、鏡によって5番街の日中帯、イーストハンプトンの夕暮れ、Polo Barでの夜などといった様々なライティングも提供されることに考えが及ぶだろう。

Oakは、そのプラットフォームが可能にするこれらのトリックは、これまでのノベリティなどよりはるかに価値があるものだと捉えている。

「RFIDを通して、我々は完璧なデータを把握することができます。たとえば、サイズや色を含めて店内の在庫がどれくらいあるかがひと目でわかります。現在、一般的なリテールでの在庫棚卸の正確性は65%です。また、バイヤーは客がどのアイテムを試着室に持ち込んだか、どのアイテムを一緒に買ったかを知ることができます。あるアイテムは試着したものと別のサイズが買われていたり、あるいは購入までに至らなかったりといったことが把握できるということです。」

このようなデータは、ファッション店、それも6週間以下で商品が入れ替わる「ファストファッション」の在庫を持つ店舗にとっては特に大事なものとなる。

サイパー氏は、ファッション業界というのはテクノロジー活用が活発でない、良く言えば伝統的な業界だということを認めている。この業界が伝統的である主な要因として、世代による基準(デジタルに慣れ親しんだ若い世代と異なり、古くからある店舗のオーナーはテクノロジーに馴染みがない)と、テクノロジーよりも店の看板の方にお金をかけたがる価値観を挙げている。

だが一方で、サイパー氏は次のようにも述べている。「コンシューマは、より早く、簡単で、美しく、活発でパーソナルな顧客体験を求めている。」
これはファッションリテール業界の現実となっていくであろうし、Oakはこのイノベーションの一端を担い、リテール・エクスペリエンスに置ける物理とデジタルの垣根を無くすことを狙っている。

The Oak Interactive Fitting Roomの動画はこちらから。

(ReadWrite Japan編集部)

ReadWrite Japan編集部
[原文]

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。
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