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変わり行く買い物客の現状

2015年9月8日(火)
ReadWrite Japan

ゲスト執筆者のオリ・カレフはオンデマンド陸運企業 GettのアメリカCEOでありジェネラルマネージャーだ。

80-90年ごろ、企業は顧客との関係構築に勤しんでいた。コミュニケーションを正しくとるということが全てであり、エキスパートたちは社員に顧客とどの様に話をするかを教育したり、また他にも企業がコミュニケーションを図るための素材を手がけていた。

やがて21世紀最初の10年に差し掛かりスマートフォンの時代がやってきた。20億以上のスマートフォンが使われており、コンピューターやタブレットを使うよりも多くの人が携帯でネットをしている。

ネットに繋がっているのが当たり前の状態になり、顧客の行動も光の速度で変化を遂げた。我々のエクスペリエンスは店やレストランで売り物を触る代わりに、スクリーンをタッチし購入前にそれがどういうものかを知る様に変化した。これまでの様にスーパーマーケットに出かけたり、路上で辛抱強くタクシー待ちをする代わりに、スマートフォンを使ってタスクを効率的にこなすようになった。

この様な状況では、商品なりサービスが成功するか失敗するかは一週間、一ヶ月どころか数分や数日のうちに決まってしまう。消費者の動きは具体的なモノと人同士のコミュニケーションの時代から、イメージ主体の時代にシフトした。業界やサービス、商品に関わらず、扱うものの情報を素早く提供し、そこで約束されていることをきちんと提供できるものが生き残り、昔ながらのやり方にのみ依存しているものは負ける事になる。

今日の購入者たち: これまでになく実用主義的だ

コネクティビティこそ何より重要である。移動中であればなおさらだ。大手航空会社は機内のWiFiアクセスを低価格で提供しており、AmtrakやPeter Panバスラインなどの陸運会社はこれらが無ければ生き残ることは出来ないという結論に達した。大事なことだが、このサービスは顧客としての我々にも需要のあるものだ。

現代のビジネスが持つ即時性はあらゆる製品やサービスにいえるものだ。しかし大成功を収める機会が急速に増えたことから、また失敗の機会も増加している。映画館を例に挙げてみよう。かつて映画の評判が広まり、映画館が早期に足を運んだ観客に何かお返しが出来るようになるまでには時間がかかった。しかし現在では企業と顧客の関係は刻々と変化するようになっており、映画の評判はWebを通じて(時には公開前に)あっという間に広まってしまう。

新しいオンラインコンシューマとB2Bコンシューマには多くの共通した特徴がある。気分的な購買意欲よりも現実的なリサーチでソリューションを手にすることを優先する。コンシューマは企業の問題解決のソリューションに目を向けるのであって、心に訴えかけるセールストークに付き合いたい訳ではない。

企業ブランドが約束している事をコンシューマが受け入れるかどうかは鍵となる。WYSIWYG(見たままのものが手に入る)ベースのマーケティングはこれまでになく重要だ。顧客はなにか気に入った物をみれば、そのブランドは自分に必要なものを必要なときに、必要な形で提供できると信じる。

この事が現代のコンシューマが自分が買ったものや取引した企業に愛着を持たない事を意味しない。アマゾンは早期にこの事に気づき、ブランドが提供するエクスペリエンスに最初から取り入れた。もし買ったものが気に入らなければ、あなたは即座に返品することが出来る。その事で理由などを聞かれることはない。

旧来のビジネス環境では、人々の選択肢は少なかった。しかし今日ではクリックひとつで済む数多くの選択肢がある。国中で売られているある特定のマウンテンバイクや、自分がまさに食べたいものを出しているNYの寿司屋などを数秒ほどで探す事ことが出来る。

これほど小売やサービスなどの業者にとってコンシューマがやりたい放題になった事は無いだろう。

まだ愛着心が意味を持つ部分とは

都会の人間はよく働きよく遊ぶ。そして店に足を運んだり代金を振り込むための時間がない。そこで彼らは早々に、軽量で手に収まるスマートフォンを使えば、飲食物からフィットネストレーナーまで調達できることに気付き、そして熱狂的にこれを受け入れた。

たった5年ほどでオンデマンドの業界がこれ程の変化を遂げたということは驚異的なことだ。この急速な変化には二つの要素がある。スマートフォンの存在と、人々のサービス/製品の利便性や効率を最大化しようとする欲求だ。

しかし変化がこれほど早いといえども、変わらない部分はある。企業のオンラインにおけるプレゼンスは、実体と整合性が取れて無ければならないということだ。

コンシューマと販売業者がやり取りする中で約束事は出来ていく。買い物客は企業との取引が公平なものであることを望むため、偽りなく、透明性があり、善良な意思に基づいた、正直で信頼が出来るものかどうかに重点を置く。もし私が倫理的な企業と取引するか、疑問を抱くような活動を行っている企業を選ぶかと言われれば、間違いなく前者を選ぶだろう。

ある研究によると、金銭と雇用はマズローの欲求段階の最上段ではない。むしろ我々は充実感、満足感にその価値の重きをおいている。価格は新しいエコノミーにおいて馴染み深い共通の価値基準である。人々はいい買い物をしたかどうかだけでなく、サプライヤーや従業員にきちんとした扱いをしている業者からの買い物かどうかということも知りたがる。

次の様に考えて欲しい。最低賃金が時給で10.50ドルだったとして、私は買い物で5-7%余分に支払っているかも知れない。そうすれば業者は従業員に時給15ドル支払うことが出来る。その結果、従業員がマズローの欲求段階の高みに上がることが出来るとすれば私は満足感を覚える。

これは新しいエコノミーにおける最も根本的な変化だ。多くの場合において、コンシューマは最近まではわずかしか無かった選択肢の恩恵に預かっている。オンラインでの調査から購入決定までが広まり、コンシューマは企業の利害を事実上決定づける存在となった。彼らはネットで声を上げ、受け入れたくないものを拒む事で、これまでにない力を手に入れた。

結論

こういった業界で成功を収めている企業には、ある特定のやり方がある。

まず24時間365日稼動のカスタマーセンターを持ち、コンシューマの問題解決のサポートをおこなっている。またサプライヤーやベンダーに対しても敬意と透明性を持って接している。そして価格設定についても顧客のニーズを尊重しつつも、企業倫理から外れていると思われないよう行われている。

よりコンシューマのオンラインエクスペリエンスを都合のいいものに、よりコンシューマの期待に応えられるようになるにつれ、オンデマンドの業界における成功の確率は高まる。

ある意味テクノロジーは物理的に可能ではないことを達成している。今は創造の時代だ。買い物のエクスペリエンスにより、我々のタスクが信頼性を持って、より短時間で達成されれば、空いた時間をよりプロダクティブな事や充足の為に充てられるようになる。

トップ画像提供:Shutterstock

Ori Karev
[原文]

※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。

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