第5回:セキュアOS紹介(3)〜 SELinux (2/3)

個人情報保護法から見るセキュアOSの必要性
個人情報保護法から見るセキュアOSの必要性

第5回:セキュアOS紹介(3)〜 SELinux

著者:日立ソフトウェアエンジニアリング  才所 秀明   2005/3/23
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SELinuxのアクセス制御設定の変遷

   あとで紹介するディストリビューションFedora Core 3(以下FC3)以前は、すべてのアプリケーションに対してアクセス制御設定を行うことが前提でした。いくつかのアプリケーションに対してはデフォルト設定がありましたが、そのままでは動作しないものも多くありました。このためSELinuxは、非常にセキュアなシステム構築が可能であるものの、敷居が高いものでした。

   そこで、一部のアプリケーションのみをアクセス制御設定で守る、という考え方が生まれました。この考え方に基づく設定はtargeted policyと呼ばれ、以前の設定はstrict policyと呼ばれます。

   このtargeted policyでは、ApacheやBINDのように外部と通信を行う、いくつかのサーバアプリケーションに対してのみアクセス制御を行います。これにより、内部でroot権限を奪われた場合の攻撃は防げませんが、アクセス制御設定されたサーバアプリケーションからの侵入攻撃などを防ぐことが可能です。また、設定のコンフィグレーションも容易にできるようになっていて、SELinux利用の敷居を下げています。


SELinuxを取り巻く環境

   前述したようにSELinuxを利用するための敷居は下がっていますが、実際にはどのような状況になっているのでしょうか。SELinuxを取り巻く環境について説明します。


ディストリビューションでの対応

   SELinuxは、Linux Kernel 2.6に標準添付されていることから、さまざまなディストリビューションで対応されるようになってきました。

フリーのディストリビューション
  • Fedora Core 2、Fedora Core 3
商用ディストリビューション
  • Turbolinux 10 Server(ターボリナックス株式会社)
  • Red Hat Enterprise Linux 4(レッドハット株式会社)

   FC3では、先ほど説明したtargeted policyが採用され、デフォルトインストールでSELinux機能がONとなっています。

   商用ディストリビューションでは、Turbolinux 10 Serverがいち早くSELinuxに対応しました。また、最近発売が発表されたRed Hat Enterprise Linux 4は、FC3がベースとなっていて、targeted policyが採用され、デフォルトインストールでSELinux機能がONとなっています。


日本でのSELinux団体

   日本におけるSELinuxの関連団体としては、以下の2つがあります。

日本オープンソース推進機構(JOSAO) SELinux専門委員会
NPO団体の専門委員会で、SELinuxの普及促進を目的とし、ユーザ団体と技術やサービスを提供する団体との橋渡しの役割を担っています。
http://www.josao.jp/
日本SELinuxユーザ会
有志による団体で、ユーザレベルでのSELinux普及を目指し、SELinuxを含めたセキュアOS技術者の交流を目的とした活動を行っています。
http://www.selinux.gr.jp/


情報源

   今回はSELinuxの概要しかご紹介できませんでしたので、最後にSELinuxの代表的な情報源を示しておきます。

NSAのSELinuxサイト http://www.nsa.gov/selinux/
Fedora Core ProjectのSELinuxサイト http://fedora.redhat.com/projects/selinux/

   日本語の情報源としては、日本SELinuxユーザ会のサイトがよいでしょう。日本語のメーリングリストも運営されていますし、国内国外の情報源となるリンクがまとめられています。

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才所 秀明
著者プロフィール
日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社  才所 秀明
技術開発本部研究部にて、セキュリティ関連研究に従事。現在セキュアOS「SELinux」の調査研究を担当。セキュアOS「SELinux」の普及推進を目指し、講演、執筆、WG活動などにおいて活動中。
Linuxコンソーシアム セキュリティ部会リーダー
日本オープンソース推進機構 SELinux専門委員会メンバー


INDEX
第5回:セキュアOS紹介(3)〜 SELinux
  SELinuxの歴史
SELinuxのアクセス制御設定の変遷
  セキュリティ部会の紹介
個人情報保護法から見るセキュアOSの必要性
第1回 個人情報保護法とセキュリティ対策
第2回 セキュアOSとは
第3回 セキュアOS紹介(1)〜 MIRACLE HiZARDとLIDS
第4回 セキュアOS紹介(2)〜 Trusted SolarisとPitBull
第5回 セキュアOS紹介(3)〜 SELinux
Linuxディストリビュータが紐解くセキュアOS
第1回 セキュアOSの動向
第2回 Red Hat Enterprise Linuxセキュリティの概要と特徴
第3回 MIRACLE LINUXのセキュリティへの取り組み
第4回 Turbolinuxのセキュリティに対する取り組み

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