KubeCon+CloudNativeCon North America 2025レポート 9

KubeCon North America 2025、GitLabのDevRelのトップにインタビュー。GitLabの差別化は?

KubeCon North America 2025、GitLabのDevRelのトップにインタビューを実施。

松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

3月9日 6:01

KubeCon+CloudNativeCon North America 2025にて、DevOpsのためのソリューションを提供するGitLabのEmilio Salvador氏にインタビューを行った。Salvador氏はGitLabにおいてStrategy and Developer RelationsのVPを務めている。GitLabについては2019年にサンディエゴで開催されたKubeCon North America 2019の記事でも紹介している。当時はソフトウェアをビルドするツールとしてのGitLabに注目した内容になっているが、生成AIによる新しい変化がIT業界のあらゆる場所に大きな変動を与えているように、GitLabのソフトウェア自体にも大きな変化を与えているという。

GitLabの広報担当、Christina Weaver氏(左)とEmilio Salvador氏(右)

GitLabの広報担当、Christina Weaver氏(左)とEmilio Salvador氏(右)

なお2019年のインタビューは以下を参照して欲しい。

●参考:KubeConでGitLabのアライアンスVPに訊いてみた

自己紹介をお願いします。

Salvador:私はGitLabのデベロッパーリレーションズを指揮しているEmilio Salvadorです。GitLabには約3年前に入社しました。それ以前はGoogleやAWS、Microsoftに所属していました。Googleは約3年、AWSは2年、Microsoftには11年と少しの期間、働いていました。

そうなんですか! 私も1995年のWindows 95/Office 95の時にシアトルの本社で働いていましたよ。

Salvador:そうなんですね。あなたよりも少しだけ後にMicrosoftで働き始めたのであなたのほうが先輩ですね(笑)。

タイトルがDeveloper RelationsのVPということですが、GitLabを使っているデベロッパーに対して啓蒙を行うというのが仕事なんですか?

Salvador:それは半分だけ正解ですね。GitLabを使って開発をするデベロッパーを支援するという部分に加えて、GitLabはオープンソースとして公開されているので、GitLab自体を開発するデベロッパー、これはつまりコミュニティに所属するエンジニアになりますが、彼らを支援するというのも仕事に入っています。

日本ではまだ多くのIT部門の責任者はGitHubとGitLabを混同してしまっていると思います。それについては?

Salvador:それは実はどの国でも起きていることなんですよ。多くの人がGitHubとGitLabを間違えてしまっています。実際にはGitHubはソフトウェアリポジトリとそれに関連するツールを提供していますが、GitLabはソフトウェア開発のライフサイクルを支援するプラットフォームを提供しているという違いを認識して欲しいなと思いますね。

私は2025年10月にサンフランシスコで開催されたGitHub Universeに参加しましたが、GitHubはMicrosoftと一緒にCopilotに注力していてソースコードリポジトリというよりもコーディングアシスタント、デベロッパーを支援するツールの会社になろうとしているように見えました。Actionsに関しては扱いが少なくてちょっと驚きました。GitLabにとっての競合はどこですか?

Salvador:GitHubはActionsを始めとして多くの機能を追加して今やGitLabの競合と言ってもいいかもしれませんね。GitLabはコードのビルドから実際のデプロイメントに至るプロセスを良くするためのプラットフォームなんですが、昔からビルドとデプロイメントの領域には多くの競合が存在していました。他にもCursorのように生成AIによるコーディングアシスタントからスタートしてCI/CDの領域に行こうとしている企業もありますし、HarnessのようにCI/CDからAIの力を使ってカバーする領域を広げようとしている企業もあります。どれもソフトウェア開発のライフサイクルではコーディングだけやCI/CDのパイプラインだけでは十分な効果が出ないという認識から、より包括的なソリューションに広げようとしているという状況です。その中でGitLabはDevOpsを実装するためのプラットフォームとして支持され進化してきたと言えます。特に顧客が使うさまざまなツールと連携することを可能にしている部分が違いですね。

そのような非常に競争が激しい領域でGitLabの優位性は何ですか?

Salvador:生成AIがソフトウェア開発に革新を起こしたことは間違いないですが、それが一晩で企業におけるソフトウェア開発を根底から変えるということは起こらないと思います。Agentic AIが話題になっていますが、生成AIはこれまでのソフトウェアとは異なり、常に同じ結果を導き出すものではないということを認識する必要があります。決定論的な結果を作り出すというこれまでのソフトウェアとは確実に異なるわけです。そのためAIエージェントに関してもかなりの部分、企業のニーズに合わせてチューンアップを行う必要があります。つまり一つの生成AIが企業の持つすべての問題を解決するということは起こらないということです。その中でGitLabは、プラットフォームとしてユーザーが必要とするさまざまな外部のツールやソフトウェアに対して連携を行うことが可能になっているという部分が優位性だと言えますね。またAgentic AIが企業のセキュリティやコンプライアンスに適合するようにガードレイルを実装することも可能になっています。これらの部分がGitLabの違いだと思います。

もう一つの視点はソフトウェア開発のライフサイクルにAIを導入しようとすると多くのデータを生成AIのモデルに入力する必要があるということです。単にコーディングアシスタントだけではなく、CI/CDやセキュリティの機能にも生成AIを効果的に使うためには、多数のツールを用いて、生成するデータをモデルに入れないと高いレベルの出力を得ることはできません。そしてそのような多様なデータを一元的に管理しているプラットフォームを提供できる企業は世界中にごく少数しか存在しないということです。GitLabはその一つだと思います。それが違いですね。

プラットフォームとしてユーザーが必要とするさまざまなツールと連携するという部分はGitLabのプラットフォーマーとしての視点としては当然だと思いますが、多くの顧客が同じような機能を必要とするということもありますよね? そういうニーズを汲み取ってプロダクトに反映するということは?

Salvador:それはすでに起こっています。ユーザーのニーズは多種多様で、すべてに対応することは難しいですが、実際に話を聞いてみると多くのユーザーが似たような機能を必要としていることがわかります。そのような時にはプロダクトのロードマップと相談しながら、実際に外部のデベロッパーとも協力して機能を開発することも行われています。それらの機能もオープンソースとして公開することで、コミュニティと一緒に開発を行うことを継続しています。

最後にチャレンジは何ですか?

Salvador:そうですね、生成AIによって多くの変化が速いスピードで起こっています。その中で地面に足を着けて確実に進化していくこと、流行に流されないこと、ですね。多くの企業がAIを取り入れようとしていますが、その結果がどう出るのかはやはり組織の強さに依存していると思います。つまり組織がちゃんと機能している企業であればAIは武器になりますが、そうでない企業にとっては危ない道具になってしまうかもしれません。それを見極めることを常に意識する必要があると思います。

生成AIに向いた組織とそうでない組織を見極める物差しみたいなものはあるんですか?

Salvador:我々はコンサルティング会社ではないので組織を評価して改善するための提案を行うことはしませんが、やはり生成AIが良さそうだという理由だけで取り入れるのは危険だと思いますね。

GitLabの前に働いていたGoogle、AWS、Microsoftという企業での体験を元に、一時の流行に流されることの危険性を指摘したSalvador氏のインタビューは、産業全体がAIバブルに踊らされている状況に一石を投じるコメントが印象的な内容となった。ちなみに広報担当のChristina Weaver氏は元Rackspaceということで、OpenStack Summitでも出会っているベテランで久しぶりの再会を喜んでくれた。

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