第3回:RFPを作成していく上での注意点 (3/3)

RFPの作り方
システム開発におけるRFPの作り方

第3回:RFPを作成していく上での注意点

著者:データ総研  堀越 雅朗、石井健作   2007/2/13
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5. 契約事項・提案条件の定義

   RFPに記載する契約事項および提案条件を確定します。契約事項・提案条件とは以下のものです。
契約事項
納品条件、検収条件、支払条件、知的権利の取り扱い、機密保持
提案条件
提案書目次、提案書形式、提案書提出期限・提出先、問い合せ方法・問い合せ先、RFPの修正手続き、提案者への問合せ、プレゼンテーション

表5:契約事項・提案条件の例

   これらの契約事項・提案条件については、詳細部分(日時、固有名詞など)はプロジェクトごとに変わりますが、それ以外の多くの部分については定型化が可能ですので、標準の内容を定めて雛形を準備しておくとRFP作成作業が効率的に行えるようになります。

   提案条件の中に提案書目次が含まれていますが、これは各社の提案書を効率よく評価するために提案書目次をRFPで指定するためです。また、見積金額については要約レベルの項目を指定し、金額を比較しやすくします。


6. RFP作成・提案依頼

   これまでに定義した「プロジェクトの基本要件」「課題、解決策」「システム機能」「環境要件」「契約事項・提案条件」をRFPとしてまとめ、提案依頼先のベンダーに提案を依頼します。

   また、RFP作成と並行して、提案の評価基準を作成しておきます。次に提案を評価するポイントを洗い出します。そして最低限満たしていなければならないポイントは必須条件としてまとめておきます。必須ではないものについてはどのポイントを重視するかを検討し、それぞれ評価の重み付けをします。

   例えば、プロジェクト対象の業務が非常に特殊で、その業務におけるベンダーの開発実績を重視したいという場合には、「当該業務におけるシステム開発実績」の評価ポイントの加重を大きくします。評価基準はその理由も記載してステアリングコミッティの承認を得ておくようにします。

   効率よく提案書を評価するために、各ベンダーからの提案書の形式を揃えて評価基準に対応する提案書の箇所を明確にし、かつ横並びで比較しやすいようにしておくことも工夫の1つです。そのため、「提案書目次」は評価基準をもとにその都度、見直す必要があります。

   事前に提案依頼先のベンダーを選定しておき、RFPを発行することを伝えておきます。そうすることで、優秀な担当者を確保してもらい質の高い提案を受けられる可能性が高まります。なお、提案書評価にはそれなりの時間と工数がかかりますので、提案依頼先はむやみに増やさない方がよいでしょう(提案依頼内容にもよりますが、筆者は多くて6社くらいと考えています)。


7. 提案評価

   提案依頼先から提案書を受け取り、評価基準のうちの必須条件(提案期限が守られたか、提案書の形式が守られたかなど)について評価を行います。これらの必須条件を満たしていない提案については、この時点で評価対象外とし、以降の評価およびプレゼンテーションなどは受けないことにします。

   次に必須条件以外の評価基準について評価を行います。評価が一面的にならないように、複数の担当者で評価します。事前に各担当者は個別に評価を行っておき、その結果を持ち寄ってグループで検討し、評価を決定します。

   ここでの評価では、「基準を満たしている/いない」という選択が難しいことが多いため、以下のような段階的な点数を設定して評価することがよくあります。

0 RFPの要求を全く満たしていない
1 RFPの要求の1/3未満を満たしている
2 RFPの要求の1/3以上2/3未満を満たしている
3 RFPの要求の2/3以上を満たしている
4 RFPの要求を完全に満たしている
5 RFPの要求を完全に満たした上で、さらなる付加価値を提案している

表6:RFP評価点数の例

   提案評価では、提案書の理解を深めるためにプレゼンテーションを行ってもらいます。なお、プレゼンテーションには時間が必要になりますので、提案依頼先が多い場合には全提案についてプレゼンテーションを受けるのではなく、必須条件を満たしているか、または提案書を評価した結果の上位3提案のみ、などの基準で第1選定をし、残った提案に対してのみプレゼンテーションを受けるなどの工夫をします。

   プレゼンテーションを受ける場合には、プロジェクト専任のリーダーとなる人物にプレゼンテーション、および質疑に対する応答を行ってもらうようにします。プレゼンテーション、および質疑応答の内容を通して、リーダーの資質、スキルの評価もできます。つまり、プレゼンテーションの目的は提案書のさらなる理解とプロジェクトメンバーの面談の2つがあるのです。

   提案書評価結果については、必要に応じてステアリングコミッティ向けのサマリ版や各提案に対する考察を付け加え、各提案者の特徴をわかりやすいようにします。考察はQCD(Quality:品質、Cost:費用、Delivery:納期)の視点でまとめるとよいでしょう。

   選定担当者によって選定が行われたら、選定結果および選定理由を報告書としてまとめます。この報告書はRFP、提案書、提案書評価シートとともに発注プロセスの正当性を説明するための重要な資料となります。


最後に

   以上でRFP作成の手順の説明は終わりです。

   3回にわたってシステム開発におけるRFPはどのように作っていくべきなのかを考えてきましたが、いかがだったでしょうか。ご意見やご質問などがありましたら、下記の評価フォームよりください。

   最後に、本連載が今後の読者の皆様の一助になることを祈って筆を置きます。

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株式会社データ総研 堀越 雅朗
著者プロフィール
株式会社データ総研  堀越 雅朗
2002年7月まで大手情報処理会社に勤務。情報戦略立案や新規・保守・運用の設計・開発からプロジェクトマネジメントまでを幅広く担当。91年からDOAによる基幹系開発、DWH構築などデータを中心にした活動を株式会社データ総研と連携展開。現在、株式会社データ総研の取締役として、コンサルティング、商品企画などを担当。


株式会社データ総研 石井 健作
著者プロフィール
株式会社データ総研  石井 健作
1998年、株式会社データ総研入社。以来、データモデルをベースとした業務要件定義を中心に、システム開発計画立案、RFP作成、データ中心システム開発の方法論作成、リポジトリ設計などの幅広いプロジェクトに従事。RFP作成方法論「PLAN-RFP」の開発に携わる。


INDEX
第3回:RFPを作成していく上での注意点
  RFPを作成する
  2. 課題の定義
5. 契約事項・提案条件の定義
システム開発におけるRFPの作り方
第1回 RFPの作成を難しく考えてしまうワケ
第2回 システム開発におけるRFPを考える
第3回 RFPを作成していく上での注意点

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