KubeCon+CloudNativeCon North America 2025から、Yugabyteのチーフマーケティングオフィサー(CMO)、Ajay Khanna氏のインタビューをお届けする。Yugabyteは、PostgreSQL互換の分散データベースで、オープンソースとして公開されているYugabyteDBを開発している企業だ。
Khanna氏はインド出身、シリコンバレーでいくつかのIT企業を経験し、OracleやVeeva Systemsなどでマーケティングを経験した後に2025年2月からYugabyteのCMOとして働いているマーケティングのエキスパートだ。
簡単に自己紹介をお願いします。
Khanna:私はYugabyteのチーフマーケティングオフィサーとして働いています。Yugabyte以前は多くのスタートアップのアドバイザーやシリコンバレーのIT企業でマーケティングをやっていました。Yugabyteには2025年2月に参加しました。
Yugabyteが開発しているYugabyteDBについて簡単に教えてください。
Khanna:YugabyteDBはPostgreSQL互換の分散データベースです。オープンソースとして公開しています。開発はYugabyteの従業員だけではなく、多くのコミュニティのエンジニアが参加して一緒に行っています。Yugabyte自体としては従業員として300名弱のエンジニアが在籍して開発を行っています。コミュニティとしてはその倍程度のエンジニアと一緒になって開発をしているという感じですね。
●GitHubページ:https://github.com/yugabyte/yugabyte-db
分散データベースということですが、主な使われ方は? 競合は何ですか?
Khanna:主な使われ方は2つあると思います。一つ目はPostgreSQL互換のトランザクションデータベースとして使うという方法です。これはECサイトやモバイルキャリアなどが主な顧客になりますが、従来型のSQLデータベースとして使われています。そしてもう一つはクラウドネイティブなシステムにおける分散処理の中核として使うという方法ですね。これはデータベースそのものを分散させてクラウドコンピューティングの中で使うというやり方です。前者の場合はAmazon Aurora、RDSなどが競合となります。後者の場合はGoogle Spannerなどが競合になります。
顧客のニーズとして従来のSQLデータベースをモダナイゼーションする、つまりクラウドに最適なシステムとしてリニューアルする際にYugabyteDBが選択されることが多いと思いますね。YugabyteDBはオープンソースとして公開されているので、パブリッククラウドのマーケットプレイスから素早く導入することも可能ですし、オンプレミスのクラスターに導入することも可能になっています。
YugabyteDBはオープンソースということですが、企業としてのYugabyteはどうやって収益を上げているのですか?
Khanna:データベースの機能をスタンダード、プロフェッショナル、エンタープライズと分けてそれぞれサービスの価格付けをしています。スタートアップであればスタンダード、よりエンタープライズ向けの機能、例えばマルチリージョンでの実装などが必要であればプロフェッショナルなどを利用して貰う感じですね。エンタープライズはセキュリティの強化やディザスターリカバリーなどの機能が強化されています。
価格の単価は仮想CPUごととして請求する形です。価格の違いは機能の違いで、どのように実装するか? では価格は変わりません。つまりDB-as-a-Serviceとして利用する場合もオンプレミスで実装する場合も、機能が異なれば価格も変わります。DB-as-a-Serviceとして利用する場合はYugabyteが責任を持って管理を行います。その場合は、どのパブリッククラウドであっても基本の価格は変わりません。Bring-Your-Own-Cloud(BYOC)として自社のクラウドサブスクリプションの中で使う場合については、Yugabyteと顧客で管理を分担する形になります。
なるほど。基本機能だけ必要な顧客が自社でシステムの運用管理だけ行うのであれば、オープンソース版を自社で実装して運用する、つまり無償で使うことは可能ということですね。
Khanna:そうです。多くの企業が24時間、365日のサポートやエンタープライズ向けの機能を必要としているが、クラウドごとに価格が違うということは避けたいという声を受けての価格体系になっています。
PostgreSQL互換の分散データベースということですが、生成AIの時代に必要となる機能は用意されていますか?
Khanna:すでにVectorデータのインデクシングは可能になっていますので、生成AIやRAGなどのアプリケーションからの類似検索のエンジンとしても使えるようになっています。ただし実際にニーズとして多いのは、アプリケーションのモダナイゼーションのコアな部分としてのデータベースを水平分散させるという使われ方です。
単にモノリシックなアプリケーションをそのままクラウドに載せても、アプリケーションやシステムのモダナイゼーションは完結しません。つまりアプリケーションのロジックをコンテナに載せただけでは、突然スパイクするアクセスを分散処理することは難しいわけです。その中核となるのはどうやってデータベースを分散させてアクセスが増えた時に水平的にスケールさせるか? という問題です。YugabyteDBならば、その部分について大きな変更を加えることなくクラスター内で分散処理させることが容易になっています。
●筆者注:この考え方はMySQL互換の分散データベースであるTiDBと同じような考え方と言えるだろう。そもそもPostgreSQLはシャーディングが難しいという状況を打破するために、Citusを始めとして水平分散の拡張が行われてきた経緯がある。TiDBについては下記を参照されたい。
●参考:PingCAP CEOのMax Liu、米HTAP Summit 2022でHTAP登場の背景を語る
オブザーバビリティが備わっているというのは?
Khanna:その通りです。データベースの管理機能としてオブザーバビリティが備わっていますので、分散データベースが今どうなっているのか? については、他のオブザーバビリティツールを入れなくても可視化することが可能になっています。ただしアプリケーション全体を可視化するわけではないので、その部分は注意が必要ですが、少なくともデータベースそのもののオブザーバビリティ機能は備わっていることは知って欲しいですね。
日本でのビジネスはどうなっていますか?
Khanna:日本での顧客に関して言えば、楽天モバイルがすでにYugabyteDBを使っているということをユースケースとして発表しています。楽天モバイルはすべて仮想化環境の中でモバイルネットワークを構築していることで有名ですが、その中核の分散データベースとしてYugabyteDBが使われていることを公開しています。
●筆者注:吉田行男氏の記事にも、YugabyteDBが楽天モバイルで採用された経緯などが紹介されている。
●参考:楽天モバイルが認めた、新基準のオープン・ソース分散SQLデータベース「YugabyteDB」~高可用性、パフォーマンス等、妥協なきプラットフォームの実現
最後にYugabyteとしてのチャレンジ、課題はなんですか?
Khanna:デベロッパーにおけるアウェアネスをもっと上げることですね。従来のデータベースを利用したアプリケーションデベロッパーがクラウドネイティブに移行したい、もっと可用性を上げたい、マルチリージョンでの運用を可能にしたいと考えた時に、YugabyteDBを思い起こしてもらえるようにすることが重要です。多くのデベロッパーにとっては、モノリシックなトランザクションベースのデータベースから、分散処理を可能にする分散データベースへの移行が必須になってきていると考えています。その時にオープンソースのYugabyteDBがそれを可能にするということを知っていれば、パブリッククラウドにロックインされることもなく安価にシステムを構築可能である、この事実をもっと知って欲しいと考えています。今のところ、それが課題と言えますね。
非常に短い時間の中で、分散データベースがアプリケーションのモダナイゼーション、及びクラウドネイティブ化に必須であること、どのパブリッククラウドであっても基本価格は変わらないこと、実装形態よりも機能だけに絞って価格が変わることなど、マーケティングのエキスパートらしい回答が印象的なインタビューとなった。
●YugabyteDB公式ページ:https://www.yugabyte.com/
