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社内SNS構築事例
Know HowからKnow Whoへ 〜社内SNS構築指南

第5回:社内SNSの弱点を克服する

著者:TIS  倉貫 義人   2007/5/29
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資料を共有する仕組みを作る

   社内の資料を管理して共有するためのシステムを作るにあたって、目的と狙いを以下のように設定しました。
社内のドキュメントやライブラリの整理
資料を提供する社員にとっては、自前でデータベースやサーバを用意しなくても良いため業務効率が向上する。
社員による社内の資料へのアクセスの整備
資料を利用する社員にとっては、あちこち探しまわらず一カ所で探すことができるため業務効率が向上する。

表3:社内資料管理システムの目的

   資料を管理する仕組みと考えると、一般的にはファイルサーバがあればよいと思いがちです。しかしファイルサーバだけでは閲覧性が乏しいため、ユーザが必要な資料にたどり着けない問題がでてしまいます。そのためWebブラウザ上で閲覧でき、かつファイルの説明や探すことのできる仕組みが必要になります。また社内の資料をすべてWordやExcelのファイルで作る必要はなく、Web上のデータとして管理すればよいはずです。

   Web上でホームページを共同編集することのできる仕組みとして有名なのは「Wiki」です。Wikiであれば前述のストックの情報を扱うことにも長けているため、今回の目的にマッチしています。

   そこで今回の目的達成のために、Wikiの仕組みをベースにして前述のファイル置き場などの要件から以下の機能を追加したものを構築しました。

Wikiそのものをユーザやグループの単位で作成できること
全社で1つのWikiにすると、利用者同士で遠慮しあって編集が進まないこともあるので、社員やコミュニティが自由にWikiを作成できるようにした。
それぞれのWikiはカスタマイズが自由にできる
作成したWikiは、各自のホームページのようにデザインから構成まで、自由に編集できるようにした。
ファイルとWikiページを同等に扱える
WordやExcelファイルなどを公開して共有できる仕組みとして、Wikiのテキスト情報だけでなく、ファイルのアップロード・ダウンロードも容易にできるようにした。
アクセス制限とアクセス履歴の管理
社内の資料とはいえ、セキュリティを考慮してアクセスにはログインを必須とし、そのアクセス履歴を残すようにした。
TCポータル(社内SNS)と連携できる
社内SNSとユーザ情報は共有し、シングルサインオンも可能。社内SNSで提供している全文検索でも一括で検索できるようにしました。

表4:追加した機能

   一般的には「Wikiファーム」と呼ばれるサービスに近いですが、Wiki全体を一覧で閲覧できる機能があることや、横断的に全文検索できるなどの違いがあるため、このシステムも自分たちで新規に構築しました。TIS社内で導入する際には、大小様々な雑多なWikiを各自で作ることができる様子から、「バザール」と名付けました。

資料を共有する仕組み(バザール)
図3:資料を共有する仕組み(バザール)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


バザールの機能

   バザールも社内SNSと同様に、完成してからリリースをするのではなく、ある程度の機能ができた段階でユーザにリリースして、利用状況の反応をみながら機能改善をしていくスモールスタートの開発スタイルを採用しました。そのため2ヶ月ほどで構築したあと、2007年の3月から稼働を開始しています。

   現在稼働中の機能について画面を交えながら簡単に紹介します。

   バザールは社内SNSとは別のWebアプリケーションとして開発して運用しています。トップページも社内SNSとは別に用意しています。またWiki一覧の表示とWikiごとのリリースノートを横断的に表示しています。リリースノートは各Wikiごとに作成することができ、ページの更新日付ではなく、各Wikiの管理者が意図的に更新を知らせたい時に利用します。

トップページ
図4:トップページ
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   Wikiの作成はウィザード形式を用いて、Webの画面上から順番に質問に答えていくだけで作ることができます。難しいサーバの設定などは不要になっています。デザインも最初からいくつかテンプレートが用意されているので、そこから選ぶだけでWikiをはじめることができるようにしました。もちろん作成した後は自由にデザインを変更できるため、管理者ごとに個性のあるページを作成できるのもポイントです。

Wikiの作成
図5:Wikiの作成
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   Wikiのページとアップロードされたファイルは同様に扱われており、それぞれアクセスおよびダウンロードしたユーザの履歴を残すことができます。またWikiということで誰かが編集して消してしまった場合などの懸念があるかと思いますが、各ページとファイルに完全な履歴を残すようにしています。これはSubversionというオープンソースのバージョン管理の仕組みをバックエンドに持っているため可能となっています。

付属機能
図6:付属機能
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   また従来の社内資料の展開としては、利用者はダウンロードのみだけでフィードバックの方法がなかったのですが、今回はそれぞれのWikiのページやファイルに対してコメントやレビューができるようにしました。

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TIS株式会社 倉貫 義人
著者プロフィール
TIS株式会社  倉貫 義人
基盤技術センター所属。社内の技術支援をするかたわら、社内SNS構築のプロジェクトマネージャ兼メインプログラマとして従事している。一方で、eXtreme Programmingというアジャイル開発の研究・実践を行い、XP日本ユーザグループの代表もつとめている。

情報共有ソーシャルウェア/社内SNS「SKIP」
http://www.skipaas.jp/
XP日本ユーザグループ
http://www.xpjug.org/


INDEX
第5回:社内SNSの弱点を克服する
  社内SNSの価値
資料を共有する仕組みを作る
  知識創造のサイクルの実現