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たかはしもとのぶの「はじめてのオープンソース」

第5回:オープンソースコミュニティは何をするところ?

著者:たかはしもとのぶ   2007/11/21
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オープンソースのコミュニティって?

   …数時間後…

もとのぶ先生    ただいま戻りました。青井部長、金子さん、今日のBOFは結構活発に意見が出て、楽しかったですよ。みんなはそのまま食事に行ったんですが、わたしはちょっと成果物が滞り気味なので戻ってきました。
森君    あ、もとのぶ先生、おかえりなさい!「コミュニティ」は楽しかったですか?

もとのぶ先生    ん? コミュニティ? あぁ、今日のBOFのことですか?

森君    金子さんが「もとのぶ先生に、コミュニティのことを教えてもらえ」っていうんでー。

金子さん    自分で調べろって言ったでしょ(怒)!

森君    えーん、最近なんだか、みんな厳しいよぉ…トホホ。

もとのぶ先生    まぁまぁ。

   さて、コミュニティの話だけど、今日のBOFはソフトウェアベンダー主宰のイベントの一環だったから別にして、オープンソースのコミュニティについて、説明しようか。

森君    お願いします。
もとのぶ先生 もとのぶ先生    一言でいえば、ApacheやPostgreSQLといったプロダクトや、セキュリティやIPv6といった技術とか、何かのテーマに関して「同好の士」が集まって活動する集団、かな。

   活動の内容はいろいろあって、飲み会で親交を深めたり、内部で勉強会を開いたりといった活動が中心のところもあれば、Webサイトを立ち上げて情報発信してたり、セミナーを開いたりといった外向けの活動をしているところもある。

   ドキュメントの翻訳をしたりとか、メーリングリストや掲示板を主催してプロダクトや技術に関する情報交換を中心にしているところも多いかな。

   実際にプロダクトを開発しているようなコミュニティだと、一番中核にプロダクトの代表者的な人や組織があって、その周りにコミッタと呼ばれる人がいる。コミッタというのは、ソースコードを直接修正(コミット)することができる人。その周りには、コミッタではないけど、積極的にソースコードに関して提案したりパッチ作ったりする人、このあたりまでが開発者かなぁ。
実際にプロダクトを開発しているコミュニティの仕組み
図1:実際にプロダクトを開発しているコミュニティの仕組み

   オープンソースではソースが公開されているから、それ以外の人でも自分が使いたい機能やプラグインを開発したり、ドキュメントの作成や翻訳をしたりとか、新しい使い方を提案したりとか、いろんな人が集まってオープンソースのプロダクトは存在しているわけで、これ自体がコミュニティそのものかもね。

森君    ってことは、世界的な活動をしているコミュニティもあるし、地域限定って場合もあるってことですか?

もとのぶ先生    そうだね。例えば、わたしの関わっている「Samba」のコミュニティを例に取ると、全世界的なものとして、Sambaの創始者であるAndrew Tridgellさんを中心としたSamba Teamというグループがあって「http://www.samba.org/」というWebサイトを運営している。

   この他にもコミッタではないけど、パッチを作ったり積極的に開発に関わっている方もいて、主に「samba-technical」というメーリングリストを中心に活動しているね。それ以外にも多くの人が、samba-technicalや「https://bugzilla.samba.org/」というバグ管理システムでバグの報告をしたり、改善提案を行ったりしている。これは全世界的な活動かな。

sambaコミュニティの仕組み
図2:sambaコミュニティの仕組み
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   一方、日本には「日本Sambaユーザ会」というSambaのコミュニティがあって、英語から日本語へのドキュメントの翻訳作業とか、samba-jpメーリングリストでの情報交換や勉強会などを行っているね。

森君 森君    ボクみたいに、プログラムが書けないし、翻訳とかもできなくても、メーリングリストとか勉強会に参加していいんですか? っていうか、どうすればコミュニティに入れるんだろうっていうのもあるんですけど。

もとのぶ先生    コミュニティに参加している人の大半は普通の「いっぱんじん」だから大丈夫だよ。それに仕事じゃないから、活動はできる人ができる時にすればいいものだし。

   でもそれだけじゃなくて、日本を代表するオンラインショップの楽天がMySQLを使ってたり、徐々にではあるけど大規模システムの事例も増えてきてるよ。

   例えばメーリングリストでいっぱんじんの視点で意見をいったり、たまたま見つけたバグや要望を伝えてくれたりするだけでも、ほんのちょっとかも知れないけど、コミュニティに貢献したって言えるんじゃないかな。

   勉強会も大半は初心者向けで、どちらかといえば勉強会を通じていろんな人と交流するきっかけを作るのが目的っていうところもあるかな。こうした勉強会の企画やWebサイトの作成とか広報とか地道な事務作業とか……コミュニティへの関わり方はいろいろあるんだ。だから、プログラムが書けなくても、活動できる分野はあるんだよ。

   あと、参加方法だけど、メーリングリストに入ったり、各地で行われる勉強会とか飲み会とかのイベントに顔を出して交流したり、知り合い経由だったり、いろいろあると思うよ。

森君    ふーん。じゃあ、ボクももとのぶ先生にくっついていれば、コミュニティ・デビューできるかも知れないんだ。めざせ、コミュニティの有名人!
金子さん 金子さん    ふふふ、いつまで経っても「教えて君」から卒業できなくて有名になったりしてねー。

森君    お、おしえてくん? もとのぶ先生「おしえてくん」って何ですか?よくわからないんで、教えてくださいよ。

青井部長    確かに、森君には「教えて君」の素質がありそうですねー。まぁ、せっかくなので、コミュニティの成り立ちの経緯でも説明してあげてください。

もとのぶ先生    はい、それでは。

本記事はフィクションであり、実在の人物には一切関係ありません。

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たかはしもとのぶ
著者プロフィール
たかはしもとのぶ(高橋基信)
1970年生まれ。1993年早稲田大学第一文学部哲学科卒。同年NTTデータ通信株式会社(現:株式会社NTTデータ)に入社。
クライアント・サーバシステム全般に関する技術支援業務を長く勤める。UNIX・Windows等のプラットフォームやインターネットなどを中心とした技術支援業務を行なう中で、接点ともいうべきMicrosoftネットワークに関する造詣を深める。
現在は「日本Sambaユーザ会」スタッフなどを務め、オープンソース、Microsoft双方のコミュニティ活動に関わるとともに、各種雑誌への記事執筆や、講演などの活動を行なっている。


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第5回:オープンソースコミュニティは何をするところ?
  オープンソースのコミュニティって何なの?
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  コミュニティはどうやって作られてきたの?