第3回:Eclipse RCPによるシステム開発の提案 (2/3)

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第3回:Eclipse RCPによるシステム開発の提案
著者:ビーブレイクシステムズ  高橋 明   2006/1/12
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Look and Feelを統一するシステム

   帰社して早速エンジニアと今回の案件について相談してみたところ、「今回はオープンソースを用いたシステム提案は可能なのでしょうか」との不安げな問いがありました。

   なぜならばAサービス社が現在使用しているシステム構築基盤のほとんどが商用製品であり、オープンソースソフトウェアについてはOSにLinuxを用いている程度だからです。またAサービス社では商用製品に関するスキルを持っているエンジニアはいるのですが、オープンソースソフトウェアに関するスキルに関してはLinuxの簡単なコマンドが使える程度だったからです。

   そういったこともあり、オープンソースソフトウェアの採用にはあまり積極的ではなかったことは否めませんが、システムの社内標準としてオープンソースソフトウェアは絶対認めないということではないようです。

   今までにオープンソースソフトウェアを含んだシステムを検討したこともあったものの、ユーザの要求に合わなかったために導入を見送ってきたとのことです。そういったヒアリング内容をエンジニアに伝えれば不安になるのも仕方ありません。

   しばらく沈黙が流れましたが、「ユーザが認める提案ができれば、オープンソースソフトウェアを絡めたシステム提案は問題ないですよ」と筆者は答えました。ただ、商用製品には充実した機能が備わっており、サポートがしっかりしているというのは事実でした。それを踏まえた上でシステム提案を行わなければなりません。

   Aサービス社の案件についても当然システム導入に関しての予算に限りがあるため、費用がシステム導入を行うかを決定する上で重要なファクターです。しかし優先度が一番高いのはユーザの使い勝手ということであり、ユーザビリティが洗練されている商用製品と比較された場合には苦戦することは当然予想されました。

   今回のケースの場合、Aサービス社では導入実績が豊富な人事管理に特化した他社のパッケージソフトウェア導入を選択肢の1つとして検討しており、このソフトウェアの機能は充実していると評判でした。

   また、コスト面についてもこのソフトウェアは当社の提案と比べてもそれほど変わらないことが予想されました。そのため、オープンソースを用いたシステム構築提案のメリットとしてよくあげられるコストメリットも強調しにくく、他社のパッケージソフトウェアを機能面で上回るものを作れなければ、当社が受注するのは難しいことが予想されました。

   結局、Look and Feelを統一する必要もあると聞いていたので、オープンソースを活用したWebベースのシステム構成案で顧客に提案をすることになりました。


Webベースのシステム構成案に対する反応

   後日Webベースのシステム構成案で提案をしたところ、「Webベースだとこれが限界ですか」というつぶやきにも似た、ため息とも取れる反応がT室長より返ってきました。

   当社以外にもパッケージベンダーなどの提案を受けることは多いとのことですが、どの会社もWebベースのシステム提案をするらしいです。ただ、それら提案されたシステムのイメージ画面やデモなどをユーザ部門に見せても評判があまり芳しくないとのことでした。

   Aサービス社からLook & Feelの統一という要望に対して、他社もWebベースのシステム提案を行ったようですが、それはAサービス社にとっては満足いくものではなかったのです。ただ、営業としてここで引き下がるわけにはいきません。他社と同じようなシステム提案で、同じ理由で交渉決裂するのは営業として納得できません。

   「何かアイデアをもらえませんか。ユーザが使いやすいようなアイデアを画面などで示してもらえれば、それを元にユーザ側にも判断させますので」とT室長より提案がありました。

   Excelのシート上に画面イメージを作成する程度でよいとのことでしたが、ユーザ側からすれば実際に使う際のイメージに近くなければ判断しにくいだろうと思い、少しの時間の猶予をもらってプロトタイプを作成することとなりました。


Eclipse RCPとの出会い

   当社は技術的にはJavaを専門に扱っており、今まで構築してきたシステムのほとんどがWebベースのシステムでした。ただ今回の提案ですと、WebベースのシステムはNGですので、正直大いに悩みました。

   打開策がみつからずに途方に暮れていたところ、「Eclipse RCPベースのシステム構築ならいけると思いますよ」と当社技術者から発言がありました。筆者はEclipse RCPという用語自体は技術専門誌などで読み、リッチクライアントを実現するための技術の1つであることは知ってはいましたが、実際にその技術で作られたアプリケーションを見たことはありませんでした。

システム構成案
図2:システム構成案

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株式会社ビーブレイクシステムズ 高橋 明
著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ  高橋 明
早稲田大学商学部卒業。大学卒業後日興コーディアル証券にてリテール、法人営業を行う。その後ビーブレイクシステムズの設立に参画し、現在に至る。専門は会計システムに関するコンサルティングセールス。


INDEX
第3回:Eclipse RCPによるシステム開発の提案
  はじめに
Look and Feelを統一するシステム
  Eclipse RCPについての説明

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