第4回:Zopeを利用したシステム開発の提案 (2/3)

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第4回:Zopeを利用したシステム開発の提案
著者:ビーブレイクシステムズ  高橋 明   2006/2/1
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Zopeを用いた提案

   帰社すると早速、ヒアリング内容および受領した資料を元に社内ミーティングを行いました。当社は当時から主にJavaを用いた開発を行なっているのですが、いくら開発環境や稼働環境に可能な限りオープンソースソフトウェアを用いたとしても、開発の工数が減るわけではありません。どう考えても提示された予算内での開発は無理であり、赤字を覚悟しなくてはならなそうでした。唯一の救いは、導入時期までは思っていたより時間があるということでした。

   エンジニアの「この指定された予算金額ではまず無理ですね」という問いに対し、「この前の提案で使ったXOOPS(注1)は使えないの?」と筆者は返しました。しかし、エンジニアからの答えは、「今回の場合、XOOPSの標準モジュールでは実現しにくい機能が多いので難しいですね」というものです。

   しかし、何かしらの妥協点はあるだろうと思い、「XOOPSをベースに追加開発するのであれば、どれくらい予算がいるのかなぁ」と視点を変えて質問を続けました。しかし、エンジニアの答えは、「うーん。要件定義が確定していない現時点ではなんともいえないですね」というものであり、このままでは見積りができそうもありませんでした。

   見積りを行う時点で要件が固まっておらず、またXOOPSが使えるかどうかが微妙な機能もありました。標準モジュールが使えるかどうかによって大きく工数が変化するため、見積り金額が確定できない状況でした。

   通常であればXOOPSの機能を使う前提の見積りと使わない前提の見積り書の2つを提出し、要件定義が確定した段階で本見積りとします。しかし顧客の要望としてはなんとかこの金額の範囲内で済ませるというものですので、そのような見積り方法では納得してもらえないでしょう。

※注1: XOOPSとはポータルサイト(コミュニティサイト)を個人でも手軽に立ち上げることのできるソフトウェアです。オープンソースのプロジェクトとして開発が進められています。

   「それじゃあ、今回の提案は降りるしかないかなぁ」とさじを投げようとしたとき、「いや、言語はパイソン(Python)になりますが、ゾープ(Zope)を使えばこの予算でももしかしたらいけるかもしれませんね」とエンジニアから提案がありました。

   この時、「パイソン…ゾープ?」と正直思いました。というのも、当社では言語としてJavaをメインにシステム開発をしており、PythonやZopeを使った開発実績はこの時点ではありませんでした。ただ、エンジニアからPythonはCやJavaを理解していれば習得するのにそれほど難しい言語ではないと聞き、それであればT商会へ提案が可能ではないかと思いました。

   そこで開発・稼動環境のみならず、アプリケーション層にもオープンソースソフトウェアであるZopeを採用し、提案を行うことにしました。

※注2: ZopeはWebアプリケーションサーバ環境を構築するオープンソースソフトウェアであり、同時にコンテンツマネジメントシステムです。Pythonというインタプリンタ型の言語で構築されています。

   それから、T商会に提案できるように何度も検討し、提案をできるよう資料作成を行いました。そして、いよいよ提案書を携えて訪問です。オープンソースソフトウェアについて馴染みのないお客様に説明することは多々ありますが、今回は当社としてもはじめての経験ですので、特に力が入ります。

   一通りの提案の説明のあと、「ゾペってなんですか?」とB氏より質問がありました。予想はされていましたが、やはりZopeを知らないようです。今までの提案の経験上、顧客がわからないものはわかるように説明しないと後々問題になります。Zopeについては当社が導入支援したものではありませんが、他社での導入事例をいくつも例をあげて、過剰といえるくらいに説明を行ないました。

   ひとしきりうなずいてはいますが、説明中にB氏は渋い顔のままであり、Zopeに対しての印象がよくないのだろうと思いました。ただ、それ以外のMySQLなどのオープンソースソフトウェアについては、以前よりB氏は知っていたこともあり、特にひっかかることもなく提案の説明を終えました。

   Zopeの説明に対しての渋い顔が終始気になっていましたが、「うん。この提案で大体いいと思います。後は上に確認をとってみますね」とB氏から今回の提案に対してのひとまずの回答がありました。B氏が上長に確認を取ることを見越した上で、できる限り提案資料もわかりやすいようにシンプルに作ったつもりでしたが、その策が功を奏したようです。

   ただ、この時筆者は1つの不安を感じ取っていました。提案資料を作っていた時点から感じてはいましたが、エンジニアがZopeを使った開発は可能だといいながらも、顧客からみればZopeを使った開発実績がない当社に不安を抱くのではないかという点です。この場は難なく終了しましたが、このことは後ほど開発実績の有無が問題を発生させていくことになります。

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株式会社ビーブレイクシステムズ 高橋 明
著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ  高橋 明
早稲田大学商学部卒業。大学卒業後日興コーディアル証券にてリテール、法人営業を行う。その後ビーブレイクシステムズの設立に参画し、現在に至る。専門は会計システムに関するコンサルティングセールス。


INDEX
第4回:Zopeを利用したシステム開発の提案
  はじめに
Zopeを用いた提案
  実績への疑念

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