第4回:Zopeを利用したシステム開発の提案 (3/3)

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第4回:Zopeを利用したシステム開発の提案
著者:ビーブレイクシステムズ  高橋 明   2006/2/1
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実績への疑念

   懸念したとおり、後日B氏より連絡がありました。「ところで、御社ではZopeを利用したシステム開発実績はありますか?」その言葉にやはりこの質問が来たかと思い、「Zopeではないがポータルサイトの構築実績はあるので、そのノウハウを応用してZopeを用いたシステム構築ができます」と返答しました。

   ただどうしても、構築実績がないということから筆者の言葉は揺るぎない自信を感じさせるものではなかったと思います。それを察してかどうかは分かりませんが、「Zopeでなくても構いませんので、御社のポータルサイトの実績を実機デモしていただけませんか」とB氏から依頼されました。

   この時、B氏はなんとか当社の提案を受け入れるために様々な方向から当社をプッシュしようとしているのだと感じ取れました。その応えに応えるべく、後日筆者はプロジェクタを携えてT商会を訪問しました。

   部屋に通されると、「はじめまして。本日はよろしくお願いします」とB氏の上長と思わしきG氏が出迎えてくれました。以前からB氏から筆者宛てのメールのcc(カーボンコピー)にG氏のメールアドレスがあったので、今回のプロジェクトの関係者の方かなとの意識はありました。

   ただ、訪問前に配布資料の数を確認するために、B氏に今回のデモミーティングに出席する方の人数を確認したところ、B氏のみが出席すると聞いていたので、予定外のG氏の登場に少々緊張感を感じました。どうやら、今回のプロジェクトでZopeの導入実績などについて特に懸念しているのはG氏のようであり、直接当社の提案を確認するために出席したようです。

   一通り当社のポータルサイトの構築実績を説明し終えたところで、構築実績に関する様々な質疑応答で質問が出終えた時に、しばしの沈黙がありました。その沈黙を破る形で質問がG氏よりありました。

   「ところで、御社のエンジニアの方でシステム開発関連の資格を持っている方は何人程いらっしゃいますか」その言葉に一瞬、「資格所有者の数?」とピンと来ませんでしたが、恐らくは構築実績だけでは判断しかねるので、それ以外の要素からも当社のシステム構築力を計ろうとしているのだと思われました。

   裏を返せば、それだけT商会も迷っているということでした。その後、メールや電話を通してB氏と数回のコミュニケーションがあった後に、結局このプロジェクトはT商会のシステム関連会社が受注をしたと連絡がありました。

   さらにB氏は「当社も大企業病なんですよ。コスト的には御社の提案がよいとは思うのですが、あえてZope採用の先発企業になる気はないんですよ」といった半ばため息混じりの言葉を残しました。

   コスト面では当社の提案は受け入れやすいものではありましたが、当社のシステム導入支援の実績や他社でのZopeの導入状況をみる限り、T商会として今後のサポートなどを考えると導入するのは難しいとの判断でしょう。B氏は今回のT商会のニーズにはZopeが一番マッチしていると感じていながらも、導入できない自社の体制にジレンマを感じているようでした。


実績を積み重ねる

   個別の営業案件に関して、受注できるかどうかを導入実績や価格、顧客との良好な関係といった要素を通して、それら要素を数値化して完璧に予測できるかというと、そうではないと思います。

   さらに提案に新技術や新製品を用いようとする場合、実績がないケースがほとんどのため、予測をするのが既存の技術や製品を利用した提案よりも難しくなると思います。

   もちろん、提案した新技術・新製品が企業のニーズにマッチしているかどうかは、調査をすればある程度分かることが多いとは思います。ただ、企業がシステムの導入をはかる場合、意思決定のプロセスは多岐に渡り、1人の担当者の意思によって決定するのではなく、複数の社内での利害関係者の稟議を通して決定されるケースがほとんどだと思います。そうなると、必ずしも企業のニーズに合致している提案が選ばれるかというと、そうではないと思います。

   ただ、営業スタッフが実績がないから、受注するための完璧な手順がわからないからといって足踏みをしては、潜在的な顧客ニーズを掘り起こすことは不可能です。営業スタッフが企業のニーズに合致した新製品を提案していくんだという気概を持ち、顧客に理解してもらえるようくじけずに提案を続けていく、そして顧客が受け入れやすいように実績を積み重ねていくことが非常に重要なのではないかと思います。

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株式会社ビーブレイクシステムズ 高橋 明
著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ  高橋 明
早稲田大学商学部卒業。大学卒業後日興コーディアル証券にてリテール、法人営業を行う。その後ビーブレイクシステムズの設立に参画し、現在に至る。専門は会計システムに関するコンサルティングセールス。


INDEX
第4回:Zopeを利用したシステム開発の提案
  はじめに
  Zopeを用いた提案
実績への疑念

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