第5回:赤字案件への営業としての対処 (2/3)

オープンソース営業心得
オープンソース営業心得〜営業とはなにか

第5回:赤字案件への営業としての対処
著者:ビーブレイクシステムズ  高橋 明   2006/3/2
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車内での誘惑

   その後J氏と管理会計システム案について話し合い、現在の購買管理システムの仕様書を受け取ると新幹線で帰社することにしました。車内で席に着き、落ち着くやいなや筆者は「購買管理システムをリプレースすることをJ氏は想定していなかったような気がするんだよね」と話を切り出しました。

   それを受けると、エンジニアも「そうですね。購買管理システムをリプレースすることになると結構コストがかかりますよね」と相づちをうってくれました。考えようによっては、今回の案件は厳しいものになりそうです。

   「問題はコストが予想以上にかかってしまうこと。C社としても予算オーバーになってしまう可能性があるんだよ。まいったな…」コストが大幅に増えてしまうとなると、今まで円滑に進めていた本件の雲行きも怪しくなっていくかもしれません。

   しばらく真面目に先手となる打開策を思案していましたが、「それはそうと、新幹線にのると一杯やりたくなりますね」というエンジニアの声にその緊張も切れてしまいました。「業務中だよ。駄目にきまってるじゃない」と筆者はエンジニアをいさめつつ、車内販売のワゴンが近くに通りかかる度に一杯くらいいいかもという誘惑にかられていました。こういった具合に、この時は明るいムードで黙々とミーティング内容の議事録を作っていました。


2種類の会計システム

   会計システムは主に2種類あります。それは財務会計システムと今回提案して見積りを行なっている管理会計システムです。株式会社であれば制度会計である財務会計の導入が義務づけられています。

   そのため、企業が属する業種ごとによって差異はあるかとは思います。しかし、業種が同一の企業の場合、業務処理の方法にそれほど差異がないと想定されるため、各業種にあわせた定型化しやすい財務会計に関する業務はシステム化がはかりやすいのです。また、制度で定めれているため、ほとんどの企業でシステムが導入しています。

   そのシステム上の財務データを用いて、管理会計に役立つシステムが作れれば一番よいのですが、現実問題、財務会計のデータを用いるだけでは売上を立て利益を向上させるための戦略を立案することは限界があるかと思います。そのために必要とされるのが管理会計システムだと思います。

   ただ、税法/会社法/証取法といった法律で枠を設けられた財務会計と違い、管理会計システムは企業のとるべき経営理念/目標/戦略や事業内容によってまったく違うシステムが構築される可能性があります。そのため、財務会計システムよりも大きなコストがかかる可能性が高いのです。

   それに加え、管理会計システムについては構築することでどれだけ企業にとってメリットがあるのかが非常にはかりにくいため、導入を検討しながら予算的な問題で導入を断念してしまったり、予算にあわせて段階的に導入せざる負えない場合も多いのです。

   結局、J氏からのヒアリング結果および受領した現在の購買管理システムの仕様書をもとに検討した結果、購買管理システムをリプレースする提案をすることになりました。後日、作成した提案書を携えて再度訪問しました。

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株式会社ビーブレイクシステムズ 高橋 明
著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ  高橋 明
早稲田大学商学部卒業。大学卒業後日興コーディアル証券にてリテール、法人営業を行う。その後ビーブレイクシステムズの設立に参画し、現在に至る。専門は会計システムに関するコンサルティングセールス。


INDEX
第5回:赤字案件への営業としての対処
  はじめに
車内での誘惑
  システムのリプレース案への評価

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