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| システムのリプレース案への評価 | ||||||||||
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提案書の内容を簡単に説明したところ、「購買管理システムをリプレースですか。結構費用が膨らみますね。現状のシステムはそのままつかえないのですか」とJ氏は無表情に提案書をみながら、声を漏らしました。 予想された反応でしたが、筆者も「外注費管理を行うとなると現状システムのままでは難しいですね。それでは段階的に導入するのはどうでしょうか。まずは管理会計システムの構築基盤整え、その後既存システムとの連携方法や別システムのリプレースを考えてはいかがでしょうか」と切り返しました。 ただ、週次レポート上の費用の正確な把握は今回の業務要件ではもっとも大事な要件の1つということがネックとなりました。通常、企業の管理会計システムでは週次ベースの経営レポートは年次>四半期>月次レポートほど正確性は要求されず、どちらかというと当て推量で行なわれる場合が多いです。 例えばひと月に4週報が作成される場合、この4週報を足すと月次レポートをつくれるわけではなく、週次の売上/費用/利益の速報を知ることで短期的な目標・実績を知ることに意味があります。 そこで費用の把握は予算ベースで行ない、実績ベースで行なわないケースが多いようです。ただ、今回の場合は予算ベースと実績ベースで外注費用に大きな差異があり、早期に把握必要もあったため、購買管理システムを通して実績ベースで外注費用を把握する必要がありました。 そのため、購買管理システムをリプレースせず、管理会計システムのみを導入しても週次レポート上の費用の正確な把握は難しい状況でした。この日の提案をするまでは、当社が受注するのがほぼ決まったような雰囲気の中でミーティングを行なっていましたが、このミーティングではそのような雰囲気はまったくありませんでした。 |
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| コスト面の折り合い | ||||||||||
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結局一通り提案内容を説明し、最終見積り書を提出しました。帰る時にエレベータ前までJ氏は筆者を見送ってくれるのですが、いつもであればエレベーターがくるまでに口数多く冗談をいったりしてくれました。しかし、このミーティングの時はエレベータ前ではまったく話もせず、ただ見送りの言葉があったのみでした。 この後、コスト面での問題を解消するためにできる限りシステム構築基盤にオープンソースを用いたり、経営レポートを設計構築するために各部門ごとに共通した業務を洗い出し、できる限り最大公約数となる経営レポートを作成することでレポート構築費用の削減を行ないました。 そういった努力をしたものの、結局J氏の要望とC社の予算にあうと思われる見積りをだすことはできず、交渉は決裂しました。見積りにそれなりの労力をかけており、またJ氏のシステム構築にかける思いを聞いていたこともあって、当社としてはC社の要望にあうシステム構築をしたいと思ってはいました。しかし、営利企業として受注時に赤字プロジェクトが間違いないのに受注することはできません。 ![]() 図3:損益分岐点 その後、J氏は他のSIerやパッケージソフトベンダーに声をかけて見積りをとっていたようですが、C社の社長がこの検討時期に交代してしまって経営方針が変わり、システム導入検討プロジェクトが自然消滅してしまったとJ氏から後に聞きました。 |
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| 案件を断る勇気 | ||||||||||
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営業をしていると予算を達成するという結果を必ず求められます。その数字を達成することが営業の至上命題でもあります。 また、商談に発展するまでの見込み客の発掘活動や関係を構築するために要した作業と時間を考えると、感情的としてはどんな見積り金額でも受注したいと思うのが営業スタッフの偽らざる心情かと思います。 もちろん、製品やサービスを販売する際に「販売実績をつくるため」「今後の商売の発展を期待して」といったスタンスで、戦略的に受注するために大幅な値引きをすることはあります。ただ、恒常的にそれを行うことは企業収益を大幅に収縮させることになりかねません。 営業スタッフは情熱を持ちつつ、ビジネスパーソンとしての冷静な計数分析の視点をもって、バランスをとりながら時としてプロジェクトを断る勇気が必要だと思います。 |
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