アプリケーション性能管理のAppDynamics、BizDevOpsの重要性を語る
アプリケーションの性能をモニタリングするソリューションを提供しているAppDynamicsから、アジア地区担当のプレジデント、CEO特別顧問などのエグゼクティブが来日した。ThinkITは彼らへのインタビューを行い、日本でのビジネス展開とビジネスにおけるアプリケーションモニタリングの重要性、導入事例などについて語ってもらった。
インタビューに応えてもらったのは、APAC&Japan担当プレジデントのジム・カバナー氏、CEO特別顧問のジョー・セクストン氏、それに日本法人のカントリーマネージャーである内田雅彦氏だ。
AppDynamicsは、アプリケーション性能モニタリングという領域のソリューションを展開されているわけですが、現在目指している今後の方向性を教えてください。
セクストン氏:これにはいくつかのゴールがあります。1つ目がシンプルであることです。これまでのアプリケーション性能モニタリングというのは、他のエンタープライズ向けのソフトウェアと同様に非常に使いづらくて複雑なものでした。AppDynamicsがもともと目指していたのは、とにかくシンプルで簡単にすることです。2つ目は正確であることです。ビジネスを評価するためには、アプリケーションのレスポンスについては精密に数字を提示しなければいけないと思っています。いい加減な傾向を提示するのではなく、数値でビジネスを評価する、そういうところですね。それら2つのゴールについては、我々はある程度、達成できていると思います。
ただ、ビジネスそのものを見た時に「単にアプリケーションの性能だけを測れば良いのか?」という問いがあるわけですね。例えば、スマートフォンで何かを買ったとします。これまでの見方で言えば、スマートフォンからの反応をちゃんと管理して、スマートフォンを使っている例えば私の妻が満足すれば良かった。でもそれだけでは、究極的には私の妻は満足しないわけです(笑)。今日買ったその品物はいつ届くのか、そのすべてのプロセスを見ていないと本当にその顧客が満足するかどうかはわかりません。そういう意味で、スマートフォンからのアクセス、購入に際してのアプリケーションに対する体験、さらには配送に至るまで、すべてを見通して管理する必要があります。それは簡単ではないですし、今すぐにできるとは言いませんが、その領域まで行かないとビジネスそのものを支えるシステムとしては満足できるものではないと思っています。
北米ではAppDynamicsは大きく成長していると思いますが、日本の市場においてはどういうゴールを持っているのでしょうか?
セクストン氏:売り上げのような具体的な数値をお教えするわけにはいかないのですが、日本は重要な市場ですし、我々は、ここでも大きく成長したいと思っています。最近のニュースで、非常に興味深いことがほぼ同時に起こりました。それはDELLによるEMCの買収、それからHPEによるソフトウェア部門の売却、さらにIntelによるMcAfeeの売却です。これらが意味するところは、大きな企業が成長をするためにソフトウェアを上手く活用できていないということではないでしょうか? DELLとEMCは、成長というよりも最適化のために一緒になるのでしょうし、HPEとIntelの例からは、ソフトウェアをビジネスに繋げることの難しさが示されたと感じています。彼らは、我々に比べてはるかに大きな営業部隊を抱えていますが、それでも成長を続けることは難しかったのです。それに引き換え我々は、小さな組織で成長を続けています。日本においてもそれを続けたいと思っています。
日本市場でAppDynamicsがチャレンジしなければいけないことは何ですか?
セクストン氏:我々のことをもっと知ってもらうことですね。我々のブランディングは、特に他の地域とも変わりません。ビジネスにつながるアプリケーション、それを支えるシステムの性能を常にモニタリングすることでビジネスを成功に導く、それに尽きます。特に日本の市場については、これから2020年のオリンピックに向けて注目が集まるようになるはずです。つまり世界中の人が日本にやってくるようになり、当然、日本に関する情報やビジネスが集まり、動き出すわけですね。それをわかっている人はとても多いので、我々としても様々なパートナーなどと話を始めていますし、それを支援したいと思っています。
他にはDevOpsという言葉についてですが、我々は一般とは多少異なる見方をしています。それは単に開発と運用を近づけるという意味だけではないことを示すために、我々は「BizDevOps」という言葉を使っています。これはIT資産というものがこれまでの経営層にとっては黒魔術のようによくわからないもの、ブラックボックスだったわけですが、それをもっと分かるようにしてビジネスにインパクトを与えられるようにならなければいけないという意図の表れなのです。それをもっと理解してもらう必要があると思っています。それがチャレンジと言えるでしょうね。
BizDevOpsの具体例は何かありませんか?
セクストン氏:これは、英国の非常に大きな銀行の例になります。我々のソリューションを本番環境ではなくステージングの環境に導入していた顧客が9時間にも及ぶ長時間、Webサイトのダウンタイムを発生させてしまったことがあります。それに関してはツイッターでも炎上しましたし、電話対応は大混雑、メディアにも取り上げられてしまいました。そのCEOが我々のサンフランシスコのオフィスを訪れて、この原因を突き止めて欲しいと言われた時に我々のエンジニアは数分でどこがその問題の原因なのかを突き止めました。つまりビジネスが停止するという大問題に対して、アプリケーションのモニタリングが効果的であるということが明らかになったわけです。このように、現在ではITとビジネスとは直結しています。このことを理解している経営層には、我々のBizDevOpsは理解してもらえると思いますが、この理解をもっと広めていきたいですね。
アプリケーションがコンテナやマイクロサービスに移行しつつあるのが最近の先端的なアプリケーションの姿だと思いますが、AppDynamicsでの対応は?
セクストン氏:すでにDockerコンテナには対応していますし、マイクロサービスについても「Microservices iQ」という製品で対応しています。ですので、すでにアプリケーションがコンテナに移行しているような場合でもアプリケーションのモニタリングは可能です。
(注:DockerコンテナについてはApp iQ Docker Monitoring Extensionで、マイクロサービスについてはMicroservices iQで対応しているとのこと)
より詳しい技術的な内容に関しては、11月に開かれる我々のカンファレンスで提供できると思います。特に多くのお客様の事例がありますので、ベストプラクティスを紹介できると思います。
またカントリーマネージャーの内田氏によれば、国内の事例としてOpenStackのインフラストラクチャーをモニタリングしている企業もあるという。このあたりは、国内の導入事例として公開が待たれる内容だ。
アプリケーションの性能を、スマートフォンからバックエンドのサーバー、ミドルウェア、データベース、さらにその中のソースコードレベルでトラッキングできること、加えてサーバー側のソフトウェア群の依存関係についても自動的に発見できる点がAppDynamicsの優位点だ。ビジネスを支えるインフラからアプリケーションまで、一気通貫で視覚化できることが日本のビジネスシーンにおいても効果を発揮していることは、U-NEXTの事例からも容易に想像できる。今後、さらなる事例公開を期待したい。