Androidと組み込み開発
はじめに~Androidとは
Android(http://www.android.com/)はGoogleとOpen Handset Alliance(http://www.openhandsetalliance.com/)が開発している携帯電話向けのフレームワークです。Linuxをベースに独自のJava仮想マシン(Dalvik VM)を備え、J2SE 5相当のJavaアプリケーション実行環境を持ちます。
Androidはオープンソースで開発されていて、そのソースコードリポジトリには、世界中のエンジニアから日々パッチが投稿されています。Androidを採用した最初の携帯電話、HTC製G1は2008年10月にアメリカで発売され、続いてイギリス、オーストラリアなど世界各国で販売されています。
AndroidのアプリケーションはAndroid Marketで配布されます。2009年2月からは有償アプリケーションのダウンロード販売も始まりました。
図1はAndroid SDKのエミュレータと、その上で動くアプリケーションのキャプチャです。SDKは無料でダウンロード(http://developer.android.com/sdk/1.1_r1/index.html)でき、インストールもZIPファイルを解凍するだけです。解凍後に、toolsディレクトリにあるemulatorという実行ファイルを起動します。
組み込み開発~高性能化する携帯電話
皆さんは10年前のパソコンを覚えていらっしゃるでしょうか?わたしは1998年に発売されたLet's Note CF-S21を使っていました。軽量でちゃんと使えるモバイルPCとして、当時人気のパソコンでした。そのスペックはCPUがMMX Pentium 233MHz、RAMが96MB、HDDが4.3GBでした。
では、Androidの第1号機、G1のスペックはどうでしょうか。CPUはARMコアを持つQualcomm MSM7201A 528MHz、RAMが192MB、ROMが256MBです。単純に数字だけを比較すると、G1が劣っているのはHDDの容量だけで、これもSDカードで補うことができます。
すでに10年前のモバイルパソコンよりも、高性能になってきています。このような背景から、Androidはおよそ10年前のパソコンで動作することを目標に設計され実装されているようです。
言い換えると、Androidは軽量のLinuxディストリビューションとも呼べるでしょう。もちろん限られたメモリやバッテリーで動作することを考慮していますが、Linuxカーネルへの変更は少なく抑えられています。
CPUの違い、x86とARMとの違いもLinuxカーネルとクロスコンパイラが多くの部分を吸収してくれます。UbuntuのARM版が、予定どおりであれば2009年4月に登場することをご存じの方も多いでしょう。ベースとなるDebian ARMは、すでにほとんどのパッケージがapt-getでインストールするだけで利用でき、x86版と遜色なく使用できます。
このように、組み込み機器とはいえ、パソコンでの開発との垣根がずいぶん低くなってきています。特にAndroidでは、J2MEではなく、J2SE相当のJava環境です。ほとんど組み込みであることを意識せずにアプリケーション開発が行えます。