仮想化で重要な事前検証と運用管理
仮想化環境の運用管理
仮想化環境の構築が終われば、運用管理のフェーズへと移ることになる。もちろん、仮想化環境独特の運用管理は存在するが、基本的な考え方は大きく変わるところはない。特にOS、アプリケーション、サービスといったレイヤーからは物理環境、仮想化環境の違いはそれほど大きくないので、既に確立された運用管理の手法が存在するのであれば、その手法をそのまま仮想化環境に適用すればよい。
ここでは、仮想化環境独自の運用管理上での注意点について解説する。
死活監視だけでなく性能監視も
システムの動作状況を把握する死活監視は運用管理における基本とも言えるが、仮想化環境においては死活監視だけでなく性能監視もきちんと行っておく必要がある。
特に動作がまったく異なる仮想マシンが混在している場合、どれか1つの仮想マシンが引き起こした過負荷状態が、その他の仮想マシンの性能に大きく影響を及ぼすことがある。特にストレージのように、性能がそれほど高くないリソースへの負荷は、影響範囲が大きくなる傾向がある。
CPUだけでなく、メモリやストレージ、ネットワークなどの性能もしっかりと監視しておきたい。
増えすぎる仮想マシンをいかに管理するか
仮想化環境のメリットとして、簡単に仮想マシンを作れる点が挙げられるが、このメリットは場合によってデメリットとなる。
仮想化環境は「マシン」という単位での柔軟性は与えてくれるが、OSやミドルウェア、アプリケーションなどについては一切関知しない。つまり、様々なバージョンの仮想マシンが混在して増加していくことで、物理マシンを使用していた時よりも管理が煩雑になってしまう傾向がある。仮想マシンの管理だけでなく、OSよりも上のレイヤーの管理もしっかりと考える必要がある。
スナップショット利用の注意点
仮想マシン独自の機能であるスナップショットはバージョンアップの際には力を発揮するが、スナップショットを作成しすぎるとストレージの性能は劣化していく。スナップショットを使用する時は、バージョンアップして一定期間後にスナップショットを削除するなど、性能面に考慮が必要である。
仮想化環境のバックアップ・リカバリ
仮想化環境のバックアップ・リカバリは、設計、運用の両面から考える必要がある。
従来型か、仮想化環境特化型か
仮想マシンの特徴として、仮想マシンを丸ごとバックアップすることができる。この特長を活かして全ての仮想マシンを丸ごとバックアップすることを検討するが、以下の点がネックになることが多い。
- ・コスト
- 多くのバックアップツールは、仮想マシンの丸ごとバックアップのためのオプションを購入する必要がある。
- ・データベースとの連動
- 仮想マシン内で動作しているデータベースはデータをメモリ上に格納しているが、仮想マシンの丸ごとバックアップは基本的に仮想ディスクのバックアップであり、メモリ上のデータはバックアップされない。
多くのバックアップツールは、データベースのバックアップ用オプションが用意されているが、購入の必要があること、仮想マシン丸ごとバックアップとの連動を想定していない。 - ・データ容量
- 仮想ディスクにはOS、ミドルウェア、アプリケーション、データなどが含まれており、すべての仮想マシンの合計容量はかなりのものとなる。
仮想マシン丸ごとバックアップをする上で、これらの事項が制約とならないか検討する必要があるだろう。場合によっては、各仮想マシン内部のOSレベルで個別にバックアップした方が良い場合もあることも覚えておきたい。
バックアップ容量や速度
データが肥大化することでバックアップすべき容量が急速に増加している。これらの大容量データをどこにバックアップするのか、そして決められた時間内にバックアップ、またはリカバリすることができるかも考えなければならない。
対処方法としては、ディスクからディスクにバックアップする「D2Dバックアップ」が速度の点で有効だ。また、可能な限りデータの差分をバックアップするなど、容量を抑えるバックアップを行うことを検討したい。
最後に
全4回に渡って仮想化環境の設計・構築で重要となるポイントを解説してきた。仮想マシンの技術はサーバーだけでなくVDIのような仮想デスクトップでも利用されるようになってきたため、今後一層重要なインフラ技術になることは間違いない。この機会に、しっかりと設計・構築の基礎を学んで欲しい。