サーバー仮想化最新技術Citrix XenServer 5.6

2010年6月22日(火)
北瀬 公彦

2009年8月の記事「企業の仮想化を加速するCitrix XenServer」では、主に、XenServerの無償版が備える機能を紹介しました。今回は、2010年6月15日に発表した最新版「XenServer 5.6」の有償版が備える機能を紹介します。

市場調査会社であるIDC Japanの予測では、2014年の国内仮想化サーバー市場の出荷台数は14万1878台で、2010年から2014年まで、高成長を維持します。2014年には、国内のサーバー出荷台数に占める仮想化サーバーの比率が、2009年の13.1%から11.6ポイント伸長し、24.7%にもなります。

こうした中、XenServerは、中堅中小企業からクラウド環境まで、ビジネス・ニーズに合わせたエディションを用意し、機能拡張を図っています。特に、最新版のXenServer 5.6では、非常に多くの新機能を追加しました。現在サーバー仮想化市場で最もシェアが高いVMware vSphereと同様か、それ以上の機能を提供します。

XenServer(無償)とCitrix Essentials(有償)の統合

XenServerのコア機能は、2009年4月に無償化しました。この上で、「Citrix Essentials for XenServer」という名称で、「Enterprise Edition」と「Platinum Edition」という2つのエディションにより、無償版には含まれない、高度な管理機能や自動化機能を提供してきました。

2010年6月15日からは、Citrix Essentials for XenServerの機能を統合・整備した上で、新たに下位エディション「Advanced Edition」を追加しました。これにより、無償版を運用している企業やクラウド・サービス・プロバイダが、高可用性や管理機能を、以前よりも低コストで追加できるようにしました。

XenServerの新たなエディション構成は、図1の通りです。

図1: XenServer 5.6のエディション構成(クリックで拡大)

以下では、XenServer 5.6で追加した主な新機能と強化点について、VMwareとの比較という視点で解説します。

P2V/V2Vディスク変換 (XenConvert)(無償版で提供)

さまざまなディスク形式(物理ディスク、仮想ディスク)を、XenServerのディスク形式やOVF(Open Virtualization Format)、Provisioning ServicesのvDiskなどに変換できます。サポートしているディスク形式は、図2の通りです。例えば、VMware ESXの仮想ディスク形式(VMDK)を、XenServerのディスク形式に変更できます。

図2: ディスク変換機能「XenConvert」で利用できるディスク形式

高可用性

XenServerの高可用性には、下記のような種類があります。

  1. 計画的なシャットダウン時には、XenMotionを使って、システムを稼働状態のままほかのXenServerに移動・再配置することが可能です。パッチ適用、サービス追加などのメンテナンス時にも、システムを停止させる必要がありません。 これは、VMware VMotionに相当する機能です(無償版で提供)。
  2. 仮想マシンを起動する時に、最適なXenServerを自動的に選択して起動します。また、あらかじめ決めておいたXenServerで起動させることもできます(無償版で提供)。
  3. XenServer HAを使って、ハードウエア障害の際に、別のXenServerで仮想マシンを再起動し、サービスを引き継ぐことができます。引き継ぐサーバーは、優先順位やハードウエアの状況などに応じて、柔軟に設定可能です。また、仮想マシンの起動を、下記の3段階のレベルで設定できます。これは、VMware HAに相当する機能です。
    • 必ず再起動
    • 「必ず再起動」を設定した仮想マシンが再起動した後に、可能であれば再起動
    • 再起動しない
    このXenServer HAの機能は、米Marathon Technologiesと共同で開発したもので、非常に定評がある機能です。このHAの機能を使用したいという理由で、わざわざXenServerの購入を考える顧客もいるようです。例えば、図3のXenServer#1に障害が発生した場合、XenServerで起動していた仮想マシンは、XenServer#2や#3で自動的に再起動されます。
  4. ミッション・クリティカルなシステムにおいて、多少のオーバーヘッドを犠牲にしてでも仮想システムのゼロ・ダウン・タイムを実現したい場合には、米Marathon Technologiesの「everRun VM」といった製品を組み合わせることで、フォルト・トレンランス(FT、無停止)の機能を実現することも可能です。

図3: XenServer HAによるフェール・オーバーで可用性を高める
CloudStack Day Japan 2014実行委員

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