プロジェクトを成功に導くマネジメント
写真1 プロジェクト管理セミナーを開催 |
2011年2月10日、プロジェクト管理に関するセミナー「プロジェクトを成功させるために!」が、システムインテグレータの主催、PMI日本支部の後援で開催された。PMI日本支部の神庭会長によるスケジュール管理のポイントに関する講演や、システムインテグレータのプロジェクト管理ソフト「SI Object Browser PM」のユーザー事例など、プロジェクトを成功させるための実践的な管理手法やノウハウが紹介された(写真1)。
関連資料: プロジェクト管理ソフト「SI Object Browser PM」の製品資料 |
クリティカル・パスを意識したスケジュール管理を
写真2 PMI日本支部会長の神庭弘年氏 |
セミナーは、PMI日本支部会長である神庭弘年氏の基調講演「プロジェクトマネジメントにおけるスケジュールと進捗の把握」からスタート。神庭氏は、プロジェクト・マネージャが必ず行わなければならない作業として、WBS(作業分解構成)の作成とスケジュール管理を中心に、実践的なポイントを講演した。
WBSは、プロジェクト管理のベスト・プラクティスであるPMBOK(Project Management Body of Knowledge)においては、作業の範囲を定義することを目的とした「スコープ・マネジメント」に分類される。WBSは、成果物でまとめる「名詞型」の方法と、作業単位でまとめる「動詞型」の方法があり、EVM(出来高管理)をするのであれば名詞型が向いている。
WBSをITシステム開発に適用する場合には、注意が必要だ。初めて作成する成果物が多いため、たとえ同じ成果物を作る場合であっても、作業内容や作業量が変わるからである。これに対して神庭氏は、「名詞型だけでWBSを作成するのではなく、動詞にも分解する必要がある」と注意を促す。5つ程度のWBSをベースに網羅性の高いテンプレートを作っておけば作業漏れも防げるとし、組織内でWBSのノウハウを蓄積する重要性も説いた。
スケジュール管理については、クリティカル・パスの重要性を語った。日本では、スケジュール表をExcelで作成することも多いが、「Excelを使ってはいけない」と説明。スケジュール管理では、タスクを入れ替えてシミュレーションをし、クリティカル・パスを見る必要があるが、Excelではそれができないからだ。欧米では必ず、専用のツールを使ったスケジュール作成が行われているという。
スケジュールが遅延する理由として、キーマンがボトルネックになることがある。このように、ボトルネックを見極めなければ、いくら増員しても、全体の工程が早まることはない。「スケジュール管理ではクリティカル・パスが重要だが、それを意識していないプロジェクト・マネージャは多い」(神庭氏)。
講演ではこのほか、PERT(Programme Evaluation Review Technique)やCPM(Critical Path Method)の由来や、医療業界での活用事例など、神庭氏ならではの話を展開した。
成功の鍵は「トップの強固な意志」と「効果の共有」
写真3 システムインテグレータ代表取締役社長の梅田弘之氏 |
2番目のセッションは、システムインテグレータ代表取締役社長の梅田弘之氏による「プロジェクトが見える、その本当の意味と手法と効果とは-」。梅田氏は、組織におけるプロジェクト管理の仕組みづくりのノウハウについて講演した(セミナー資料の抜粋)。
梅田氏はまず、多くの企業がプロジェクト管理の改善に失敗してきた原因として、次の4点を挙げた。
- 部分的改善の繰り返しで全体最適化がなされていない
- 現場の負荷になる複雑・面倒なツールを使用している
- トップが強い意志を持って推進していない
- 精神論ばかりで、プロジェクト管理の仕組みを提供していない
次に、システムインテグレータ自身が自社のプロジェクト管理ソフト「SI Object Browser PM」を使った効果を紹介した。
同社では現在、管理職やマネージャだけでなく、各メンバーまでプロジェクトの情報を共有している。例えば、部門ミーティングで、各プロジェクトの状況を画面を見ながら確認したり、四半期別の導入効果をグラフ化して全社員に公開している。「"見える化"の効果を共有することで、メンバーがシステム利用の目的を理解し、プロジェクト管理の運用を定着させることができた」(梅田氏)。
システムを導入しても、メンバー全員が継続的に正しく運用しなければ、成果は得られない。同社では、PMO(project management office)がトップと連携して啓蒙活動を継続的に行っている。システムの利用状況をチェックし、正しく運用できていないメンバーに対してはレクチャーを行うなど、正確な情報が入力されるようにしている。「これらの活動により、実際に赤字プロジェクトの発生件数、発生率が大幅に減少した」(梅田氏)。
実は、同社では、システムを導入する以前はExcelベースでプロジェクトの標準化を進めていた。しかし、情報が分散してしまい、うまくいかなかった。こうした教訓から、「ITサービス業も"紺屋の白袴"を脱却し、プロジェクト管理のシステム化を行う必要がある」(梅田氏)と力説した。
関連資料: セミナー資料「組織のプロジェクト管理に必要なこと」 |
プロジェクト情報や、要員のアサイン状況を速やかに共有
最終セッションでは、プロジェクト管理ソフトの「SI Object Browser PM」を採用したユーザー企業の代表として、丸紅情報システムズの隠居浩利氏とカゴメの水野慎也氏が登壇、導入効果を説明した。
丸紅情報システムズは、社内PMOの効率化、経営層へのプロジェクトの情報提供のために導入した。最初は、社内ルールとシステムとのギャップ調整に時間がかかったが、導入後の現在では、全社のプロジェクトと、そこで生じる問題が把握できるようになった。「従来は、ExcelファイルとWordファイルで上がってきた報告を集計して、経営層への報告資料を作成していた。システムを導入したことで、報告内容が統一され、情報のリアルタイム性が増した」(隠居氏)。
カゴメは、情報システム部門の要員アサイン状況を管理する目的で導入した(別掲の事例原稿)。開発プロジェクトだけでなく、社内システム運用についても管理の対象としている。社内での展開にあたっては、システム側に担当作業を登録しないと着手できないようルールを作り、部門全員の作業がシステムに入力される仕組みを作った。「部門内のアサイン状況を把握できるようにした。特定の人に作業が集中したり、空きが生じたりする現象を減らせた」(水野氏)。
関連資料: カゴメによる「SI Object Browser PM」の導入事例 |