事例で見るデータ連携の実際
2. レガシーCRMからクラウドサービスへの移行
次に、レガシーCRMからクラウド型CRMサービス(Salesforce)へと移行し、データウェアハウスとSalesforceのスムーズな連携を実現した医薬品ディストリビュータB社の事例を紹介しましょう。
B社では、これまでレガシーなカスタムCRMシステムを利用してきましたが、操作性に優れ、利用コストも低いSalesforceへと移行を計画していました。その際持ち上がったのが、既存データウェアハウスと新規に導入するSalesforceをどうスムーズに連携させるかという課題でした。
B社ではこれまでもCRMとデータウェアハウスとを連携させてきました。しかし、従来利用してきたデータ連携ソフトウエアはとても複雑で、自社でデータ連携プログラムを新たに開発するのと同じぐらいの運用負荷がかかっていました。そこで、データ統合方法の改善とコストのかかる専門家を必要としないプロセスの確立を目的に、データ連携ソリューションを採用することにしました。
その結果、データウェアハウスとSalesforceの統合を21日間で実現し、売掛金勘定やクレジット情報、販売情報といったデータを、データウェアハウスから“Push”し、さらに見積もりや注文データをリアルタイムでSAPから“Pull”する仕組みを実現しました。
驚くべきは、開発とサポートを担当したスタッフはわずか1人だったということ。結果、人的な依存度を低減させ、大幅なコスト削減という成果をもたらしました。
図4:レガシーCRMからクラウドサービスへの移行例 |
3. データをマイグレーションさせたSaaSの例
オンデマンド製品構成、見積もり、提案機能を持つソフトウエアを販売するC社では、問い合わせから注文までの販売プロセスを合理化するためのソリューションを提供しています。
しかし、C社のソフトウエアは、これまでERPやCRMといった顧客が利用しているバックオフィスシステムに保存されている情報には直接アクセスできませんでした。
そこで、データ連携ソリューションを導入することで、以下の3つの機能を実現しています。
- (a)顧客のCRMやERPから、C社ソフトウエアへデータをマイグレーションする機能
- (b)製品、価格、注文管理、注文処理の情報を処理するバックオフィスアプリケーションとのプロセス統合
- (c)レポート作成(帳票)システムへ製品履歴情報をMashupする機能
また、将来的に連携先のアプリケーションや自社で提供するSaaSがバージョンアップしても、バージョンなどの違いはデータ連携ソリューションによって吸収されるので、将来的な課題も解決できる柔軟なサービス環境を手に入れることができたと評価されています。
図5:データマイグレーションを実現したさせたSaaSの例 |
ブリスコラ社内の活用事例(クラウド型CRMサービスとクラウド帳票の連携)
なお、ブリスコラ自らもConcordのユーザーとして、そのメリットを享受しています。内容は、クラウド型CRMサービスとクラウド帳票※との連携です。
図6:クラウド型CRMとクラウド帳票のデータ連携例 |
この連携によって、クラウド上のデータ登録/変更と帳票印刷がシームレスに連動できるようになり、業務効率の改善につながっています。また、この例においても Loose Coupling のメリットにより、データ連携をバックエンドでバッチ的に処理することが可能になっています。
将来的な構想では、「大量帳票データの一括印刷」も実現する方向で開発を進めています。
[※] 本記事寄稿時点において、業務提携についての最終調整中のため、実名については公表を控えさせて頂いております。
あとがき
3回にわたって「クラウド時代に求められるデータ連携」のノウハウや手法を紹介してきました。しかし、筆者のつたない言葉やさまざまな制約の中で十分に伝えることができなかった部分もあるかもしれません。
しかし、連載の最初にも書きました通り、クラウド環境を企業に取り入れてその成果を最大限に発揮していくためには、データ連携をベースとしたアプリケーションの統合が必須となります。
IT部門のエンジニアは、データ連携の開発やサポートにリソースを費やすよりも、もっと戦略的に重要なプロジェクトでその力を活用するべきです。そのためにも、データ連携の開発や運用に無駄リソースを消費せずに済むようデータ連携ソリューションを上手に活用して頂きたいと思います。本連載が、そのきっかけとなれば幸いです。