OpenFlowの使い方(例)と活用事例
2012年2月16日(木)
3.3 OpenFlowの使い方(例:データセンター間通信)
ここまでの基本的な内容を踏まえ、大規模なネットワークについて紹介します。
3.3.1 Hop-by-hopとOver-lay
OpenFlowの使い方の例として、データセンター間でのネットワーキングに着目すると図のように大きく以下の2つの方式に分類されます。
- (1) Hop-by-hop
- Hop-by-hop方式は、OpenFlowコントローラがすべてのスイッチの状況を把握した上で、各スイッチに対してフローを設定する方式です。この方式においては、すべてのスイッチがOpenFlowコントローラと情報のやり取りをします。したがって、前節の手法を用いてトポロジー情報をOpenFlowコントローラにて把握することができます。
このトポロジー情報を利用してOpenFlowコントローラから各スイッチに対して伝送経路に整合性を持たせた形でフローを設定します。OpenFlowスイッチではその設定されたフローに沿ってパケットの転送を行います。こうすることでエンドツーエンドの通信を実現させる方式がHop-by-hop方式です。 - (2) Over-lay
- Over-lay 方式は、OpenFlowコントローラがすべてのスイッチの制御を行うのではなく、通信するデータセンターのエッジにおいて制御を行う方式です。この方式においては、通信元のデータセンターのエッジから通信先のデータセンターのエッジ間の通信についてはトンネリング技術を利用する(OpenFlowプロトコルは利用しない)ことになります。
トンネリングの方法はいくつか考えられます。例えばL2 over L3トンネルの場合、データセンターのエッジにOpenFlow機能とL2 over L3トンネル終端機能を持たせます。あるデータセンターから別のデータセンターまでの通信については、このエッジ部分でパケットをカプセル化し対向となるデータセンターエッジでカプセルをほどきます。カプセルをほどいた後はまた、OpenFlowにより制御することになります。
それでは、各方式が持つ特徴について整理していきます。
3.3.2 Hop-by-hop方式の特徴
Hop-by-hop方式では制御する対象をOpenFlowコントローラから一括で制御します。
図2:Hop-by-hop方式 |
そのため最大限にOpenFlowの特長を生かすことができます。以下のような特徴があります。
- ・柔軟な経路制御が可能
- OpenFlowコントローラが、すべてのスイッチに対してパケット処理の制御を指示しているため、パケットの特性等に応じて柔軟に経路制御することが可能です。例えば、優先度の高い通信については帯域が大きい経路を経由してパケットを届け、そうでない通信については別の経路を通じてパケットを届けるといったことも可能になります。
- ・エンドツーエンドのQoSを意識した通信が可能
- OpenFlowプロトコルでは、OpenFlowスイッチで設定されたQoSのためのポートを指定してスイッチに対して制御の指示をすることが可能です。そのため、各スイッチに対してQoSの指示を行うことでエンドツーエンドでの品質の保証を行うことができます。
- ・トラフィックのモニタリングが可能
- OpenFlowコントローラですべてのスイッチの状況を管理できるため、統計情報を取得することでトラフィックのモニタリングが可能です。またトラフィックに限らず、故障時等にOpenFlowスイッチとOpenFlowコントローラが切断された場合もすぐにコントローラにて検出できます。そして、その情報をもとに経路の再計算を行う等の対応が可能になります。
- ・既存装置の置き換えが必要
- すべてをOpenFlowスイッチとして動作させるため、広域網に既存のネットワーク装置がある場合にはそれらの装置の置き換え、もしくはOpenFlowプロトコルに対応したファームウェアへのアップデートが必要になります。
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