OpenFlowの使い方(例)と活用事例
3.3.3 Over-lay方式の特徴
一方、Over-lay方式の場合には以下のような特徴があります。
図3:Over-lay方式 |
- ・既存設備の流用が可能
- Over-lay方式の場合、広域網に既存の装置がある場合はその装置をそのまま流用することができます。また、従来のプロトコル(MPLSやGREなど)を用いてデータセンター間の通信を制御している場合には、その方式をそのまま流用することが可能です。
- ・経路情報の数を抑えることが可能
- OpenFlowコントローラでは、エッジとエッジの情報やデータセンター内部のネットワークの経路情報だけを保持し、エッジとエッジ間の経路情報は保持しません。そのため、OpenFlowコントローラで管理する必要がある経路情報の数を抑えることができます。
- ・データセンターエッジに装置の導入が必要
- Over-lay方式の場合、トンネル終端機能とOpenFlowスイッチとの間で連携する必要があります。一般的には、データセンターエッジに双方の機能を具備した装置を新たに設置することになります。
3.3.4 Hop-by-hopとOver-layの使い分け
これまで述べてきたように、Hop-by-hopとOver-layにはそれぞれメリットおよびデメリットがあります。これらをまとめると以下の表のようになります。
図4:Hop-by-hop方式とOver-lay方式、それぞれのメリットとデメリット |
この結果から、以下のような場合はHop-by-hop方式が適していると考えられます。
- 比較的小規模な場合
- 広域網自体のサービスを提供する場合
- 広域網とデータセンターとで連携したサービスを提供する場合
それに対して、以下のような場合はOver-lay方式が適していると考えられます。
- 既存の広域網を流用したい場合
- 広域網は単に利用するだけ(土管のように扱うだけ)の場合
導入の際には、上記のようなメリット・デメリットを考慮したうえで装置の性能等も勘案しながら適切に使い分けていくことになります。
3.5 活用事例
これまでは、ネットワークのレイヤについて使い方の例を取りあげました。最後に、OpenFlowプロトコルというネットワークレイヤのみならず、上位レイヤまでを含めて業務システムと連携した「OpenFlowとHinemos(ヒネモス)との連携」事例について紹介したいと思います。
これは、NTTデータで開発中のOpenFlowコントローラが提供するいくつかの機能と、NTTデータが提供するオープンソースの運用管理ツールHinemosとを連携させるものです(なお、NTTデータでは、OpenFlowを構成するコントローラ・スイッチのうち、コントローラの開発に取り組んでいます。スイッチについてはマルチベンダに対応するための検証に取り組んでいます)。
図5:OpenFlowとHinemosの連携イメージ |
利用イメージは以下のようになります。
- Hinemos上でテナント構築担当者が GUIで論理構成図を描く
- 論理構成図の情報をもとに仮想サーバのVMイメージを生成・起動される
- 論理構成図で書かれた情報をもとにVMイメージに対してOpenFlowネットワーク経由でIPアドレス等の割り当てが行われる
- 論理構成図で描かれた構成に沿って通信が行われる
この例では、OpenFlowコントローラはGUIで描かれた論理構成情報をHinemosから取得し、その内容に応じて通信制御のロジック(パケットの転送、ヘッダの書き換え)を計算します。その計算結果に基づいてOpenFlowスイッチに対してフローを書き込むことで連携を実現しています。
このようにサーバとネットワークの仮想化環境の統合運用管理ができることは、OpenFlowを活用する際のメリットといえます。また今後、ネットワークの構築やオペレーションの効率化に寄与していくでしょう。
3.6 まとめ
今回は、OpenFlowの使い方、活用事例について紹介しました。最終回である次回においては、OpenFlow ver 1.1以降での追加機能とその活用例について紹介します。
- ※Hinemosは、日本国内におけるNTTデータの登録商標です。
- ※記載されている会社名、製品名、サービス名等は、各社の登録商標または商標です。