スマホアプリ開発にも役立つHTML5の8つの技術

2012年6月5日(火)
安田 陽

2. スマートフォン向けWebブラウザのHTML5対応状況

このようにスマートフォン向けWebブラウザで動作するHTML5の技術は数多くありますが、HTML5の規格自体がまだ仕様策定中となっており、現段階でHTML5の仕様に完全に準拠しているWebブラウザはまだありません。ただ、iOS、Android OSとも、バージョンが上がるに従って多くの部分で対応が進んでいます。

詳しくはhttp://mobilehtml5.org/ にまとめられていますのでご覧いただければと思いますが、HTML5の主要機能のいくつかについて、iOSとAndroid OSでの対応状況を以下にまとめてみました。

表2:iOS/Android OS向けWebブラウザにおけるHTML5対応状況(抜粋)

機能 iOS Android
Safari Android browser
(Android 2.xと4.0)
Chrome
(Android 4.0)
Opera Mobile Firefox
Web Storage 2.0+
Web SQL Storage 2.0+
Geolocation 2.0+
Web Sockets 4.2+ × 7+
Canvas
Audio & Video Player 2.3+

図3:「mobilehtml5.org」には各スマートフォンOS向けWebブラウザにおけるHTML5対応状況が詳しくまとめられている。iOS、Android OSだけでなく、Kindle FireやBlackBerryなど幅広く網羅

3. スマートフォンとHTML5の今、そしてこれから

以上、スマートフォン向けアプリケーション開発の観点からHTML5で何ができるのかについておさらいしてみました。この状況について読者の皆さんはどのようにお感じになったでしょうか。

私は、今のスマートフォン向けアプリケーションを取り巻く状況については「過渡期」という言葉が一番ぴったりくるような気がしています。もちろん、今回ご紹介したHTML5のテクノロジーを組み合わせることで、今でもスマートフォン向けWebアプリケーションでかなりのことができます。ただ、Webブラウザ側のHTML5対応状況はまだかなりばらついていますし、実行速度の面でも「iPhone4SやGalaxyIIといった最新のスマートフォンにおけるHTML5の実行速度は、MacBookProでの実行速度に比べ少なくとも6倍、平均して889倍遅い」という報告もあります。
→参照:Spaceport PerfMarks Report II(米国Spaceport社)

実際、先の「3D、グラフィックス、エフェクト」でご紹介した「Sinuous」をスマートフォン上で試して頂くとお分かりになると思いますが、PC版に比べて少なからずモタツキ感があることは否めません。

しかしながら、今後はiOS、Android OSだけでなく、Windows 8ベース、また、Tizenなど新たなスマートフォンOSのリリースも見込まれ、平行してスマートフォンユーザーの加速度的な増加が予想されています。そのような背景をふまえると、Webアプリケーションというスタイルでクロスプラットフォームにサービスを提供していくことは、コストとスピードというビジネス的側面からも後押しされていくものと思われます。

ただ、Webアプリケーションがネイティブアプリケーションと同等のパフォーマンスを発揮するために必要な「ハイスペックデバイス」「HTML5」「高速な4Gネットワーク」「パワフルなクラウドコンピューティング環境」が十分に普及するまでにはまだ時間がかかると考えられます。

このような過渡期の状況の中、私たちが取り得る選択肢のひとつとして「HTML5でアプリケーションを記述し、ネイティブアプリケーション化してユーザーに配布する」というものがあります。次回はそういったハイブリッドな開発スタイルを支えるツール群をご紹介したいと思います。

【参考文献】

「実践テクニック HTML5スマートフォンWebアプリ制作」谷中 志織 著(秀和システム)

株式会社レキサス

2000年にレキサス入社後、開発部、営業部、社長室を経て現在マーケティングチームに所属。2009年2月にリリースした音楽系iPhoneアプリがランキング2位に。現在は沖縄と東京、シリコンバレーを行き来しながら新ネタを日々妄想中。
ツイッターはこちら > @yoyasuda

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