[入門編] RHELユーザーが知っておきたい、Ubuntu Serverとのコマンド・サービスの違い

2014年1月16日(木)
古賀 政純

今回は、前回の内容の補足として、RHELやCentOSに慣れたユーザーの方向けに、Ubuntu Serverとのコマンドの違いや、設定ファイル、管理方法などを紹介していきます。

dpkgコマンドでUbuntu Serverのパッケージを管理する

RHEL/CentOSの管理や利用には慣れているが、Ubuntu Serverには不慣れというユーザーのために、主なコマンドの違いを掲載しておきます。RHEL/CentOSではパッケージ管理のrpmコマンドがお馴染みですが、それに相当するdpkgコマンドの主な利用例を示します。以下の表以外にもdpkgコマンドの様々なオプションが存在しますが、Ubuntu Server入門者の方は、まず下記のオプションを理解しておけばよいでしょう。

図1:dpkgコマンドとrpmコマンドの代表的な利用例の比較(クリックで拡大)

apt-get, apt-cache, apt-cdromを使いこなす

Ubuntu Serverのソフトウェアパッケージ管理にはdpkgコマンドの他に、apt-getコマンド、apt-cacheコマンド、apt-cdromコマンド等が存在します。RHEL/CentOSでは、yumのリポジトリを作成し、yumコマンドでパッケージの検索、取得、インストールを行います。一方、Ubuntu Serverの場合は、apt-get, apt-cache, apt-cdromを使い分ける必要があります。dpkgコマンドはdeb形式のパッケージを個別にインストールする場合に使用しますが、apt-getコマンドは、依存関係を解決しながらインストールできます。RHEL/CentOSのパッケージ管理用のyumコマンドとUbuntu Serverでのapt-get, apt-cache, apt-cdromコマンドの主な利用例を示します。

図2:yumと同様にapt-getコマンドもインターネット経由でリポジトリ情報を取得して依存関係を解決しながらソフトウェアパッケージのインストールを行うことができる(クリックで拡大)

各種設定ファイルやログファイル、管理コマンドの比較

RHEL/CentOSとUbuntu Serverでは、ランレベルやディレクトリ構成、設定ファイルなどが異なります。以下では、Ubuntu Serverの管理者が最低限知っておくべきOSの設定項目を厳選して掲載します。Ubuntu Serverの入門者はまず最低限これらの設定ファイルの中身やコマンドの挙動を知ることから始めてください。ハードウェアに関する管理コマンドはあまり違いがありませんが、ブートローダーの設定はUbuntu ServerとRHEL/CentOSで大きく異なりますので注意が必要です。また、RHEL系でのデフォルトのランレベルは5ですが、Ubuntu Serverでは2ですので注意してください。

図3:Ubuntu Serverで採用されているGRUB2はRHEL/CentOSで採用されているGRUBと管理の作法も大きく異なるため注意を要する(クリックで拡大)

代表的なサービスの管理方法の比較

サービスについての管理手法においても、Ubuntu ServerとRHEL/CentOSで大きな違いがあります。ここでは、スケールアウト基盤でよく利用されるSSHサービス、Apache Webサービス、NFSサービス、NFSサービス、DHCPサービス、TFTPサービスについての管理手法の違いを掲載します。

図4:設定ファイル自体の記述については、Ubuntu ServerとRHEL/CentOSであまり差がない。設定ファイルのディレクトリ構成やserviceコマンドで指定するサービス名に違いが見られる(クリックで拡大)

RHELとUbuntu Serverでのハードウェア監視エージェントやドライバーの違いを知る

サーバーの管理には、OS付属のツールを使うことが一般的ですが、障害監視を詳細に行うためには、ベンダー提供の監視エージェントを導入する必要があります。監視エージェントには様々なものが存在しますが、まずは、サーバーのハードウェアコンポーネントに特化した監視エージェントを理解すべきです。また、RHEL/CentOSとUbuntu Severで利用できるベンダー提供のツールや類に違いがありますので注意が必要です。

RHEL/CentOS系の監視エージェントは、HPからService Pack for ProLiant(通称SPP)が提供されています。SPPには、監視エージェント類以外に、各種ドライバーやOSを稼働させたままオンラインでファームウェアのアップグレードを行うキット類などが収録されています。一方、Ubuntu Server向けにはManagement Component Pack(通称MCP)が用意されています。

MCPには、SPPと同様の監視エージェント類(hp-snmp-agentsやhp-health)が用意されていますが、FCストレージ用のドライバーやNICドライバー、オンラインでのファームウェアアップデートを行うツールキットは提供されていません。MCPは、SPPと同様にHPのダウンロードサイトから入手できます。具体的な導入方法や監視の手法については、本連載の実践編でご紹介します。ここでは、Ubuntu Server 12.04.3 LTSに対応したMCPとRHEL6.x用のSPPに含まれるコンポーネントを示しますので、Ubuntu Serverで可能な管理項目を理解してください。

図5:MCPに同梱されている監視エージェントを導入すれば、Ubuntu Serverのハードウェアを詳細に監視することが可能(クリックで拡大)
図6:MCPに比べSPPに同梱されているツール類は多彩である。SPPをUbuntu Serveに適用することはできない点に注意する(クリックで拡大)

[入門編] Ubuntu Serverとその他のサーバーOSの比較のまとめ

  • Ubuntu ServerはインストーラでOS配備用環境(MaaS)を設定可能
  • Ubuntu Serverのインストーラはテキストベースであり、日常の操作もCUIで行う
  • Ubuntu Serverは、DAS(直接接続ストレージ)で利用するのが無難である
  • dpkgコマンドでパッケージを個別にインストールできる
  • apt-getコマンドで依存関係を解決しながらパッケージをインストールできる
  • Ubuntu Serverに対応したサーバー監視エージェントやツール類をまとめたキット(MCP)を無料で入手できる
  • RHEL用のSPPとUbuntu ServerのMCPでは、含まれるツールの数に違いがある

最後に

今回はUbuntu Serverとその他のサーバーOSとの違いについてご紹介しました。次回は、いよいよUbuntu Server実践編です。Ubuntu Serverをスケールアウト型サーバー基盤に導入するノウハウ、構築手順について解説します。

日本ヒューレット・パッカード株式会社 プリセールス統括本部 ソリューションセンター OSS・Linux担当 シニアITスペシャリスト

兵庫県伊丹市出身。1996年頃からオープンソースに携わる。2000年よりUNIXサーバーのSE及びスーパーコンピューターの並列計算プログラミング講師を担当。科学技術計算サーバーのSI経験も持つ。2005年、大手製造業向けLinuxサーバー提案で日本HP社長賞受賞。2006年、米国HPからLinux技術の伝道師に与えられる「OpenSource and Linux Ambassador Hall of Fame」を2年連続受賞。日本HPプリセールスMVPを4度受賞。現在は、Linux、FreeBSD、Hadoop等のOSSを駆使したスケールアウト型サーバー基盤のプリセールスSE、技術検証、技術文書執筆を担当。日本HPのオープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリストとして講演活動も行っている。Red Hat Certified Engineer、Red Hat Certified Virtualization Administrator、Novell Certified Linux Professional、EXIN Cloud Computing Foundation Certificate、HP Accredited Systems Engineer Cloud Architect、Red Hat Certified System Administrator in Red Hat OpenStack、Cloudera Certified Administrator for Apache Hadoop認定技術者。HP公式ブログ執筆者。趣味はレーシングカートとビリヤード

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