Alfrescoをインストールしてコンテンツ管理を体験してみよう
エンタープライズ版とコミュニティ版の違い
Alfrescoにはエンタープライズ版(有償版)のAlfresco Oneと、コミュニティ版(無償版)のAlfresco Community Editionがあります。
このCommunity Editionは厳密にはAlfresco Software Inc.(以降、Alfresco社)の製品ではありません。有志の開発者に育まれているコミュニティの賜物です。無償ですので、Alfrescoの機能を簡単に試すことができます。また、世界各国の開発者が日夜新しい機能をいち早く投入したいと取り組んでいるもので、将来のAlfrescoの姿を有償版のAlfresco Oneに先駆けて試し見ることができます。
Community Editionはこちらからダウンロードして利用することができます。
> Download Community Edition
ただし、Community EditionはAlfresco社のサポートを受けることはできません。またAlfresco社で製品テストを行っていないため、ビジネスで本格的に利用するには危険性があります。
一方、有償版のAlfresco OneはAlfresco社が製品として提供しているバージョンです。社内での製品テストを通過しているもので、Community Editionに比べて安定性があります。Alfresco Oneはサブスクリプションとして年間使用料を支払うことで提供され、サポートも受けることができます。
こちらもオープンソースですので、サブスクリプションの購入後、ソースコードにアクセスすることができます。使用中に不具合があった場合に、サポートに問い合わせしながら、自分でソースコードを見て不具合を追求したい時などにも使えます(オープンソースでないベンダーの製品を利用している時に、サポートのもどかしさを感じて、ソースが見たいという時がありますよね)。
以下にAlfresco OneとAlfresco Community Editionとの主な違いを比較したものを表にしています。
Alfresco One (エンタープライズ版) |
Alfresco Community Edition (コミュニティ版) |
|
---|---|---|
オープンソース | ○ | ○ |
モバイルアプリの利用 | ○ | ○ |
安定性、信頼性 | ○ | × |
プラットホーム | 右記に加えて商用のDB (MS SQL Server, Oracle, DB2), App Server(Oracle Weblogic, WebSphere)が利用可能 |
オープンソース (DB: My SQL, Postgres, App Server: Tomcat, JBoss) |
サポートの有無 | ○ | × |
品質テストの有無 | ○ | × |
スケーラビリティ/ HA構成の可否 |
○ | × |
システム設定/ 構成ツールの有無 |
○ | × |
Enterprise Cloud Syncの利用 |
○ | × |
表1:Alfresco OneとAlfresco Community Editionの違い |
まずは試してみましょう - Alfresco Share
ここではエンタープライズ版のAlfresco Oneを使います。Community Editionもインストールは全く同じです。
サポートされているプラットホームについては、こちらに書かれています。AlfrescoがサポートするOSは全て64bitになっていますのでご注意ください。
Alfresco One試用版は、こちらのリンクから申し込むとダウンロードすることができます(この原稿を執筆している時点での最新バージョンは4.1.5ですが、間もなく4.2がリリースされる予定です)。
インストールは非常に簡単です。インストーラを起動すると、簡易モードまたはアドバンスドモードでのインストールを選択できます。簡易モードでは、Javaやデータベース(PostgreSQL)、アプリケーションサーバー(tomcat)などのコンポーネントが全て自動的にインストールされるため、ユーザーは以下の項目を設定するだけです。
- インストール先のディレクトリ
- 管理者用のパスワード
ただし、データベースやアプリケーションサーバーが使用しようとするポートが既に他のアプリケーションが使用している場合には、ポート番号を指定しなければなりません。
試用のみであれば、非常に簡単にインストールを行うことができます。これは従来のECM(Enterprise Content Management)製品では考えられないことです。以前私が携わっていたECM製品はインストールする前にJavaやデータベース等も全て用意しなければならなかったので、試用と言っても丸一日ぐらいかかっていましたが、Alfrescoではわずか数分で終わってしまいます。
ちなみに、Community Editionをダウンロードして、Alfrescoを起動するまでの様子をYouTubeにアップロードしてあります。この時は、ダウンロードから起動まで約9分で終了しました。ご興味ある方は以下の動画をご覧ください。
Alfrescoのインストーラと、別会社のECM製品のインストーラの大きさの比較をしてみました。Alfrescoではアプリケーションサーバーやデータベース等が入ってもこの差があるので、レガシー資産がいかに大きいかを物語っているかと思います。
Alfresco Shareの機能
Alfresco Shareは情報共有のためのユーザーインターフェースを持ちます。
インストール後に、Alfresco Shareにログインしてみます。デフォルトではhttpの8080ポートでアクセスができます。
インストール直後にアクセスできるのは、admin だけですので、これでログインします。
ダッシュボード
ログインすると、最初にユーザーのダッシュボード画面が表示されます。ユーザーのダッシュボードは、このユーザーがAlfresco内でアクセスできるコンテンツについての更新情報や、承認が必要なワークフローのタスク等の一覧を表示します。このダッシュボードは、提供する機能が異なる複数のダッシュレットから構成されます。ユーザーはこのダッシュボードのデザインやダッシュレットの構成を自由に変更することが可能です。
サイト
Alfresco Shareでは情報共有の大きな単位をサイトと呼んでいます。サイトは実世界で例えると、全社または、部署単位、プロジェクト単位に相当するもので、その中で適切なロールを割り当てながら情報共有を行います。
ユーザーは自由にサイトを作成することができます。この時、サイトを作成したユーザーはサイトマネージャの権限が与えられ、サイト内で情報共有するメンバーを招待することができます。
Alfresco Shareでは2種類のサイトを作成できます。1つは公開サイトで、サイトメンバーでない人もサイトの存在を見ることができ、興味があれば、サイトに参加することができます。
もう1つは非公開のサイトです。これはサイトマネージャから招待されたメンバーだけがアクセスでき、その他のユーザーからはサイトの存在を隠すことができます。この時に、そのメンバーにどのようなロール(権限)を与えるかを設定できます。Alfresco Shareのサイトで用意されているロールは4つ(ゲスト、コントリビュータ、共同作業者、マネージャ)になります。
ゲスト (Consumer) |
コントリビュータ (Contributor) |
共同作業者 (Collaborator) |
マネージャ (Manager) |
|
---|---|---|---|---|
フォルダ・コンテンツの 閲覧 |
● | ● | ● | ● |
ワークフローの割当 | ● | ● | ● | ● |
新規コンテンツの追加 | ● | ● | ● | |
コンテンツの編集 | ● | ● | ||
タイプの変更 | ● | ● | ||
アスペクトの管理 | ● | ● | ||
サイトへの招待 | ● | |||
コンテンツの削除 | ● | |||
権限の管理 | ● | |||
サイトダッシュボードの カスタマイズ |
● | |||
サイト情報の編集 | ● | |||
表2:ユーザーロールの権限 |
ユーザーがアクセスできるサイトは、上部のメニューまたは、ユーザーのダッシュボードの画面からアクセスできます。
ドキュメントライブラリ
サイト内でコンテンツ(ファイル)の格納を管理しているのは、ドキュメントライブラリです。ドキュメントライブラリにアクセスすると、フォルダーとファイルの階層構造を見ることができます。フォルダーとファイルのリストの表示形式はいくつかの種類があります。サムネイルも表示されます。
コンテンツにアクセスすると、コンテンツのプレビューを見ることができます。これはAdobe Flash Playerを使って表示されます。従来のファイルサーバーは、ファイル名だけで内容を判断して、中身は実際に開いてみないと分からないのですが、このプレビューのおかげで、必要なファイルをすぐに見つけることができ、ユーザーのPC上にファイルをダウンロードしなくても見ることができます。
オンライン編集
従来のECM製品では、コンテンツを編集する場合には、ユーザーはロックをかけ(チェックアウト)、他のユーザーからの更新ができないようにして、ローカルで編集した後、それを更新(チェックイン)する操作を明示的に行う必要がありました。しかしながら、こうしたチェックイン/チェックアウトの操作はユーザーにとってはなじみづらいものです。
AlfrescoではOffice文書を編集する際に、オンライン編集をクリックすることで、こうした面倒な手順を踏むことなく、直接Office文書を編集することができます(オンライン編集機能)。これはSharePointで文書を開く動作と同等の機能を、Alfrescoが独自にインプリメントしたもの(SharePoint Protocol)で、ユーザーの利便性を大きく向上します。以下の動画はオンライン編集の様子を紹介したものです。
メタデータの自動取得とGoogle Maps
AlfrescoではApache Tikaを利用して、コンテンツのメタデータ(属性情報)をAlfresco内に取り込むことができます。例えば、Office Wordのドキュメントであれば、Wordの作成者のプロパティがAlfrescoの作成者のメタデータとして反映されます。また、デジタルカメラで撮影された写真がEXIF情報を持っていた場合、それらもメタデータとしてAlfresco内に取り込まれます。これらの情報をもとに検索を行うことができます。
その一例として、デジタルカメラで撮影された写真がGeotag情報を持っていた場合には、Google Mapsでその撮影位置を表示させる機能を標準で持っています。
データリスト
Alfrescoはファイルを格納、共有するだけではなく、表形式でデータ表現することができるデータリストの機能があります。データリストは、よくプロジェクト等で課題管理等を、Excelを使って表形式でまとめ、プロジェクトメンバーで共有することがありますが、データリストも同様の使い方ができます。また、アイテム(表中の行レコード)の中には、ファイルをAlfresco内のコンテンツにリンクすることができるので、補足説明資料や、参考資料をアイテムに関連づけることができます。
Google Docs連携
Alfrescoでは、Google DocsでOffice文書を編集することができます。この機能によってOfficeをインストールしていないクライアントでも編集作業を行うことができると共に、Google Docsの特性を活かして、複数人でリアルタイム同時編集を行うことが可能です。
ソーシャルパブリッシング
ソーシャルメディアを活用した企業のマーケティング活動が広まっている中、Alfrescoもソーシャルメディアを重要視しています。Alfrescoでは、Spring Socialを利用して、作成したコンテンツをすぐにソーシャルメディアにパブリッシュ(発行)することができます。例えば、企業のマーケティング部門が、ニュースリリースを作成、校正等のレビューを経た後すぐにTwitterやFacebookで公開するといったことが行えます。
また、Alfrescoではソーシャルネットワークでよく利用されている「いいね」や「コメント」の機能も取り入れられています。「いいね」がたくさんついているコンテンツは、検索時に検索結果に入っていた場合には、検索結果の上位に表示されるようになります。
その他、Alfresco Shareでは検索機能や、フォルダルールの設定、ワークフローなど、ここでは紹介しきれなかった機能がたくさんあります。今回紹介した機能と共に、Alfresco Shareの使い方をYouTubeでも紹介しておりますので、是非ご覧ください。
このコンテンツは、オープンソース総合情報サイト「OSSNews」が提供・監修しています。 「OSSNews」では、オープンソースに関する、最新情報、イベント情報やバージョン情報を掲載しています。 Alfrescoのライセンスや動作環境などのソフトウェア情報もご確認できます。
【参考URL】
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